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元プロゲーマー、VRで銃が当たらないので投げナイフだけで無双します。  作者: 那須 儒一
四章 ジャパンリーグ編

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70話 決戦前夜

時間が経つのはあっという間だ。


俺たちは脇目も振らずひたすらNF(ネオンフラグ)のチーム練習に励み――ジャパンリーグへと臨んだ。


決勝リーグ最終戦――

ルミナスイリアとアストラ――共にリーグ戦は全勝中。


明日……勝った方がNF(ネオンフラグ)日本一の座に輝く。


……だめだ……興奮して、眠れそうにない。

みんな……もう、寝たかな。


§


彼女の部屋の襖をノックする。


「舞ちゃん……起きてる?」


パジャマ姿の舞ちゃんがそっと扉を開ける。


「……寝れないの?」


「ああ……」


舞ちゃんは、そっと俺の服の袖を引っ張り、

部屋の中に入れてくれた。


「海人くん……まさか、このメンバーでここまで勝ち抜けるなんてね……私が一番下手くそだから、明日は足を引っ張らないようにするね」


「そんなこと……いや、あるか?」


「ちょっと、そこは嘘でもないって言ってよね」


「「ふふふ」」

俺たちは顔を見合わせて笑い合う。


「俺……NF(ネオンフラグ)に戻ってこられたのは……舞ちゃんのおかげなんだ」


「うん……」


「正直……君がいなかったら、今の俺はないと思っている。

……不甲斐ない俺を、ここまで引っ張ってくれてありがとう」


「ううん。私も、海人くんに支えられてきた。

いっぱい……いっぱい。

こんなに楽しい毎日を私にくれてありがとう」


「これからだって、楽しいさ!」


「うん……」


「明日は勝とう!」


「うん!」


それだけ、言葉を交わし部屋を後にした。


§


舞ちゃんの部屋を出るとき、なにやら視線を感じた。


「おい……楓……出てこいよ」


「あはは……バレてたか……」


廊下の影から楓が出てきた。


「なんで、盗み聞きしてたんだ?」


「う〜ん。趣味だから」


「それは、悪趣味なことで」

相変わらず、こいつはすぐにはぐらかす。


「舞ちゃんとの関係は、どこまで進展してるかなって……」


「進展もなにも、始まってすらないよ……」


「ふ〜ん。ま、そういうことにしといてあげるわ」


「そういうことにしといてくれ。

……楓も、早く寝ろよ」


「は〜い!」


「……と、楓!」

踵を返した彼女を呼び止める。


「どうしたの?」

彼女は不思議そうに首を傾げ、薄紫の髪が揺れる。


「おやすみ」


「え……それだけなの?」


「ああ、それだけだ」


「海人くん……」


「ん?」


「やっぱり、いいや……」


「変なやつだな……」


楓はふっと微笑むと、小走りに部屋へ戻っていった。


§


俺も、部屋に戻ろうとしたら、岬が居間でお腹を出して寝ていた。


「なんで……こいつはここで寝てんだよ……」


岬を抱きかかえ、部屋のベッドに寝かせる。


「泉先輩……」


なんだ……寝言か?


「相変わらず……バカみたいな顔してるっすね……むにゃむにゃ」


ろくでもない夢を見てるな。

なんか、幸せそうな顔をしているのが、余計に腹が立つ。


部屋を出ようとすると、岬の手が俺の腕を掴む。


「……行かないで」


……寝言だよな?


俺は、岬の頭を軽く撫でて――優しく手を振りほどいた。


§


岬の部屋から出ると、玄関の扉が開く。


「あれ、桃園さん……今、帰ったんですか?」


「そうなのよ〜!

結花ゆうかさんの加入に伴う、手続きとか残ってて……」


桃園さんがスーツ姿のまま玄関に倒れ込む。


「桃園さん……いつも、ありがとうございます」


「ほんとだよ……私をこき使いすぎだって!」


「出来合いのものでよければ、ご飯作るんで、お風呂に入ってきてください」


「え、いいの!」


「たまには、ね」


「やったー! お風呂入ってくる〜」

変なところで子どもっぽいんだよな。


桃園さんがお風呂に入っている間に、月見うどんとカット野菜でサラダを作る。


「おお、これぞ男飯って感じだね」

桃園さんがタオルで髪を拭きながら、机の前に座り込む。


「ま、ゴリゴリの男ですから」


「泉くんはゴリゴリじゃなくて、ガリガリでしょ」


「うっ……気にしてるのに」


うどんを食べ終わる頃には、桃園さんの髪もすっかり乾いていた。


「ドライヤーで乾かさないと、髪が傷みますよ」


「泉くんってば、私より女の子だよね……」


「まあ、桃園さんと比べたら……」


「そこは、否定しなさよ!

こんな、プリチーなマネージャー他にはいないわよ」


「マスコット的な可愛さですけど……」


「相変わらず、私には容赦ないわね。

……なんか、久しぶりに泉くんと、まともに話した気がする」


「これをまともと言っていいのか分かりませんがね」


「はぁ〜最近、仕事三昧で……女子力が失われている気がするわ……」


「そんなこと……あるか……」


「はぁ〜、やっぱり……こんなんじゃ、他の子に負けて突然か……」


「何を言っているんだか。でも、スーツ姿の桃園さん……昔よりも圧倒的にかっこいいですよ!」


「な、なんだね。突然の褒め殺し――」


「これからも、俺のそばで働いてもらわないといけませんので!」


「現金な奴め……

俺のそばで……か……はぁ〜」


「ため息ばっかりつくと幸せが逃げますよ?」


「いいんだよ。私の幸せの全盛期はもう過ぎ去ったから……」


「それなら、これから俺が桃園さんを、過去一で幸せにさせますよ!」


「こらっ! さっきから、人がツッコまないこといいことに……キミはずるいぞ!」


「何の話ですか?」


「そうだよなぁ。キミはそういう奴だった……

明日は……頑張ってね……」


「よくわかりませんけど……任せてください!」


皿洗いだけして、俺は部屋に戻った。


§


そろそろ寝るか……。


離れの縁側で――小さな影が月明かりに照らされていた。


「茜ちゃん?」


「泉……」


彼女は外に足を垂らし、パタパタ動かしていた。


「茜ちゃんも寝れないの?」


「……も? 私は……泉を待っていた」


俺は茜ちゃんの隣に腰掛けた。


「何か話でもあるの?」


「うん……最近、ようやく自分の気持ちに気づいた……」


「気持ち……?」


「うん……でも、それがわかったら……どうしようもないって……気づいた」


茜ちゃんは泣いていた。

彼女が泣いているのを見たのは……五十嵐さんの葬儀以来だ。


「難しいよな……」


茜ちゃんも俺と同じだ。

自分のことなのに、よくわからなかった。


いや――彼女は俺と違って、もう答えにたどり着いたのかもしれない。


俺も何も考えていなかった頃の方が、もしかしたら幸せだったのかもしれない。


それでも、自分の気持ちは自分にしかわからない。

茜ちゃんだってそうだ。


「泉……月が綺麗ですね……」


茜ちゃんが、俺に敬語なんて珍しい。


「綺麗だったな。 もう隠れたけど……」

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