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元プロゲーマー、VRで銃が当たらないので投げナイフだけで無双します。  作者: 那須 儒一
四章 ジャパンリーグ編

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69話 歓迎会

「「今日は、三ヶみかじり結花ゆうかさんの歓迎を祝して――KP(けーぴー)!」」


シェアハウスもとい――茜ちゃん家の屋敷でグラスが酌み交わされる。


「う〜ん! やっぱり日本酒は最高ね!」

結花さんは乾杯と同時に、盃を飲み干す。


「結花さん、お酒強そうですね!」

桃園さんはそういいつつ、結花さんにお酌をする。


「ふふ、お酒は世の中のしがらみから解放してくれるからね」


「なんか、結花さんもいろいろと苦労されているんですね……」

言葉が深いというか……字面だけ受け取るとアル中なだけな気もするけど。


「そうよ。生きるって本当に大変なんだから……」

結花さんは、遠い目をしていた。


「そうですね。俺も身に沁みてわかります」


大変だったのは俺だけじゃない。

形は違えど、みんな苦労しているんだ。


……それでも、こうして笑って過ごせる時間があるだけ幸せなのかもしれない。


「泉くんも苦労が顔に出ているわよ。

お姉さんになんでも話してみなさい。みんなじゃ恥ずかしいなら、ベッドの中でもいいわよ?」


「え、本当ですか!」

思わず食いついてしまう。


「泉くん、そういう優柔不断なところが、女の子を泣かせるんだよ!」

桃園さんがこっちを睨んでいる。


「はい……すみません」


「ふふ、泉くんって、モテモテなんだあ」


「いや、そんなこと……ないよな?」

桃園さんに目配せする。


「……ふん!」

なぜか、そっぽを向かれてしまった。


「舞ちゃん、私とどっちが飲めるか勝負しましょう!」


「私、酎ハイしか飲めないから、それでもいいなら乗ってあげる」


向こうでは、舞ちゃんと楓が、飲酒バトルを始めた。この二人、最近仲が良いな。


「泉……私にもお酌して……」

茜ちゃんが缶ジュースを差し出す。


「缶の中にジュースのおかわりを入れるのか?」

入れるの難しいんだけど……。


「ありがと……ちゅっ……」

茜ちゃんが、俺の頬にキスをして舞ちゃんと楓の方に走っていった。


茜ちゃん……シラフだよな?


「結花さん……ウチの恋愛相談に乗ってください!」

岬が食い気味に、結花さんに詰め寄る。


「おっ、いいわね! お姉さんそういうの大好物よ!」


岬の恋愛相談か……少し気になるな。


「前から気になっている人がいるんすけど……その人の周りには……女性の影が多いんです。

ウチなんか、眼中にないのはわかってるんす……でも、諦めようとしても……どうしても、諦めきれないんす」


「うんうん。青春だねぇ。

岬ちゃん……無理に諦める必要はないよ。

その人に、アプローチとかしてみた?」


「そんな勇気も魅力も、ウチにはないっすよ……それに、万が一ウチに振り向いてくれたとして、浮気が心配で……」

岬が大きくため息をつく。


「そんなことない! 岬は魅力だろ!

気が利くし、可愛いし、それでいて仲間想いだし……それと、そんなチャラそうな男はやめときなさい!」


「「はぁ〜」」

岬と桃園さんがジト目で俺を睨んでいる。


「な、なんだよ……本心だぞ……」


「泉くん、岬ちゃんは結花さんに相談してんだよ」


「はい……出過ぎた真似をしてすみません」


「ふふふ、確かに難しそうではあるけど……岬ちゃん、必勝法があるわよ……」


結花さんが岬に耳打ちしている。


「なっ……ゆ、結花さん! そんなの無理っすよ!」


「ふふ、待っているだけでは手に入らないわよ」


「えぇ~、結花さん、私にも教えてくださいよ!」

桃園さんも、結花さんに擦り寄る。


「俺もめちゃくちゃ気になるんだが……」


「泉くんには……必要のない情報だから気にしないで……」


結花さんは、桃園さんにも耳打ちする。

……めちゃくちゃ気になる。


§


夜は更け――俺は離れで眠りについた。


どれぐらい眠っただろうか……。

寝苦しさで目が覚める。


うっ……重い……何かが俺の上に乗っている。


目を開けると、岬が俺の上に乗っていた。


「ちょっ……岬?」

彼女に触れると、肩が出ていた。


えっ、タンクトップ?

足に、岬の素肌が触れている気がする。


とりあえず、確認のために触ってみる。


「んっ……」

岬が声を漏らす。


彼女の太腿に触れると、汗で湿っていた。

もしかして……下着?


「泉先輩……いいっすよ……」


いいって……なにが!?


これは、夢か?

そう思えば思うほど、お酒が抜けていく気がした。


「……って、やっぱり無理っす!」


「ふげっ!」

岬の頭突きが胸に刺さる。


「おい……結花さんの入れ知恵だろ?」

まったく、あの人は、岬に何を吹き込んだんだよ。


「……バレたっすか……やっぱりウチにはできないっす」

岬の体が震えていた。


声を押し殺すように泣いていた。


……ようやく分かった……岬の好きな人……俺だったんだ。


俺は岬のこと……どう思っている。

可愛い後輩? 友人? 同じ箱のメンバー?


「泉先輩……忘れてくださいっす……ウチなんかが、しゃしゃり出てしまって……舞先輩や楓先輩にも申し訳ないっす……」


俺は岬を横に寝かせた。


「まったく……不器用な奴だな……」

岬の頭を撫でてやる。


「いや、俺がフラフラしているのが悪いんだ……岬……俺決めたよ……」


「何がっすか?」


「日本リーグが終わったら、自分の気持ちにケリをつけるよ」


「……はいっす……泉先輩……もし、その人と上手くいかなかったら、ウチがいつでも待ってますからね……」


「それって、岬をキープしているみたいじゃないか。……俺ってめちゃくちゃクズ男みたいじゃん」


「泉先輩はクズ男っすよ!」


「うっ……そこまではっきり言わなくても……」


「でも、クズ男の中ではマシな方っすよ」


「うっ、さすがの俺でも傷つくぞ……」


「傷ついてください!

……ウチの失恋の傷に比べたら可愛いもんっす」


「岬……ごめん……」


「謝んないでくださいっす……ウチが惨めになるじゃないっすか……」


泣いている岬を抱きしめたかったが……やめた。


今まで優しさのつもりで岬を傷つけていたんだ。

いや、岬だけじゃない……もしかしたら、他の女性に対してもそうだったのかもしれない。


自分が恋愛として、誰が一番好きか……いい加減はっきりしないとな。


「岬……くらえ!」


俺は岬の脇やお腹をくすぐる。


「うぎゃー! 突然、何するっすか……く、くすぐったいっす!」


「こんな格好で誘惑しやがって!

俺だって男なんだぞ!」


岬が慌ててタンクトップの裾を引っ張る。


「や、やめるっす! 泉先輩、ごめんなさいっす!」


岬は泣きながら笑っていた。


どうすればよかったのか、

何が正しいかなんて、俺にはわからない。


――自分のことなのに、なんだか遠く感じた。


今はこの目の前の可愛い後輩を、無理やり笑わせよう。

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