6話 赤い死神
NF――
五対五で爆弾の設置と解除を争う競技FPS。
四ラウンド先取で勝利。
配信画面に向かって、簡単にルールを説明する。
同接75人!
昨日よりも人数が増えている。
賛否のコメントが飛び交う。
そんなこと言われなくてもわかってるよ
今さらルールの説明かよ
先輩がポンコツだから、レイちゃんもたかが知れてるだろ
初見です!NF配信楽しみ!
頑張ってください!
帰ってきた……この場所に。
眩い視界が広がり、試合が始まる。
VRでも配信のコメ欄だけは見れるようになっていて、VRのトラッキング機能で、表情をVのアバターと連動できる。
たぶん、アカリちゃんも同じ方法でNFの配信をしていたはずだ。
配信での初対戦――マッチングする。
マップ︰セラーノ
モード︰オーバーライド(爆弾設置/解除)
セラーノは白壁の民家に石畳が敷き詰められた、西洋風のマップ。
範囲は比較的狭いが、民家の合間の死角が多いのが特徴的だ。
攻撃側か……全滅かボム爆破で勝利。
試合開始の合図が鳴り響く。
開幕、二時の方向に投げナイフを遠投する。
パーティーメンバーが走り出す中、空に赤い光が上る。
――投げナイフによるキルログが流れる。
はっ!?
チートだろw
何が起きた!?
初見です!
レイちゃん可愛い!
ふっ……コメ欄がざわついているな。
プロゲーマー時代、実家よりも練り歩いたマップだ。
このマップでの、開始時の敵の配置なんて手に取るように分かるぜ!
「開幕、この方向にさっきの角度で投げると、ロングを張っている敵を倒せるのよ!」
チートを疑われないように一応、リスナーに解説を入れる。
マップ内に設置場所がA、B、Cの3箇所存在する。
攻撃側と防衛側は、味方の配置人数やヒーローの特性を活かしつつ駆け引きをして、相手を倒す。
それが、NFの醍醐味だ。
開始、30秒。
C側を攻めた味方が二人殺られた。
敵は俺が倒した一人だけ……。
3VS4か……。
ボム所持したA側に他の二人も攻めている。
「なら、俺はB側から敵の位置情報を探る」
俺が使用している、ヒーローの“フロッグ”は足音が小さいのと、機動力が特徴的だ。
S字の路地を抜けると、中央広場の噴水が見えた。
水の音に紛れ、武器を構える音がかすかに聞こえた。
――どこかで張っているな。
自分の足音が鳴らないってことは、
周囲の音をより聞き取りやすくなる。
炙り出すために、フロッグのアビリティを使用するか……。
手をかざしアビリティを発動する。
分身が走り抜け、噴水前を横切る。
次の瞬間、分身が広場の右側から撃ち抜かれた。
「広場の右の角に、敵はいる」
敵に俺がフロッグであることは割れた。
分身が、もう1体出せることも敵にバレている。
分身を自分の後につけ、本体の俺が先に飛び出す。
右の角には見向きもせず、噴水前を駆ける。
――よしっ、撃たれなかった。
続けて分身が後から飛び出し、右の角に一直線に向かう。
射撃音が鳴り響き、分身が撃ち抜かれた。
「騙されたわね。
二体目を警戒したのが敗因よ」
俺は、残る1本の投げナイフを放ち、俺に銃口を向けようとする敵の脳天に突き刺した。
――赤い柱が空に上る。
あと三人!
分身のふりをして敵を仕留めた!?
レイちゃんカッコいい!
まじで!? すごすぎだろ!
コメ欄が再び賑わう。
やばい――ゲームに集中しすぎてて喋れてない。
A側で射撃音が鳴り響く。
直後、味方が一人倒される?
2VS3か……依然、劣勢。
ミニマップに二つの赤点が光る。
A奥に二人いるのか。
なら、残りはCに一人。
……Cの敵を待ち伏せて狩るか?
投げナイフを拾った。
――息を潜め、A側に駆けつけようとする、一人を仕留める。
残り二人!
直後、味方が強引にボムを設置する。
「急がないとまずいな……」
ミニマップ上に設置位置が映し出される。
射撃音の末に味方が倒された。
1VS2か……。
ボムの解除音が聞こえる。
残る投げナイフは一本。
開幕、敵陣に投げたナイフを回収している時間はないな。
マップを確認し、投げナイフをボムの設置位置に、飛ばす。
天高く弧を描き、投げナイフが、ボム解除している敵の命に届く。
残り一人……。
俺が使えるのはハンドガンだけ……でも、俺に銃は使えない。
覚悟を決め、A地点に向かう。
見晴らしの良い位置でボムが音を発していた。
潜んでいる敵を待つか?
でも、俺に倒す手段は無い。
必殺技であるウルトを発動した。
フロッグの必殺技――それは、簡単に言えば大きく飛び跳ねる。
体が発光し、空に舞う。
――家屋を越え、ボムの上に降り立つ。
俺は、さっき投げたナイフを回収する。
背後から、銃を構える音!?
慌てて投げナイフを投げた!
――しかし、敵の銃弾は俺の体を貫いた。
残り時間はわずかだが、急げばボム解除が間に合う。
俺は観戦視点に飛ばされた。
敵の最後の一人がボムを解除していた。
コメ欄を眺める。
ああっー!
惜しい!
でも、一人で4人倒したんだ!
レイちゃん、強すぎ!
てか、ハンドガンも使えよ
誰もが敗北を確信していた。
――俺以外の。
ボムの解除間際、空から一筋の銀閃が落ちる。
最後の一人の頭上に刺さり、敵が全滅した。
「最後の投げナイフ――真上に投げたのよ。
私が死んでも、投げナイフは残り続けるのよ!」
俺の言葉と共にコメ欄が盛り上がる。
その後も、ラウンドを取り、
4ー0のストレート勝ちを収めた。
結果は16キル、2デスでMVPに輝いた。
強すぎワロタ
レイちゃん、結婚してくれ!
マジで投げナイフだけで勝ちやがった!
赤い死神だ……
プロ顔負けの実力じゃん
プロゲーマー時代に散々浴びてきた歓声――あの頃は鬱陶しかったが、
コメ欄の歓声が、今は、なぜか心地よかった。




