67、 島火山の秘密と化身討伐
遅れました。スミマセン……。
赤色の短髪だが前髪で右目が隠れていて左の青色の目だけが見え、日焼けした肌はもう真っ黒で、これ以上日焼けしたら病気になるのではないかと思うほどだ。
歳は十四歳で、身長はシノンより少し小さいくらいであった。
「……………で、さ。色々と疑問に思う点があるんだが」
「え?」
「あの人って誰だ?」
「ああ……いや、その………すみません。いくら先輩でも教えられないですよ」
「あっそ」
するとシノンは興味をなくしたとばかりに次の質問を投げかける。
「お前はなんでここにいる?」
「えー、っと、俺は、ここを守る役目を持っているので、転移でギルドから来ました」
「へえ。まあいいや。あと、最後にもう一つ質問。ここに訪れた者が言うだいたいの理由って?」
「ああ、それっすか」
それには、ローラはあっさりと答えた。
「だいたいの人が、私利私欲のために来てました。自分の魔力を高めようとする輩とか、とにかく力を得ようとする奴らが多かったんです。けど、シノン先輩はそんな必要ないから違うかなと思って。ところで先輩は何をしに?」
「調査の一端だ。ここについて知っていることがあるなら教えてほしい」
「あー………まあ、先輩だから教えますけど……絶対に誰にも言わないでください。これが調査の一端でも、です」
「なんで?」
「ダメなんですよ。ここの情報が漏れたら、今度こそここの魔力がなくなってしまいます。最悪、世界が滅びますよ」
「…………よくわからんが、わかった。約束する」
ローラは何を聞いてもほとんどの事を教えてくれそうにないので、シノンは渋々諦めることにする。
ローラから聞いてわかったことは、まずはここが炎の魔力源の原点と呼ばれる場所で間違いないようだ。
そして、あの炎を模した石像は炎の魔力を帯びており、主にあそこから炎属性の魔力を放出して勇希の持っているペンダントへ送られているらしい。
ここの守護者であるローラが、ここに誰かが近づいてくれば転移魔法でここに来れるらしく、今回は俺たちが来たことで依頼を放り出して来たらしい。
「でもなんで教えてくれるんだよ?」
「いや、全王さまの指名依頼での調査なんでしょ?俺だってさすがに嘘をついてまで全王さまに対してここの秘密を黙っておくようなことをするのも気が引けますしね。それに、シノン先輩なら信頼できますし」
「何を根拠に?」
「失礼なことを言うかもしれないですけど、先輩がレイヴァだからですかね」
「…………そうか」
シノンは一瞬顔を歪めたが、すぐにいつもの無表情に戻った。ローラのいうとおり、レイヴァであることもあり、シノンは他人との約束は守る主義である。
だから、ここの秘密を漏らすことは一切するつもりはない。あくまで調査の参考にするだけである。
「さて、じゃあここではもう調べるものはないか。ローラ、他に知ってることは?」
「ここは特に細かい役目があるわけではありませんよ。大体これくらいです」
「…………………そうか。ありがとう。俺たちがここに来たことも誰にも言うなよ」
「わかりました。それと、あともう一つだけ」
シノンはそのまま、目で続きを促した。
「その双剣、貰い物とか言ってましたけど、誰にもらったんですか?」
「父親だけど」
「………じゃあ、その人は、その剣をどこで手に入れたとか聞いてませんか?」
「災害級以上だかなんだかの魔物を倒したらドロップしたらしい」
「そ、そう、ですか………ありがとうございます。では、お気をつけて」
ローラはそのまま、建造物の裏へと行ってしまった。
シノンとカルナもうなずきあい、そのまま下山していった。
やけに暗い森の中を、三十人近い冒険者たちが慎重に歩いていた。
その中には、S級のライザやA級のローラ、そしてルクたちの姿もあった。
「せ、先輩、本当なんですか?前の討伐隊は、全員首を切られてたって………」
