55話 打ち上げ
「「KP!」」
狭苦しいボロアパートで、なぜか打ち上げが行われている。
チーム︰俺たちに加えて……なぜか、舞ちゃん、岬、楓もいるし……。
……ただ、由里は来なかった。
あいつ、そういえば人見知りだったな。
「あっ、泉〜、春巻き食べさせて〜」
俺の膝の上に乗っているこのゴスロリっ娘は誰だ?
黒髪にピンク色のメッシュが入っている。
「ところで君は……?」
「ん〜うまっ!」
春巻きを食べることに一生懸命で、俺の話なんざ聞きちゃいない。
「海人くん……その子は誰なの?」
舞ちゃんの笑顔が引きつっている。
「誰なのか……俺が聞きたい……」
「すみません……私の先輩が……」
薄緑髪のゆるふわメガネっ子が頭を下げる。
「君は……ええっと……」
「内宮春香です!
東雲ミリアの中の人です☆」
彼女は目元で横Vサインをしてみせる。
「ああ……ミリアちゃんか。
実物も可愛いんだね……」
「えっ……そ、そんなこと……」
春香ちゃんは頬を抑え首を左右に振る。
「こらっ、春香!
私の彼氏に色目を使うでない!」
膝の上の女の子がなんか、叫んでる。
「泉先輩も隅に置けないっすね。
いつの間に手を出したんすか?」
「岬、俺は断じて手は出していない!」
「手じゃなくて、別の部分を出したってか!」
オールバックのおじさんが豪快に笑う。
「やさぐれニキさん……変なこと言わないでください!」
春香ちゃんが声を荒げる。
「変なことてなんですかぁ?」
楓がわざとらしく春香ちゃんに尋ねる。
「う……それは……」
「春香はむっつりだからの……」
「くるみ先輩、やめてくださいよ!」
「くるみ……キミは、くるみちゃんって言うの?」
「おっ、ようやく私に興味を持ったか……私は神崎くるみ……Vでは甘噛シュガーとして活動してるから」
「ああ〜実況席の人か……」
「……えいっ!」
「んぎゃあ!」
横から来た茜ちゃんが、俺の膝の上に乗っているくるみちゃんを突き飛ばした。
「な、何をする!?」
「……けっ」
茜ちゃんは、くるみちゃんを一瞥すると、俺の膝の上に座った。
「……どうしたんだ、茜ちゃん?」
「泉……鼻の下伸びてた……私で我慢して」
「我慢って、茜ちゃんが座っても嬉しいよ」
「なっ、私の場所なのにっ!」
今度は、くるみちゃんが、茜ちゃんに飛びかかり、部屋の隅でじゃれ合う。
「おい、狭いんだから暴れるなよ――ふげっ!?」
今度は、楓が俺の膝の上に乗る。
「海人くん……なんか、重そうなリアクションね……失礼じゃない?」
「いや、そんなことはないぞ……」
「本当に? えいっ! えいっ!」
「ちょっ、楓……やめろって……」
楓のお尻が俺の膝の上で跳ねる。
「あれ〜海人くん……なんか、硬いものが当たっているんだけど?」
「おい、適当なこと言うなよ!」
俺は全力で否定した。
「うわぁぁぁぁ!」
今度は舞ちゃんが膝の上の、楓を突き飛ばした。
「きゃあ!?」
舞ちゃんは頬を赤らめながら、俺の膝の上に座る。
「か、海人くん……やっぱりこういうのは、早いよね……」
なぜか、頬を赤らめ、舞ちゃんは膝の上から立ち上がった。
……別に早いも遅いもないと思うけど。
「舞ちゃんよくも!」
今度は、楓が舞ちゃんに飛びかかる。
「若いってのはいいねぇ〜」
やさぐれワンカップさんは、この騒がしい中、一人でちびちびとワンカップを飲んでいる。
「まったく、皆さん元気っすね……膝に座るのってどんな感じなんすかね……」
岬がぼそっと俺の隣でこぼす。
「岬……試してみるか?」
「ええっ、ウチはいいっすよ……」
「なら岬ちゃん。一緒に座りましょ!」
春香さんが岬の肩を掴み、あぐらをかいている俺の左右の太ももに二人が乗る。
「ちょ……重っ!」
「あっ、重いって言ったっすか!?」
「泉さん……ノンデリですね!」
二人は、なぜか俺の左右の膝で跳ね出す。
「い、いたって……や、やめてくれ……」
嬉しいといえば嬉しい。
でも、やめてくれ!
俺の理性があるうちに降りてくれ。
「ふぅ、これ以上は本当にやばかった」
「泉先輩……セリフと行動が一致してないっすよ」
「はっ!」
俺は無意識に二人の腰へ手を回し、内側に引き寄せていた。
「泉さん……私も悪ノリをしすぎていました」
春香さんが立ち上がり、頭を下げる。
「べ、別に……これくらい大丈夫ですよ!」
「なんか、残念そうっすね!
ウチは眼中にないんすか?」
まだ膝の上に乗っていた岬が、なぜか怒り出した。」
「いでででで!」
岬の両手が俺のほっぺたを引っ張る。
「岬、ごめんって……岬だって可愛いほうだよ!」
「なんか、上からっすね……しかも、誰かと確実に比べてるっすよね?」
岬に押し倒され、今度はお腹の上に乗っかる。
「ぐふぇ……く、苦しい……吐きそう……」
「泉先輩は! いつも! 思わせぶりな、態度でっ! 誰にでも優しくて……うっ……ううっ……」
えっ、ええっ!?
なんでか、岬が泣き出した。
「海人くん、岬ちゃんに何したんですか!」
ケンカしていた舞ちゃんと、楓が戻ってきた。
「もしかして、先輩という立場を利用して、自分のお腹の上に座らせたのね?」
「楓……俺がそんなことするような人間に見えるか?」
「春香ちゃん……一部始終を見ていたんでしょ?」
舞ちゃんが春香ちゃんに尋ねる。
「泉さんが強要していました……」
「やっぱり……」
楓がため息をつく。
「そんな……俺は無実だ〜!」
「ごめんね。泉さんが罰を受けないと、岬ちゃんが可哀想だったから……」
春香ちゃんがそっと耳打ちをする。
この後、舞ちゃんと楓の合体で、ひどい目に合わせられた。
茜ちゃんとくるみちゃんは、じゃれ合っている内に寝ているし、やさぐれワンカップさんもウトウトしている。
おおよそ、打ち上げと呼べるような会ではなかった。




