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元プロゲーマー、VRで銃が当たらないので投げナイフだけで無双します。  作者: 那須 儒一


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7話 初コラボ

「どーもー!

みんなの愛犬、犬柴アカリだよー!」


ボイスチャットからお馴染みの声が、聴こえてくる。


「今日はなんと初コラボです!

コラボ相手は、ルミナスイリアの後輩である、

赤い死神こと、霧雨レイちゃんです!

ぱちぱちぱちー!」


犬柴アカリは、手でも口でも拍手している。


画面越しに、俺のアバターと犬柴アカリが並んでいた。


「って、誰が赤い死神だ!

ルミナスイリア所属の霧雨レイだ。

よろしく……ね」


先日、NFネオンフラグでのプレイの切り抜きがバズり、なぜかちまたで“赤い死神”と呼ばれるようになった。


中二過ぎるだろ。

――おかげで登録者が一気に5000人まで増えたから、いいんだけど。


コメ欄も、赤い死神コールで沸いている。


「レイちゃん!

私が先輩なんだから、ちゃんと敬語で話してね」


画面越に、犬柴アカリがウィンクを飛ばす。


「わかりましたよ。アカリ……先輩」


「ふふん。いいねぇ~、萌えるね~」


「萌えるとか、今日び使わないだろ……」


「ああー、またタメ口に戻ってるー!」


ったく、敬語は苦手なんだよな。


そう思いながらも、犬柴アカリと会話できていることが、どこかむず痒かった。


「ではでは〜、ルミナスイリアの新人お披露目ということで、事前に私のリスナーに質問を募集していました!」


「そういえば、そんな企画するって言ってたな……」


「ああ〜、レイちゃんってば、企画忘れてたの? ひどーい!」


「悪かったって……」


アカリとレイって相性いいね

レイちゃんの男勝りなところがどストライク!

アカリちゃんも可愛いね


コメ欄は今日も絶好調だな。

男勝りってか、男なんだけどな。


「さっそく、一つ目の質問からいくねー。

ずばり、レイちゃんは、処女なの?」


いきなりぶっ込んだ質問だな……。

俺の反応とは裏腹に、コメ欄は沸いている。


「はっ?

処女どころか、今まで付き合ったことなんてねぇよ……」


別に嘘は言ってない。

生まれてこの方、恋人はNFネオンフラグだけだ。


コメ欄が一気に加速する。


俺の角が磨かれました!

経験なさそう

裏では男いるだろw

初見です

今日、カツ丼食べました


なんだよ、角って……、

自分の食事報告しているリスナーもいるし、

相変わらずカオスなコメントだな。


「へぇ~レイちゃんってば、処女なんだ~。

ホントかなあ?」


犬柴アカリはわざとらしく、煽ってくる。


「こんな悲しい嘘をついて、どうすんだよ。

今度、確かめてみるか?」


「えっ!?」

画面越しの犬柴アカリが、慌てふためく。


その役、俺にやらせてくれ

確認任せろ!

住所教えてくれ〜

凸します!


リスナーめ……こんな時だけ、意見が一致すんなよ。


「俺は、火星に住んでいるから、

みんな、会いに来てね」


手を振りながら、

画面越しに、ぎこちないウィンクをしてみせる。


霧雨レイの生まれは火星——という設定だ。

適当に言ったわけじゃない。


遠すぎワロタ

宇宙飛行士を目指します!

火星のどの辺?

夜は親子丼にしようかな


リスナー、それ以上、掘り下げなくていいよ。

さっきのカツ丼のリスナーか……次は、親子丼食べんの?

ヘビーすぎないか……。


「えー、レイちゃん、火星にいるんだ。残念……」


なぜか、犬柴アカリが肩を落としている。


「レイちゃんのリスナーさん!

アカリに質問ありますか〜?」


犬柴アカリが、俺のリスナーに呼びかける。


「だってよー、お前ら、なんか質問あるか?」


パンツの色を聞いてくれ

パンツの色

下着のメーカーと名前を教えてくれ

スリーサイズが知りたい!

何カップ?


「お前ら……終わってんな……」


「え〜、なになに〜?

私、なんでも答えるよ?」


「アカリちゃんの……パンツの色が知りたいってさ」


リアルで聞いたら、一発で関係が終わる質問だ。


「えっ、パンツの色……。

うーん、それなら……レイちゃんのリスナーさん!

私にチャンネル登録してくれたら、教えよっかな〜」


登録しました

登録!

既に登録済みです!

登録した はよ!

やっぱり、海鮮丼がいいかな


「お前ら……」

呆れてため息しか出ない。


カツ丼ニキ……親子丼でも海鮮丼でも、なんでもいいから食ってくれ。

ここで、ブレないこいつが、逆にまともに見えてきた。


「むふふ〜、淡いピンク色だよ!」


犬柴アカリが、唐突に爆弾を落とす。


「えっ……ピンク色!?」


コメ欄が過去一の勢いで流れ出す。


初めて、俺とリスナーの興奮が一致する。


「さてと、えんもたけなわではございますが……そろそろここで、お開きとさせていただきます」


犬柴アカリが……スーパーの閉店時の、よく耳にするBGMを流し始める。


「堅苦しい挨拶だな」

犬柴アカリの普段とのギャップに思わず、吹き出す。


「ふふふ、みんな〜!

私の後輩の霧雨レイちゃんをよろしくね〜!

それと、レイちゃんのリスナーさんも、また会おうね〜」


彼女は、つくづく配信者に向いているな。


「またな!」

俺も彼女にならい、リスナーに向けて手を振った。


電源を切ると——PCのモニターが暗転する。

VRゴーグルを外して、ため息をつく。


疲れた……。


「レイちゃん! かっこよかったな〜。

私の後輩かぁ……むふふっ」


今度は壁越しから、生の犬柴アカリの声が聞こえる。


犬柴アカリの方が、格好よかったよ。

——返せない言葉を心に秘めて。

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