「なんだ、ルク。ユウがいねえから怖いのか?」
「ち、違いますよ。ただ、勝てなかったらどうしようとか、緊張してて………」
「なるほどね、そりゃあわかるよ」
ライザに話しかけていたルクに言ったのは、ギルドサニーズ三位、『疾風迅雷』のベールだった。
彼らはスピード重視の冒険者揃いで、ほとんどが前衛職だった。パーティランクはAで、スピード重視の武器に詠唱短縮によって生み出す近接戦闘用の魔法を行使することで、その圧倒的な強さでここまで上ってきていた。
「ははっ、相手も結構な強敵だからな、油断は禁物だぞ」
とは言うものの、緊張感がほとんど感じられないのはライザであった。しかしそれは見た目だけであって、決して彼も緊張していないというわけではない。
上位冒険者パーティという付き合いがあるだけ、彼らは全員仲が良かった。指名依頼が出されてからは、互いの手の内を明かし、連携の練習までしていたのだ。
相手の攻撃手段がわからない以上臨機応変に動かなければならないが、様々なパターンで練習を重ねた彼らならば、連携で苦戦することはないだろう。
「そんなのみんなわかってるさ。ずっと対人戦しかしていない阿呆どもとは違うんだから」
「けど、ユウたちがいないのはちょっと不安かなあ」
「まあ、あいつ色々ことに気づくからな、いてくれた方が何倍もましだったかも」
S級の団員たちが口々に言う。しかしユウという人に直接あったことがないA級やB級の団員たちは、指名すらされなかったパーティの実力をを疑って首を傾げるばかりであった。
それに気づき、S級の団員たちがまた自由に語り始めた。
「おいおい、あいつの実力疑ったら負けだぜ」
「なんせ世界中で『白の魔術師』って呼ばれてるからね」
「あと、『白の魔剣士』ってのがパーティメンバーだよな」
「いやいや、二人だけのパーティだけど、俺たちでも勝てないって」
「下手しても挑むなよ」
最後にS級パーティの中でもっとも冷静で真面目なティオが締め括るが、彼らはまだ納得出来ないようであった。
「あ、そうだ。団長がさ、今は全王さまの指名依頼があって他の依頼が受けられないとか言ってなかった?」
しかしその言葉で、彼らの目は見開かれた。
全王さまからの指名依頼ということは、相当な実力の持ち主であることを証明するのに充分であったからだ。
「最後に確認しておこうか。団長がくれた情報によると、化身は影だから、光に弱いらしい。斥候調査でそんな結果が出ている」
「光属性の魔法が使えないやつー?」
すると、チームの中で四人が手を挙げた。勇希、勇奈、モコ、ラキである。
「あー、光じゃなくても、炎や電気、命なんかでも良いらしいぞ」
すると、全員が手を下げる。
炎なら基本属性なので使える者は多いので勇希とモコが使える。炎は使えなくても電気ならば使える勇奈も手を下げる。命はなかなかコントロールが難しいが、炎と命の両方を使えるラキも手を下げた。
「なあ、それ、どこから情報仕入れてくるんだよ?」
「さあ。団長が言ってたんだけど、確かだと思うぜ?団長は常に正しい情報を提供してくれるし」
「まあ、たしかに。その情報源はどこだよ?」
「俺も気になって聞いたけど、団長は教えてくれなかったよ」
ライザの言葉に首を捻る面々。しかし信頼のおける場所からだと聞いていたライザはそれをみんなに話すと、渋々と言った感じで納得はしていた。
ちなみに情報源はどこだったのかライザも含めS級のメンバーは全員わかっているのだが、本人が望まないだろうということで暗黙の了解が成立し、黙っていた。
「みんな、気をつけろ。そろそろ見えてくると思うよ」
『了解』
対人戦しか経験していない警備隊とは違って、冒険者のほとんどは魔物戦が圧倒的に多い。そのため、得体の知れない奴ほど緊張感が走るのは一部を除き当たり前なのであった。
やがてチームの全員が敵の気配を確認するとすぐ、化身が姿を表した。
