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元プロゲーマー、VRで銃が当たらないので投げナイフだけで無双します。  作者: 那須 儒一
三章 NF杯編

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40話 デート

謝罪配信をしたからといって、炎上がすぐ収まるわけではないし、収まらないのかもしれない。


ルミナスイリアの代表である浅場あさば邦仁くにひとより、声明が出された。


長文なんで、要約すると、

リスナーと炎上騒動に対する謝罪。

霧雨レイの女性VTuberとしての活動は、自分の指示であり、泉海人自身に非はないということ。

過度な誹謗中傷は厳粛な対応をとること。

主にこの三点だ。


さらに、電話で勝手に謝罪配信をしたことは軽く怒られたけど、

「降りかかる火の粉を払うのは大人の役目だから」

と笑っていた。


まったく……この人への恩は、生涯をかけても返しきれそうにない。


§


海人かいとくん……おまたせ!」


いろいろ考えていると、かえでの声が響く。

振り返ると彼女が立っていた。


フワフワの白いニットに緩く巻かれた厚手のマフラー。肩口から花柄の茶色のハンドバッグが下げられていた。


「海人くん、どうしたの?

目を丸くしちゃって……あっ、もしかして私に見惚れていたとか?」


楓は悪戯な笑みを浮かべる。


「ああ……初めて楓が女性に見えたよ……」


「なんか、それものすごく失礼じゃない?」

彼女はぷいっと顔を背ける。


「ははは、冗談だって。でも、可愛いよ」


「くっ……こいつは……童貞臭がしつつも、さらっとこういうことをいうから、油断できないわ」


「おい、誰が童貞だ!」


「えっ……海人くんって経験あるの?

もしかして、舞ちゃん? いや、茜ちゃん?

いや、岬ちゃんもありえる……」


なんか、真剣に考察を始めた。

もちろん、経験なんてない。


「ったく、経験なんてないよ。

初めては、好きな女に捧げると決めているんだ!」


「よくそんなイタいセリフをカッコつけて言えるわね……でも、初めて……私が貰ってあげてもいいよ?」


「えっ、ホントに!」


「ちょっ、思いのほか乗り気ね……それって、私のこと好きってこと?」


「いや……全然」


「ちょっと、さっきと言っていることが矛盾してない?

海人くんってそんな軽い人だったの?」 


「いつも、からかうから仕返しだよ。

ほら、バスに遅れるから行こうぜ!」


俺は、楓の手を引いた。


「なんか悲しいね。昔の海人くんは、私に翻弄されて可愛かったのに。

今じゃ、女の子の扱いもこなれちゃって……」


§


楓とバスに揺られ30分——県内の水族館に到着した。


「ふぅ、ようやく着いた!

さ、みそぎデートの開始ね!」


楓は俺の腕に手を絡ませる。


「なんだよ、禊デートって……聞いたことないワードだな」


水族館に行くと、楓は俺の手を引っ張り、次々に魚を眺めていた。


こんなに、はしゃぐ彼女を見たのは、他人をからかっている時を除けば、初めてかも知れない。


年頃の女の子って感じだ。

これも素の楓の一面なのかな……。


「海人くん……みてみて! クラゲだぁ!

ライトアップされて綺麗……」


「そうだな」


「海人くん……私と一緒にいるの、楽しくない?」


「えっ、そんなことないよ。楽しいよ」


「ほんとかなぁ……」


そこから、水族館の中をニ周した。


回るにつれて楓はどんどん元気がなくなってきた。


「海人くん……なんか、ごめんね……もう、帰ろっか?」


「えっ、もう帰るの?

お昼ご飯とか食べなくていい?」


「うん……ごめんね……ちょっとお手洗いに行ってくる」


楓、どうしたんだろ……俺、何かやらかしたのかな。


楓は一番落ち着いているようにみえて、一番内面に波がある……今回もそれかな。


——しばらくしても、楓は戻ってこなかった。


探しに行くと、海際の広場の柵越しから海を眺めていた。


「海人くん……探しに来てくれたんだ……」


「そんなの、当たり前だろ」


「海人くん……私が戻らなかったら、おいて帰るかもって……私って面倒くさい女だよね……」


楓の声が震えていた。


「ああ、確かに面倒くさい。かき回すくせに、傷つきやすくて、本音かどうかも分からないし」


楓の肩がビクッと震えた。


「……そうだよね、私なんて——」


「でも、そんなところが可愛いんだろ?

そんな楓に俺は惹かれたんだから」


楓がこちらを振り向いた。

彼女の涙が、海にとける。


「海人くんっ!」

楓が飛びついてきた。


俺の胸で泣きじゃくる彼女を、抱きしめることはできなかった。


今わかった。俺は残酷なことをしている。

一人しか選べない。舞ちゃんも楓も……でも、二人の真意は俺にはわからない。


本当に愛されているのか分からない。

俺が好意を向けた瞬間に、拒絶されるような気がした。


……どうすればいいんだ。


「楓……俺……」


「それ以上は何も言わないで……」

楓の人差し指が俺の唇に触れる。


「今は、期待させたままにしておいて……たとえ、幻想だとしても……甘い夢に浸りたいから……」


「学の無い俺に、あんまり難しい言い回しはしないでくれ……」


「ふふふ、それなら……海人くん……好きだよ……」


そう言って、彼女の唇が触れた。

涙に濡れ——少しだけ湿っていた。

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