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元プロゲーマー、VRで銃が当たらないので投げナイフだけで無双します。  作者: 那須 儒一
三章 NF杯編

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48話 飲み会

初のスクリム戦は5ー6で敗北を期す。

連携が噛み合わなかった部分が――最終的に勝敗を分けた。


練習試合は課題を見つけるためのものでもある。

これはこれでよかった気がする。


本番で勝てば――それで――。


「むっきー!」


午後11時――舞ちゃんの叫び声というか、

奇声がボロアパートに響き渡る。


……大丈夫か?


「舞ちゃーん、飲みに行こう!」


壁越しに、ストレスが溜まってそうな隣人に声をかける。


隣からドタドタと足音が響く。


――ガチャ。

俺の家の玄関が勢いよく明け放たれる。


「うん! 行く!」

慌てて出てきたのか、髪が乱れてラフな寝巻きを着ていた。


白いフリルとリボンがあしらわれた、ゆったりとしたナイトワンピ……可愛い。


でも、他の男には見せたくない。


「舞ちゃん。これ着てろよ……」

壁にかかっていた黒いジャケットを彼女に羽織らせる。


くんくん――舞ちゃんが羽織ったジャケットの匂いを嗅ぐ。


「ごめん……臭かった?」


「ううん。海人くんの匂い……安心する」


彼女の仕草に思わず胸が跳ねる。

舞ちゃんって、こんなに可愛かったか?


抱きしめたくなる衝動を抑え、

二人でアパートの外階段を降りる。


階段を一歩一歩踏みしめるたびに、

寂れた鉄の音が、夜の静寂しじまに響き渡る。


「……ねえねえ、突然どうして?」


「さっき、叫んでたろ?

ストレスがたまぅてんじゃないかと思って。

それに……舞ちゃんに会いたくなって……なんてな」


「海人くん……どこで、そんなキザなセリフを覚えたのかな? お姉さんに教えなさい!」


舞ちゃんは、なぜか頬を膨らませていた。


「お姉さんって、俺のほうが一つ上だろ?」


「ルミナスイリアでは、お姉さんなんです!」


「はいはい」


アパートの外階段を下りると、

一階の左右の扉が開く。


「さて、行くっすよ!」


「そうねぇ……今夜はとことん飲もうかしら」


ジャージ姿のみさきとネグリジェ姿のかえでが、示し合わせたように出てきた。


「二人ともどうしたんだ?」


「えっ、飲みに行くんすよね?」


「あれだけ、大声で話してたらねぇ。

当てつけみたいでムカつくじゃない?」


「舞ちゃん、二人も一緒に行って大丈夫?」


「えっ……まぁ……うん……」

歯切れが悪いな……。


§


四人で町中のアーケード内に繰り出す。


楓の格好はさすがに刺激が強すぎるので、着替えてもらった。


市街地は田舎のわりに、遅くまで営業している居酒屋が多い。


「焼き鳥、餃子、イタリアン……どれにする?」


「「焼き鳥」」

――満場一致で焼き鳥に決まった。


赤い暖簾のれんをくぐり、昭和な雰囲気の焼き鳥屋に入る。


カウンターと狭い座敷――常連のお父様方がゲラゲラ大声で笑っていた。


「おっちゃん。四人――座敷は空いてる?」


「おっ、兄ちゃん――久しぶりじゃねえか、べっぴんさんを三人も連れて、なかなかやるじゃねえか」


「だろ? でも、俺の手に余る女性たちだよ……」


一瞬、鼻が高くなったが、大変だった思い出ばかりがよぎり、少し気分が落ち込む。


「へぇ~、海人くん。若いのに渋いお店を選ぶのね……」


「ここは……」

由里と来ていた……なんて、みんなには言えないか。


金がなかった当時、無料のキャベツとビールだけで、何時間も飲んでいた。

今思えば迷惑な客だったかもな。


狭い中、奥の座敷に座る。


――舞ちゃんと肩が触れ合う。


「あっ、わるい」


「ううん、私の方こそ……」


「なんか、匂うわね……ね、岬ちゃん?」

楓がジト目で俺と舞ちゃんを睨む。


「ラブコメの波動ってやつっすね」


「そんなことないって」

俺は慌てて否定する。


「そんなことないの?」

舞ちゃんが上目遣いで俺を見あげる。


うっ……可愛い。

でも、みんなの視線が痛い。


「さ、腹減ったし、食べて飲もうぜ!」


「あっ、誤魔化した。

――いいけど、海人くんの奢りね」


「泉先輩、ごちになります!」


「ちょっと、二人とも……」


「たまにはいいよ。

今の俺があるのは……俺が俺として生きてこられたのは、みんなのおかげだから」


「おやじさーん! 

生四つ――あと、盛り合わせ四人前!

