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元プロゲーマー、VRで銃が当たらないので投げナイフだけで無双します。  作者: 那須 儒一
四章 ジャパンリーグ編

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68話 六人目

「皆さ〜ん!

ルミナスイリアに新しく加わった、

天音あまねユウカで〜す!よろしくね〜!」


配信画面におっとりとした声が響く。

どこか落ち着く……安心感のある声だ。


動画配信サイトで、新人のユウカさんの様子を見守る。


流れるように長い黒髪に、太腿と胸元が露出した華風の衣装。おっとりした大人のお姉さんといった印象だ。


今度、コラボしましょうね!


配信を眺めながら、せっかくなのでコメントを打ち込む。


「あっ、霧雨キリサメレイちゃん〜

よろしくお願いしま〜す。

ぜひぜひコラボしてくださいさ〜い!」


おい、泉! また、新人につばをつけとく気か?

お姉さん属性いいね!

新しいタイプだ

よしよししてほしい

バブみがやばい!


ルミナスイリアもだいぶ有名になったのか、同接が既に1000人を突破した。


当たり障りのない質疑応答で、彼女の配信は終わった。


§


翌朝――屋敷のインターホンが鳴り響く。


「はい、どちらさま?」


みんな、配信中か寝ていたので、やむなく対応する。


「あら〜初めまして〜」

この声……もしかして……。


「……天音ユウカさん?」


長い黒髪でタレ目の綺麗なお姉さん。

30代前半の女性といったところだろうか。


「あ、そうです。あなたは?」


「霧雨レイ……です」


「えっ!? 男の子!」


「そうですよね……初めはそうなりますよね……」


「今日はご挨拶に来ました〜。

固定電話がないとのことだったので、アポ無しでお伺いしてすみません」


「これはこれはご丁寧に……」

彼女に倣い俺も頭を下げる。


「俺は泉海人……よろしくな、後輩!」


「ふふ、私は三ヶみかじり結花ゆうかと申します。頼りにしてますね、先輩!」


独特な大人の女性の魅力を感じる。


§


俺の部屋でお茶とモナカを食べながら、軽く雑談する。


「三ヶ尻さんはどうしてVTuberに?」


「結花でいいですよ。

う〜ん、夫が亡くなって……なんとか、働かなきゃって……」


「これは、立ち入ったことをお聞きしてすみません」


「ふふ、私から話したからいいのよ。

あとあと知られるよりも、先に知っててもらったほうが楽じゃない?」


楽なのか?


「なら、俺もカミングアウトをします……パスタは箸じゃないと……食べれません……」


「……」

一瞬――沈黙が室内を支配する。


「ぷっ、ふふ……泉さんは面白い人ですね。

私があと10歳若かったら、猛アタックしたのに……」


「今からでも、受け付けていますよ!」


「あら〜意外と女性慣れしているのかしら?

確かに、女の子に囲まれて生活しているんでしょ。毎日が楽しくて仕方がないんじゃない?」


「それはもう……っと……今のは冗談で……」

初対面なのに軽い男と思われたくない。


「俺のことも、海人って呼んでください!」


「はい、海人さん。今後ともよろしくね?」


さすが大人の女性……安定感のある会話だな。

ウチには曲者が多いから、どこかほっとする。


ガラッ!

唐突にドアが明け放たれる。


茜ちゃんだ。

彼女は、俺と結花さんの顔を交互に見る。


「あっ……泉がデリヘル呼んでるっ!」


茜ちゃんがそう叫びながら、走っていく。


「こらっ、お前、なんて失礼なことを……」


呼び止めて叱ろうとするが、彼女は走り去ってしまった。


「結花さん、申し訳ございません。

ウチの後輩が……なんという無礼を……」

地面に頭が着くぐらい、深々と土下座する。


「ふふっ、いいんですよ。

海人さんも毎日指名していくださいね!」


結花さんが首を傾げて微笑む。


「ぶっ……」

思わず、吹き出してしまう。


この人、意外とノリがいいんだな。


「はい、毎日この部屋に来てください!」


彼女にそう告げた後――これは、殺気っ!?


慌てて振り向くと――目を見開いた舞ちゃんが立っていた。


「海人くん……大人の女性を指名したんだ。

子どもっぽい、私に対する当てつけ?」

なんか、壮大に勘違いしている。


「海人さん……赤ちゃんプレイが好きみたいですよ〜」


「ちょ……結花さん!」


彼女が悪ノリをし始める。


「ふ〜ん。私だってそれぐらい、やってあげるけど?」

なぜ、舞ちゃんはドヤ顔で、怒りながら張り合っているんだ?


「舞ちゃん、だって充分、大人の魅力があるから」


「年増っていいたいの?」


何を言ってもダメそうだ。


「海人さん。私とするとき、貴方の名前をずっと叫んでましたよ!」


「ちょっと、結花さん、これ以上は掻き回さないでください!

舞ちゃんが一番危険なんですから!」


「私が――一番危険?

海人くん……って実は、いろいろと拗らせているんだ。ふ〜ん」


だめだ、言い訳をすればするほど、墓穴を掘ってしまう。


「舞ちゃんが相手にしてくれなくて……俺……寂しくて……」

こうなったら、最終手段の泣き落としだ。


「海人くん……」

舞ちゃんが俺をそっと抱きしめてくれた。


「あらぁ~」


あらぁ〜じゃないだろ!

まったく、結花さんもとんだ食わせ物だよ。


ガチャ――。


「ガチャ?」

謎の金属音とともに、俺の腕に違和感を感じる。


舞ちゃんが左腕を上げると、俺の右腕も引っ張られるように上がった。


俺と舞ちゃんが手錠で繋がれていた。

「舞ちゃん……?」


「ふふっ、これでいつも一緒だよ……」


やばい、舞ちゃんのことは好きだけど、さすがに手錠生活は無理だ。


てか、なんで手錠なんて持ち歩いているんだよ!


配信にも支障がでるし、トイレやお風呂はどうするんだよ!


「それじゃ〜ごゆっくり〜」

彼女は手を振りながら離れを後にした。


「ゆ、結花さん! 待ってください!」


冷たい手が、俺の首根っこを掴む。


「海人く〜ん。やっぱりあの女がいいの?」


「い、いえ……舞ちゃん一筋です。

舞ちゃん……押し付けないって話はどうなったの?」


彼女の誠実さにつけ込んで、一縷の活路を見出す。


「うっ……お、押し付けてないもん」


「縛り付けているよね?」


「うっ……だって……泉くんが……不安にさせるから……」

舞ちゃんが泣き出してしまった。


「不安にさせて、すまない……」


俺は舞ちゃんを優しく抱きしめた。


「なんすか、この安い昼ドラは……」

離れの渡り廊下に岬が、頭を掻きながら立っていた。


「ははは……岬、助けてくれ!」


「嫌っすよ。舞先輩、怖いですし」


「岬……俺は、岬のことを信じている……お前なら俺を救ってくれるよな?」


「海人くん……私の目の前で……他の人を誘惑しているんですか?」


「ぐっ……」

俺を抱きしめる舞ちゃんの手に力がこもる、

彼女の爪が背中に突き刺さる。


「泉先輩、自業自得っすよ……みんなには離れに近づかないように言っとくっす!」

岬はそれだけ言い残すと、離れの扉が締め切られた。


§


その後、夜遅くまで――屋敷の離れから断末魔が響き渡る。

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