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元プロゲーマー、VRで銃が当たらないので投げナイフだけで無双します。  作者: 那須 儒一
一章 再起編

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10話 後輩

気づけば、加藤さんの後を追いかけていた。


「加藤さん……待ってください!」


加藤さんは俺の声を振り切るように、駆け出した。


そして——転んだ——。


「あっ……」

盛大にゴミを撒き散らしながら……。


短パンから伸びる、細い脚から血が滲んでいた。


「加藤さん、大丈夫か!」

慌てて、彼女に手を伸ばした。


加藤さんは、声を殺して泣いていた。


急いで部屋に戻り、消毒液と絆創膏を持って降りた。


何も言えないまま、彼女の膝の傷を手当てする。


消毒液をつけると、彼女は泣きながらも、体をわずかにビクつかせた。


手当てを終えると、散らばったゴミを集める。


「……立てる?」

ゴミ捨て場に持っていき、座り込んでいる加藤さんに手を差し出す。


「放っておいて……」

彼女は俺の手を払いのけた。


「ほら、帰るぞ」

強引に加藤さんの手を引いて、立たせた。


これが、正解かなんて分からない。

握った彼女の手は、少し冷たかった。


「泉さん……私……」


彼女が何か言いかけた時、背後から甘い花の香りが漂う。


「ふーん、この子が犬柴アカリちゃんか……」


慌てて振り向くと、伊藤さんがサイドテールを揺らし立っていた。


「伊藤さん……どうしてそれを……」


彼女は妖艶な笑みを残し、一階の自室へと帰っていった。


加藤さんも目を丸くしている。


「あの子が、霧雨レイちゃんですか?」


「えっ……!?」


加藤さんの言葉に違和感を覚える。


あれっ……俺が霧雨レイって分かったから怒ってたんじゃないのか?


「いや、あの子は今日越してきた、下の階の人だよ。俺も会うのは初めてだ」


「えっ……でも、泉さんってレイちゃんの彼氏じゃないんですか?

だから、肉じゃがの件も知っていたんじゃ……」


なるほど、ようやく理解した。

そうだよな。

俺が、霧雨レイでバ美肉なんて発想、普通は出てこないよな。


「いや、霧雨レイは……」

そこまで言いかけて言葉を飲み込んだ。


「でも、泉さんは、私が犬柴アカリだって気づいてますよね?

この前、とっさにアカリちゃんって呼ばれたから……あの時は気づかなかったけど、よくよく考えたら不自然ですよね」


やっぱり、あの時にバレていたのか。


霧雨レイは俺だって言わないと……。

今が、誤解を解くチャンスだ。


でも、女性VTuberの後輩だと思っていた、

霧雨レイが、実はバ美肉で、隣人の泉海人だと知ったら……加藤さんは俺のことを嫌いにならないか?


「その……霧雨レイは友達なんだよ……」


また一つ、嘘をついてしまった。

これ以上、加藤さんに嫌われたくなかった。


「ご、ごめんなさい!

私ってばいろいろ勘違いしていました!」

加藤さんは顔を真っ赤にして、両手を振る。


「……それなら、あの子は誰なんだろう?」


加藤さんの言う通りだ。

伊藤楓……彼女は何者なんだ?


§


モヤモヤが残る中、ひとまず自室に戻った。

加藤さんとのわだかまりが、なくなっただけでもよしとしよう。


翌日、浅場さんからのメールで、俺は彼女の正体をあっさり知ることとなる。


§


俺はPCを起動し、指定の時刻に配信サイトを覗いた。


「悪霊のみなさん、こんばんわ〜。

ルミナスイリア所属の新人VTuber、

神宮寺ムラサキだよ〜」


紫色の長い髪を揺らし、巫女姿のアバターが画面越しに手を振っている。


まんま、伊藤楓だ。

犬柴アカリと違って、ギャップもクソもない。


あの、おっとりとした口調、ミステリアスな雰囲気——全てが伊藤楓と一致している。


というか、ヘッドセットを外すと、下階からかすかに彼女の声が漏れ聞こえている。


なるほど、これで、彼女が俺たちを知っていたことに合点がいった。


てか、浅場さん……俺たちの個人情報の取り扱い、どうなっているんだよ。

……俺たち二人の情報を知っているのは、あの人しかいない。



神宮寺ムラサキはリスナーのことを悪霊と呼んでいる。

なかなかに個性的だ。そして、初回配信は風水の話題で終了した。


§


ピーンポーン……深夜に玄関のインターホンが鳴り響く。


……どっちだ?

俺は恐る恐る扉を開けた。

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