あっ、ぼんじりと月見つくねを追加で四本ずつ!」


「おい、楓――せっかくいい感じのセリフでキメたのに、聞けよ」


「そんなの、改めて言わなくても――ね?」


「ははは、楓先輩らしいっすね」


「あっ、私、椎茸食べたい!」


舞ちゃんまで……既に焼き鳥の口になっている。


「てか、スクリムは新鮮でいいんだけど、

ルミナスイリアのみんなとNFネオンフラグをできないの、少し寂しいっすね」


「岬ちゃんは寂しがり屋さんだもんねぇ」


「はい、ウチは寂しがりやっす。

だから、泉先輩……たまには、ウチの相手もしてくださいね」


「岬……」


彼女の表情が、少し無理をして笑っているようにも見えた。


「楓ちゃんだけ別のチームだよね。

一人で気まずくない?」


「可愛い声で、褒めてればうまくいくものよ」

楓は煙草を吹かしながら、舞ちゃんにドヤ顔をする。


「さすが、楓先輩っす!」


「生おまち!」

生ビールの大ジョッキが四つ並べられる。


「よしっ、さっそく飲むか!KPけーぴー!」


「「KP!」」


ジョッキがぶつかり、乾いた喉に冷たいビールを流し込む。


「ぷは~、うまい!」


§


互いの近況を報告していると、大皿にまとめられた串盛りがテーブルの上にドカっと置かれる。


「ウチ、皮が好きなんすよね!」

岬ちゃんがタレに浸った皮を一口――

「うまっ!

カリカリの皮に、甘じょっぱいタレが最高っす!」


「あ、椎茸きた!」

舞ちゃんの目の前に椎茸串が置かれる。

二枚大判の椎茸の上で鰹節が踊っている。


「へぇ~、椎茸串か……美味しそうだな」


「海人くん、一つ食べる?」


「え、いいの?」


「うん、レモンはかける?」


「お願いしようかな」


舞ちゃんが、カットされたレモンを椎茸の上で、ぎゅっと絞る。


「はい、あーん!」

舞ちゃんが串を差し出す。


「あ……あーん」

流れで口を開け、舞ちゃんに食べさせてもらう。


椎茸を一口でほおばる。

香ばしい薫りに、レモンの爽やかな酸味――噛んだ瞬間には鰹節と椎茸の旨味が口いっぱいに広がる。


「っん、美味い!」


「見せつけちゃってまあ……岬ちゃん、今の動画に収めたから、今度、アップしようかしら?

レイアカのてぇてぇ動画として」


「楓ちゃん、やめて〜」

舞ちゃんが楓のスマホに手を伸ばす。


「ふふふ、お前たちの運命は私の手の中にある」

楓が芝居ががかった笑みを浮かべる。


「泉先輩、ウチ、せせりが食べたいっす!」


「え、ああ……」


大皿からせせりを取ると、岬が口を空けている。

八重歯が出ていて、岬の幼い反応がなんとも可愛らしい。


「はむっ! ん、うまっ!」


岬が頬を押さえて、悶えている。


「あっ……岬ちゃん、ズルい!

海人くん……楓にも食べさせてくれるよね?」


「楓はダメだ。さっきの動画を消したらいいぞ。

いや、他にもいろいろ俺たちを陥れる動画を過去に撮っているよな?

楓の流出したら困る動画を俺に送ってくれたらいいぞ……」


こっちも楓の弱みを握っていれば、彼女の暴走を抑えれるかもしれない。


「……送ったら……食べさせてくれる?」


「ああ、でも内容次第だな……」


「うぅ〜わかったわよ……こ、これでいい?」

楓は手際よくスマホの画面を操作する。


俺の連絡用アプリの通知が鳴る。


スマホ画面を開き、動画を確認する。


「ぶっ!? か、楓……こ、これって……

お前、何でこんな動画撮ってんだよ……

こ、これって自撮りだよな?」


「撮られてるって想像したら、興奮しちゃって……」


「え、海人くん! どんな動画なの?」

舞ちゃんが食い気味に反応する。


「い、いや、ダメだ……こ、子どもには刺激が強すぎる。こ、これは厳重に保管せねば……」


「だいたい想像つくっすけど……泉先輩も男っすね……」

岬がため息をつく。


「え、私――わかんないんだけど!

ねぇ、海人くん、見せてよ!」


舞ちゃんが、俺の手からスマホを奪おうと必死だ。


「私……こんな姿見せたくなかったのに……もう、お嫁に行けない……」

楓が泣き真似を始めた。


「ちょっと、海人くん! 楓ちゃん、泣いちゃったじゃない! どんな動画を要求したの!」


舞ちゃんの表情が徐々に険しくなる。


「いや、要求はしたけど、そもそも、この動画は楓の自撮りだぞ?

見られたら泣くような動画を自分で撮るのもおかしいだろ?」


「舞ちゃん、違うの……昔、海人くんに脅されて……無理やり撮らされたの……」


「おい、楓……どんどん話を盛るのは止めなさい!」


「海人くん!」

舞ちゃんが本気で怒っている。

俺の襟首を絞め体を揺さぶる。


「岬……食べてないで……助けてくれ……」

俺は岬に手を伸ばす。


「泉先輩も結局、その動画、保存したんすよね?

なら、死んでくださいっす」


なんで、岬までちょっと怒っているんだ?


その後は大変だった。

楓のお宝動画をなんとか死守して、舞ちゃんには見られずにすんだ。

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