41話 タイプ
仮面が剥がれても、俺は霧雨レイだ。
こんな俺を待っている人もいる。
炎上後――初めての配信。
舞ちゃんが気を利かせて、五人目での雑談配信を提案してくれた。
「みなさん、こんばんは!
あなたの死神——霧雨レイです!」
レイちゃん? レイくん?
配信助かる
海人くんが見たいんだけど!
配信やめろよ、気持ち悪い!
初見です! 炎上から来ました!
登録者の人数が、ようやく10万人を突破した。
まだまだ、駆け出しだが、充分な数だ。
――ん?
なんか、リスナー同士でレイ派と海人派が喧嘩し始めた。
「おい、揉めごとならよそでしてくれ。
レイでも海人でも、俺には変わりないから」
「今日は、ルミナスイリアの五人で雑談配信をしたいと思います! それでは、順番に自己紹介をしてくれ!」
「こんばんわん! みんなの愛犬!
犬柴アカリだよ〜よろしくね〜!」
アカリちゃんが、犬耳をひょこひょこ動かし、元気よく手を振る。
「みんなぁ~こんばんわぁ。
みんなの愛人――神宮寺ムラサキでぇす。
みんなの心の隙間ぁ、埋めてあげま〜す」
「ギリギリアウトな挨拶だな」
「ふふっ、ちなみに、レイちゃんの愛人もやってまぁす!」
「おい、これ以上、燃えたくはないからやめてくれ……てか、俺は独身だから愛人にはならんだろ……」
ツッコミどころが多すぎて、さばききれない。
「みんな〜おつおつー!
羽袖キララだよ〜!
よろしくV!」
なんか、キララも独特な挨拶になってるな。
「白雪……ユキノ……よろしく……です」
ユキノちゃんはいつも通りだな。
ユキノちゃん尊い!
声、可愛すぎ
守ってあげたくなる
なんか、ユキノちゃんの時だけ、コメントが盛り上がっている。
「なんだよ……ユキノちゃんが好きならそっちの配信行けよ」
レイちゃんが拗ねた
男のツンデレは需要はないぞ
いや、あるだろ!
そうよ、男だからいいんでしょ
なんか、以前よりもコメントの幅というか、層というか、ニッチなリスナーが増えたな。
「それじゃあ、アカリちゃんから今回の企画の説明をお願いします!」
アカリちゃんが企画を予定しているらしいから、話を振る。
「はーい! 今回の企画は、ズバリ、
好きな異性・同性のタイプは?――です!」
「どういうことっすか、アカリ先輩?」
「ふふふ、キララちゃん!
それに、リスナーのみんなも……メンバーの好きなタイプ――知りたいよね?」
知りたい!
ナイス企画
助かる〜
知ったところで俺らには手に届かないから(泣
ユキノちゃんのタイプだけ知りたい
「なんか、私のコメントでユキノちゃんのファンが沸いてるんですけど……」
「俺のコメでも同じだよ……」
「みんなぁ~、私のコメントで別の女性の名前を出したら、呪うわよぉ〜」
ムラサキから異様な圧が飛んでくる。
「タイプ……異性の?」
「ユキノちゃん、どっちでもいいよ」
アカリちゃんがフォローする。
「いやいや、恋愛対象で答えましょうよ!」
なんか、キララもノリノリだな……。
「じゃあ、さっそく、レイちゃんから答えてよ!」
「えっ、俺から!?」
「先輩の言うことが聞けないんですか?」
アカリちゃんから変な圧を感じる。
女性向けで行くか……?
いや、男側にも寄せるか……。
「そうだな……私は、強い男が好きかな……」
「世紀末の価値観っすね……」
キララから乾いた笑いがとぶ。
「女の子はぁ、四人のうち、誰が好きですかぁ?」
「ちょっと待て、ムラサキ……なんか、趣旨と違わないか?」
「ふふふ、レイちゃんは女の子だからぁ、問題ないでしょう?」
「もう、ムラサキちゃん。悪い癖が出ているよ!」
アカリちゃんが軽く注意する。
「レイちゃん……私のこと好きって……」
「えっ、ユキノちゃん……俺、そんなこと言いました?」
「……ユキノちゃん。詳しく聞かせてくれるかなあ?」
ヤバい……アカリちゃんの圧がヤバい……。
「つ、次はキララ……好きなタイプを教えてくれよ?」
話そらした
なんか、臭うぞ……
レイユキてぇてぇ
「うるさいぞ……みんな!」
俺は、小声でリスナーを抑える。
「ウチの好きなタイプか……ご飯を一緒に食べてくれる人がいいかな……ウチ、寂しがり屋だから……」
なんか、コメントが沸いている。
確かにキララにしては破壊力が高かったな。
「キララちゃん。
今度、ご飯食べに行きましょうね」
「ホントっすか! 嬉しいっす、ムラサキ先輩!」
「レイちゃんの奢りでぇ……」
「えっ……俺……?」
「こほん! それでは気を取り直して、私のタイプを発表します!」
なんか、アカリちゃんが露骨に話をそらした。
ま、俺としては、ありがたいんだけど。
「私は……そのリードしてくれる人が好きかな。甘やかしてくれて、それでいて、私の弱い部分も受け入れてくれる。
泣いてた時なんか、抱きしめてくれて……」
なんか、話がどんどん具体的になってきている。
「私、料理が苦手なんだけど、私の料理も、うれしそうに全部食べてくれて……」
「アカリちゃん、それぐらいでいいんじゃないか?」
俺は、慌てて、アカリちゃんの発言を止める。
絶対誰が想像して話してたよな
男の影を感じる……
もしかして、俺のことか?
俺のアカリちゃんがぁ〜
アカリちゃん、それ以上はやめてくれ。
「妄想おつ〜」
ムラサキがいい感じに合いの手をいれてくれた。
「も、妄想でもいいじゃん!」
アカリちゃんは、ようやく状況を理解してムラサキに話を合わせる。
「それじゃあ〜ムラサキの番ねぇ。
私はレイちゃんが好き!
レイちゃんが男の子だったらなぁ〜、残念だなぁ〜」
「ムラサキ……お前、わざと言っているだろ?」
「ええっ、なんのことか、ムラサキわかんなぁい」
まったくこいつは……。
リスナーは思いのほか反応していない。
ムラサキの悪ノリだって伝わったのかな。
「それじゃあ〜大トリはユキノちゃんだねぇ?」
「私……タイプ……う〜ん……泉!……」
終わった……。
ユキノちゃん、なんてことを……。
ダメだ、どう転んでも炎上する話題だった。
俺のユキノちゃんが……
泉、手を出したのか?
泉、許さん!
脳が壊れる!
てか、さっきから、俺以外のV推しなのに、俺の配信見ているやつ何なんだよ!
「ユキノちゃん……海人くん……迷惑だと思うよ?」
アカリちゃんがフォロー?
を入れる。
「そういえばぁ〜最近、二人で出かけているところ多いわよねぇ?」
「ムラサキ……悪ノリは本当にやめてくれ……お前ら、わざと俺を燃やそうとしてないか?」
「そうっすよ!
泉って人より、ユキノちゃんにはもっと相応しい人がいるっす」
キララ、ナイスフォローだが、それはそれで傷つくぞ。
いろんな意味でコメントが賑わいつつも、なんとか無事に配信を終えた。




