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元プロゲーマー、VRで銃が当たらないので投げナイフだけで無双します。  作者: 那須 儒一
一章 再起編

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11話 親睦会

……どういう状況だ? 泉海人!?


自問自答しながら、自室のお風呂場から二人の女性のキャッキャウフフする声が響いている。


どういうことだ!

どうして、犬柴アカリと神宮寺ムラサキ、

いや、加藤舞と伊藤楓が、俺ん家の風呂場を使っている!


しばらくして、湯気と水滴をまといながら、二人が脱衣所からパジャマ姿で出てきた。


「ぷっ、どうしたんですかぁ〜泉さん。

なんで、正座で待っているんですか〜」

伊藤さんのおっとりとした声が響く。


「すみません、私までお風呂をお借りして……」

加藤さんは申し訳なさそうに頭を下げる。


ことの経緯はこうだ。

どうやら、伊藤さんが電気会社との契約が遅れていて、お風呂場のお湯が出ないんだとか。


それで、加藤さん、助けを求めに行ったら加藤さんの部屋も、給湯器が故障していてしばらく銭湯通いだったとのこと。


近所の銭湯は閉店時間を迎えたとのことで、

なぜか伊藤さんに押し切られる形で、俺の部屋で湯船に浸かっていた。


「こんなむさ苦しい部屋で申し訳ないけど……」


「泉さんありがとう。

私たちの残り湯でよければ浸かりますかぁ?」


伊藤さんが、俺の耳元で艶めかし声で囁く。


VTuber二人の残り湯——

なんて甘美な響きなんだ。


平静を装っていると、

加藤さんが無言でお風呂場へ向かった。


そして、奥からお湯の流れる音が聞こえてくる。


「……そんな」

——栓が抜かれた。


落胆する俺の耳元で、再び小悪魔が囁く。


「泉さん。残念がらなくてもいいですよぉ

掃除しないで、そのままお湯を溜めれば、私たちの菌を繁殖させれますよ」


「なんだその、不衛生なマコモ湯は……」


俺たちの声が聞こえたのか、浴室からブラシを擦る音が響く。


「あらあら〜、泉さん残念でしたね」


「いや、語弊のある言い方はやめてくれ!」


伊藤さんはおもむろに立ち上がり、

俺の配信用とは別の私用のPCを立ち上げる。


「ちょっと、伊藤さん、何をしてるんだ?」


「何って、泉さんの性癖リサーチですよ〜」


彼女は手際よく、俺のPCを操作する。


この子、むちゃくちゃだ。


「伊藤さん、頼む、やめてくれ!」


慌てて彼女をPCから引き剥がす。


「泉さん、やめて〜無理やりなんて〜」


伊藤さんは艶めかしい声を出し、床に倒れる。

彼女は手際よく胸元のボタンを外し、みずから衣服をはだけさせる。


「ちょっと、二人とも何をして……」

お風呂掃除を終えた加藤さんが、慌てて駆けつける。


「えっ……泉さん……」

加藤さんは両手を口に当てて、後ずさった。


「いや、加藤さん。断じて俺は何もしていない。

伊藤さんの自作自演だ」


「そんなぁ~、楓が嘘をつくように見えますかぁ〜」


「見えるだろ」


「泉さんってば、ひど〜い」

伊藤さんは、わざとらしく泣き真似を始めた。


「泉さん……見損ないました」

純粋な加藤さんが、腕を組み仁王立ちしている。


「いや、加藤さん。よく見てよ!

この子、ウソ泣きだって」


「さ〜て、せっかくですから親睦会でもしますかぁ」

伊藤さんは泣き真似をやめ、

持ってきた荷物から酎ハイを出し始める。


「えっ、ウソ泣きだったの?

てか、今から飲むんですか?」


俺も加藤さんも、さっきから伊藤さんのペースに振り回されている。


§


「それでは、かんぱぁーい」

伊藤さんによる、緩い音頭が取られる。


「酒なんて久々だな」

炭酸が、渇いた喉を小気味よく流れる。


加藤さんは、俺の部屋をまじまじと見渡していた。


「泉さんも配信機材、一通りそろっているんですね。今もストリーマーとして活動しているんですか?」


「え〜舞ちゃん、それはボケですかぁ?」


まずい、伊藤さんは俺が霧雨レイだと隠していることを知らない。


「一応、機材だけ残しているだ!」


俺は伊藤さんの声を遮るように答えた。


「そうなんですね。私、泉さんの配信、ずっと見てたんですよ!」


加藤さんの声が跳ねる。

なんだかむず痒いな。


「あ〜、なるほどねぇ〜」


伊藤さんが、状況を把握したのかしたり顔でニヤニヤしている。


「泉さ〜ん。早めに話したほうがいいですよぉ」


「伊藤さん。お願いだから何も言わないでくれ」


「ちょっと、二人して何ですか?

隠しごとはやめてください!」


加藤さんが俺たちを睨む。


言いたいけど……言えない。

バ美肉なんて言えるわけがない。


「楓との関係……まだ、秘密にしておくんですかぁ〜」

伊藤さんが、俺の太ももにそっと手を這わせる。


「ぶっ!?」

思わず酒を噴き出す。


「泉さんと楓ちゃんって、

既にそういう関係なんですか……」


加藤さんが、露骨に肩を落とす。


「泉さんって、レイちゃんとも仲良さそうだし……」


「泉さん、せっかくだからレイちゃんもここに呼びませんかぁ〜。楓、会ってみたいですぅ」

伊藤さんは小悪魔的な笑みを浮かべ、顎に指を添える。


こいつ、わざとだろ。

レイは俺だ。もう、会ってんだよ。


「ホントれすよ!

レイちゃんを呼んれください!」


なんだか、加藤さんの呂律が回っていない。

あれ……もう酔ったの?


「泉さんとの関係……問いただしてやるんだから!」

加藤さんは、缶酎ハイをドンッと机の上に置く。


「そうよぉ、舞ちゃん、泉さんにも言ってやりなさい。

私とレイちゃんどっちが、好きなんですかぁって」


「それが、手っ取り早いれすね。

泉さん……私とレイちゃん……どっちが……」


加藤さんはそこまで言ったところで、我に返る。


「わ、私……何を……ご、ごめんなさい」

彼女は顔を真っ赤にして、部屋を飛び出していった。


……自分の部屋に帰ったのか?


「泉さぁん、これで、邪魔者はいなくなりましたねぇ〜」

伊藤さんが、俺の胸に手を伸ばす。


まさか、この子……始めからこれが狙いか?


「って、やめてー!」

加藤さんが、俺の部屋に飛び込んできた。


そうか、壁が薄いから全部聞こえていたのか。


——夜明けまで大騒ぎだった。

加藤舞に伊藤楓……この賑やかな隣人にこれからも振り回されそうだ。

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