27話 罪と罰
んーん。
もう昼過ぎか……。
最近、生活リズムが終わってる。
「それで……なんで、お前いんの?」
「えぇ~、寝起きで美少女が部屋にいるなんて、嬉しくないですかぁ?」
「美少女ならな……」
楓がいてもギリ嬉しくない……。
「あらぁ〜、そんなこと言うならぁ〜、
もう、ご飯作ってあげませんよぉ」
「うっ……それは、困る……」
「ならぁ、“楓、愛してる”って叫んでくださぁい」
「それは……さすがに……」
「ふぅん。海人くんって、楓の料理目当てだったんだぁ。そんな人だとは思わなかったなぁ……
ひどいなぁ、家政婦扱いなんてぇ」
俺から頼んだことなんてないだろ……、
それでもここまで楓に餌付けされた状態で、
彼女の料理が食べられなくなるのは非常に辛い。
「楓……あいしてる」
「棒読みですねぇ、感情がこもってませんねぇ」
「楓、愛してる!」
「もっとぉ、大きな声で!」
「楓〜! 愛してる!」
俺は叫んだ、腹の底から。
ガチャ――
玄関の鍵が当たり前のように開けられる。
楓の奴、俺の部屋の合鍵を全員に配っているだろ。
そこに舞ちゃんが立っていた。
「おはよう……舞ちゃん……」
「なんですか、朝っぱらから……私へのあてつけですか?」
舞ちゃんの声が……静かで重い。
「舞ちゃん。これは誤解なんだ。
ちょっとした悪ふざけなんだ……」
「そうなんですか。海人くんは悪ふざけで、楓ちゃんの服をひん剥いて、泣かせたんですか?」
「えっ!?」
話が飲み込めず、楓の方を向くと――
服を乱し、泣き腫らした目で、自分の肩を抱いていた。
……こいつ、はめやがったな。
「舞ちゃん……これは誤解だ……」
「なにが誤解なんですか?
私の服はひん剥いたことないのに……
どうして楓ちゃんだけ……」
あれ……なんか、方向性がズレてないか?
「ひん剥いてほしいなら喜んで、ひん剥くけど……」
「私をそんな、楓ちゃんの代用品みたいに扱うんですね?」
「……うっ」
完全に言葉選びを間違えた。
「助けてくれー! 岬ー!」
この状況を打破してくれるのは岬しかいない!
「また別の女性ですか……海人くんは、女の子に助けられて恥ずかしくないんですか?」
舞ちゃんがジリジリこちらに詰め寄ってくる。
楓は声を殺して、悶えている。
てか、笑い転げている。
この状況を楽しんでいるのはお前ぐらいだって。
「呼んだっすか? 先輩!」
岬がタイミングよく入ってきた。
「これ……どういう状況っすか?」
「てか、なんでお前……ブルマ姿なんだ?」
「えっ、楓先輩から、たぶん呼ばれるからこれで来いって渡されたっす」
まさか、ここまでが楓の計算!
「楓ちゃん……どういうことですか?」
舞ちゃんもようやく、楓の悪ふざけだと理解したのか楓を睨む。
「えぇ~ごめんねぇ〜。
舞ちゃんの可愛い姿……動画に収めたかったのぉ。
ネットで流したから、バズるかなってぇ」
楓がとんでもないことを言い出す。
「岬ちゃん。楓ちゃんを押さえて……」
「了解っす!」
岬が素早い動きで、楓を羽交い締めにする。
舞ちゃんが腕まくりをする。
「舞ちゃん、ほんの冗談じゃない!
ねっ、謝るから許して!」
楓が素に戻っている。
本当に危険を察知したのかもしれない。
「海人くん。少し、席を外しててくれるかな?
男の人には見せれないかも……」
舞ちゃんの顔が怖い……少し見たい気もするが、やめておこう。
「海人くん……行かないで……」
楓が縋るように俺を見ている。
「楓……すまん……」
こうなった舞ちゃんは、誰にも止められない。
アパートを出て、階段を降りていると、
楓の断末魔が、響き渡る。
俺は耳を塞ぐようにして、その場を後にした。
§
アパートを出ると、どこかで見たようなリムジンが止まっていた。
「あれ……茜?」
五十嵐がドアを開けると、後部座席から茜がぴょんと飛び出した。
「泉……来ちゃった!」
「申し訳ございません。
お嬢様が、どうしてもと聞かないものでして……」
「一緒に遊ぶか?」
「えっ……いいの?」
「おう、好きなところに連れてってやるよ!」
「ご無理を言って申し訳ございません」
五十嵐は深々と頭を下げる。
この二人の事情はよく知らないけど、
どうせ、俺もしばらくは帰れないし……。
俺は茜の手を引いて、紅葉の下を歩き出す。




