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元プロゲーマー、VRで銃が当たらないので投げナイフだけで無双します。  作者: 那須 儒一
二章 フルパ編

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25話 ナンパ

真っ暗な部屋で、自分の手の輪郭を確認する。


——かすかに震えていた。


あんなに、ヒリついた試合をしたのは久しぶりだ。


野良の子の力もあったとはいえ、

このチームでマスター帯に勝利できたことが、

未だに信じられなかった。


ふぅ、今夜は寝れそうにないな。


§


上着を羽織って、外に出た。


夜露に濡れる枯れ葉を踏みしめながら、

元バ先のコンビニに向かった。


コンビニに入ると、

桃先輩がレジ中で欠伸をしていた。


「桃せんぱーい! 真面目に働けー!」


「ふぁ、泉くん……い、いらっしゃい。

……夜はすっぴんだからあんま見ないで」


桃先輩は、軽く顔を隠した。


「桃先輩は化粧なんかしなくても、綺麗でしょ」


「あんたは、またサラッとそんなことを……」


さてさて、桃先輩よりも、

お目当てのプリンはどこだ?


バイトしてた時は、毎日のように買って帰っていた——勝利のミルクプリン。


おっ、ラッキー!

一つだけ売れ残ってた。


プリンに手を伸ばす——俺の手の甲に重なるように、小さな手が乗せられた。


「あっ、すみません」

俺は思わず手を引っ込めた。


隣を見ると、見慣れない女の子が、

無言で立っていた。


サラリと長い黒髪に、白いニットを着た彼女がこちらを一瞥する。


「ミルクプリン……」


女の子は、それだけ言い残し、

そのままプリンを取ってレジまで向かった。


……変な子だな。


って、俺のプリンが……。


はぁ、仕方ない。

諦めるか……。


俺は代わりにシュークリームを手に取り、

女の子が出たあと、レジに並ぶ。


「あんま、見ない子だね?」


「なになに……また別の女の子が気になるの?」


「ちげぇよ!」


「焦っているとこが余計に怪しい」

桃先輩はなぜか頬を膨らませている。


「そういえば、泉くんがこんな時間に来るの、珍しいね」


「少し、寝れなくてな……」


「どしたん?

悩んでいるなら、お姉さんが話聞こか?」


「なんだその、構文みたいな誘い文句は……」


会計を終え、

シュウクリームを指先で回しながら自動ドアへ向かう。


「い、泉くんっ……わ、私、もうすぐバイト終わるんだけど……ドライブ行かない?」


「ドライブか……仕方ない。

誘いに乗ってやるよ」


「やった!」

桃先輩が軽くガッツポーズをしていた。


「ドライブごときで、そんな喜ばれても……外で待ってるね」


点滅する駐車場の街灯の下で、シュークリームを頬張る。


「……うまっ!」


口の中でカスタードと生クリームが絡み合う。


「はむっ……はむっ……」


咀嚼音に隣を見ると、さっきの女の子が外でプリンをかき込んでいた。


——午前二時だぜ?

コンビニの駐車場で女の子が一人でプリンを食べているってのは、少し異質だ。


ふと、彼女と目が合う——。


彼女はスプーンを咥えたまま、こちらに歩いてくる。


「それ……」

俺が食べているシュークリームを指差す。


「なんだ、欲しいのか?」


コクコクっと、彼女は頷く。


「プリンまで取られたあげく、シュークリームまでやるってのもなぁ」


彼女はミルクプリンをスプーンですくうと、

——軽く背伸びをして、俺の口元まで運んだ。


「うっ……はむ」

誘惑に負けて、プリンをいただく。


すると、彼女は口を大きく空けた。


これは……そういうことだよな?


彼女の口元にシュークリームを運ぶ。

——大きな一口で、シュークリームを頬張った。


「ん……おいしい」


「口についてんぞ」

彼女の口元のクリームを手で拭う。


「泉くん、おまたせ……ってなにしてんの……?」


深夜のコンビニ前で、見ず知らずの女の子と食べさせ合いっこ……確かに異様な状況だ。


「まあ、成り行きで……」


「どんな成り行きよ!」


「桃先輩、ドライブ行きましょ!

じゃ、気をつけて帰れよ」


後ろ手に手を振り、女の子に別れを告げる。


ぐいっ——とジャケットの裾が引っ張られる。


振り向くと、彼女が俺の服を掴んでいた。


「……ドライブ」


「なに、一緒に行きたいの?」


彼女はコクコクと頷く。


「……と、申しておりますが?」


確認するように、桃先輩の方へ向きなおる。


「なんで、私が泉くんのナンパの手伝いをしなきゃなんないのよ……」


「別に、ナンパしてないって!」


「どうだか……」

桃先輩は少し頬を膨らませる。


「俺は、桃先輩一筋だよ」


「えっ……!?」

桃先輩の声が跳ねる。


一筋なんだけど、それでも後ろの女の子が、ジャケットの裾を離してくれない。


「……ドライブ!」


背後の声が、すごい主張してくる。


「はぁ……仕方ない……あなたも連れてってあげるわ」


「君、名前は?」


「……あかね


旅は道連れ——見ず知らずの女の子とともに夜のドライブへ誘われる。

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