表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元プロゲーマー、VRで銃が当たらないので投げナイフだけで無双します。  作者: 那須 儒一
二章 フルパ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/79

21話 素

ふぅ〜、羽袖はねそでキララとの配信を終え、ヘッドセットを外して振り向く。


「お邪魔してまぁ~す」


伊藤楓が片手をヒラヒラさせながら、机に座っていた。


「……もしかして、今の配信聞いていた?」


「聞いてましたぁ。しかも、レイちゃんの女声じゃなくて、海人くんの凛々しい声で……ぶふっ」


楓が吹き出した。


最悪だ、あのシチュエーションボイスを生で聞かれてたなんて……!


「海人くん、お邪魔します」

続け様に舞ちゃんも部屋に入ってきた。


「えぇ~、舞ちゃんも来たんだぁ〜

せっかく海人くんと二人っきりになれたと思ったのにぃ」


楓はさして残念そうには見えない。

この子の本音が未だに読めないな。


「楓ちゃんと二人っきりなんて、絶対、ダメですから!」

舞ちゃんが声を荒げる。


「俺は、二人が来てくれて嬉しいよ。

……っと、楓ちゃん。さっきのボイス……聞いてた?」


「ボ、ボイスですか……。

そんなの出したんですか?」


よかった、聞かれてなかったみたいだ。


「えぇ~、隣なら聞こえてたと思うんだけどなぁ」


「と、とにかく。二人とも、どうしたんだ?」


「楓わぁ、海人くんにご飯を作ろうと思ってぇ」


「だ、駄目です。今日は、私が作るんですから!」

舞ちゃんは、さっそくキッチンに向かい、持ち込んだ食材で料理を始める。


「ねぇねぇ、海人く〜ん。舞ちゃんってば、最近、積極的だよねぇ、健気だねぇ」


「ちょっと、楓ちゃん。聞こえてるよ!

別に、そんなんじゃありませんから……

ただ、海人くんには、私の料理……食べてほしいだけです」


「あらあら」


「楓、それぐらいにしとけ、

舞ちゃんはスイッチ入ると、面倒だぞ……」


「海人くん、それどういう意味ですか?

面倒くさい女で悪かったですね!」


包丁で食材を刻む音が、強くなる。


「ははは……」

渇いた笑いで誤魔化す。


ふと、楓ちゃんに目を向けると、何か企んでいる笑みを浮かべて、テーブルに置いていた舞ちゃんのスマホを操作し始める。


「ちょっと、楓、やめなって」

楓を制すが、淀みない手さばきで何かを再生する。


『そうだな、これで勘弁してくれるか?

――チュッ』


「っておい、楓、これ……!?」

これは、雑音が入っているが、俺のシチュエーションボイスだ。

しかも……男声……。


って待てよ……なんで、舞ちゃんのスマホに録音されているんだ?


「きぁぁぁぁ!」


舞ちゃんが慌てて、楓が持っていたスマホを取り上げる。

――片手には包丁が握られたままだ。



「舞ちゃん、危ないってば!」

一瞬、楓が素に戻る。


「舞ちゃん、もしかして、壁越しで録音してたの?」


俺の質問に、舞ちゃんの頬が紅潮する。


「やめてー! それ以上言わないでー!」


舞ちゃんが包丁をブンブン振り回す。


「ちょっと、海人くん、刺激しちゃまずいって、

ま、舞ちゃん……落ち着いて……」


「楓ちゃん、許さない……」


舞ちゃんの目が本気だ――。


「ま、舞ちゃん……ご、ごめんなさい。

わ、私が悪かったから……」


楓の一人称が“私”に戻っている。


「舞……俺を見ろ!」

楓ちゃんを庇うように前に立つ。


「か、海人くん……」


最近、舞ちゃんの情緒が不安定だ。

なんとか、落ち着かせないと。


「舞がケガをしたらどうするんだ」


俺は彼女の手からゆっくりと包丁を取り上げる。


彼女をそっと抱きしめ、背中をさする。


「海人くん……“舞”って呼んでくれた」


「呼び捨てがいいなら、いくらでも呼んでやるよ」


「うん……楓ちゃんだけ、ずるいって思ってたから……」


「ふ、可愛いやつだな……」


「いでっ!?」

な、なんだ……お尻に激痛が走る。


ふ、振り向くと、楓が千年殺しのポーズをとっている。

ようやく理解した。か、浣腸されたのか……。


「か、楓……どうして……」


「なんか、イラッとしたから。目の前で見せつやがって」

楓の口調が完全に別人だ。


「俺は……君を、庇おうと……」


激痛のあまり、床に倒れる。


「か、海人くーん!」

舞の叫び声がやけに遠くに感じた。


§


早朝、二人が帰った後、後片付けをしていた。

あれからオールとか、二人とも、元気だよな。


あれだけのことがあったのに、

鏡に写る俺は自然と笑みがこぼれていた。


――ピーンポーン。

「レイせんぱーい! いるー?

遊びに来たんだけど〜!」


この軽い声は……。


波乱の予感を抱えながら、

俺は、ドアノブに手をかけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