18. ぼくはぼくだ
「巧よ。体を乗っ取られたのはおまえの心の弱さ」
少し穏やかになった声がぼくのほうを向いた。
「おまえが三吉を受け入れた。決めたのはおまえだ」
そうだ、ぼくだ。ぼくが力を欲しいと言ったから……。
もう元に戻れないんですか。そう言ったつもりだったけど、言葉は出ない。まだ三吉の力に抑え込まれている。
でも、神様からは「元に戻ってどうするのだ」と、心に問いかけがあった。ずんと重い問いかけ。元に戻りたい。それしか考えていなかった。でも。戻ってそれで一件落着じゃない。
戻れぬものか。勝ち誇った三吉の声が聞こえる。わしはお前になったのじゃ。お前はわしになったのじゃ。
ちがう! ぼくはおまえじゃない。ぼくは、まだ考えることができる。まだ消えちゃいないってことだ!
出てけ、出てけ! ぼくは呪文のように何度も繰り返した。
出てけ、出てけ、出てけ! 一点に集中させて力をためた。ためて、ためて、思いっきり三吉を突き飛ばした。
「出て行けー!」
押さえつけられていたぼくの声が、堰を切って飛び出した。もう一度。もう一度。
叫ぶたびに、三吉がぼくの体から出かかってきたけど、ぼくの体に必死にしがみついている。
「出て行けー!」
ぼくは自分から壁に体を思い切りぶつけた。力はもう残っていなかった。
グエッ。三吉がとうとう体から抜け出した。そして、廊下の奥の闇の中へ、ものすごい速さで吸い込まれていった。
ぐあああああああ…。助けを求めるようにぼくに伸ばした手だけが一瞬見えたが、あっという間に闇の中に消えていった。同時に、三吉の悲鳴も聞こえなくなった。
ぼくは――ぼくは気絶した。意識が遠のくなか、神様の声が聞こえた。そこに怖さはなかった。「やれやれ、困ったもんじゃ。本気の恐ろしさがやっとわかったか」