化身は、まるで彼らが来るのを待っていたかのようにこちらを向いて呆然と立ち尽くしている。見た目だけは隙だらけである。
ここで、討伐隊が警備隊や軍の者たちならば油断してすぐに攻撃を仕掛けただろう。しかし、魔物との戦いの経験が豊富な冒険者は、化身は決して隙を作っていないことに気づいており、無闇に攻撃を仕掛けるような真似はしなかった。
『……………ホウ、気ヅイテオルカ人間ドモヨ』
『っ!?』
化身が声を出して話したことにより、冒険者たちは驚愕する他ない。なにせ目も口もないのだから。
とはいえ、相手は今まででも未確認の魔物。予想外のことが起こってもおかしくないと判断したベテランの冒険者たちはすぐに体制を立て直し、武器を構える。
『我ニ武器ナド通ジヌ。前ニ来タ蝿ドモハ魔法デ攻メテキタガノウ』
「へっ、うるせえ。あいつらと一緒にすんなよ。みんな、準備はいいな?」
「はい!」
チームのリーダーであるライザが振り返らずに言うと、みんな同時に返事をした。
『我ヲ討伐スルツモリデアルカ。デキルモノナラバ………ヤッテ見セヨッ!』
化身が動き出すと同時に、前衛の防壁組が動いた。
「光の壁よ、我を守り給え、『光障壁』!」
『!?』
なぜか化身の動きが止まり、隙ができた。今のうちに後衛が詠唱を始める。
「「「我が求むは光の力、これを用い悪しき魔物を浄化せよ、『光力』!!」」」
事前に話しあって統一しようと決めていた光属性の魔法が放たれると、化身もろとも森の中を眩しい光が包み込んだ。
『ガアアアアアア!?オ……オノレェ………オノレエエエエエエエ!!!』
光が治まり始めた頃にその声が聞こえ、辺りに響くように消えた。
『…………………えっ?』
全員が、拍子抜けたような声を出す。目の前にいたはずの化身は黒く霧散していったからである。気配は完全に消え、油断できないと判断し直した冒険者たちは敵の攻撃に備えて構えた。
待つこと数十分。
未だに何も起こらず、さすがにおかしいと思ったS級団員のアスラが、ライザに声をかける。
「ねえライザ、アイツ、さっきの光の攻撃で死んだんじゃ?」
「まさか。強力な魔物だって聞いてたし、光魔法一発で………」
「けど、魔力の反応はないみたいだよ」
「『探知』か」
「ああ、さっきの魔物の魔力は、完全に………消滅した」
「そ、そんなに光属性が苦手だったなんて」
「そうだな、とりあえず、帰ろう。ここにいて何もないんじゃ意味がない」
ライザの言葉に全員がうなずいた。同意を得られたライザは先頭に立ち、みんなを先導しながら歩き始めた。
補足。
改めてレイヴァの特徴・性格について。
『レイヴァとは、戦闘民族の末裔であります。
遠い先祖にレイヴァがいれば、その遺伝子を強く引き継いだ者が白髪を持って生まれてきます。
戦闘能力が高く、聡いです。ですから、阿呆な貴族やゴロツキに狙われることは多々あります。
ただ、持ち前の戦闘能力で自分の身を守るので、奴隷落ちすることは少ないですね。
しかしまだ戦闘能力が備わっていない子供のうちに攫われたり売られたりすれば話は別となりますが、たいていの戦闘能力は成長するだけでも人以上に育つので、逃亡することもよくあります。その代わりそういう類の子は人間不信になるので、人との関わりがほとんどなくなります。
基本レイヴァは学習能力が高く、一度経験したことを忘れることはほとんどありません。ただし、興味が無いことにはとことん興味がないので、そういった類のものはすぐに忘れます。
人見知りが多く、初対面といきなり馴れ合うことは全くと言っていいほどにありません。しかし、一度仲良くなればその絆を大切にしてくれるので、一生の友達になることもあります。
でもその絆も裏切りなどで絶ってしまえば二度と結ぶことはできません。
繊細で優しい性格ですが、赤の他人には冷たい態度です。人見知りなのもありますが、何より警戒心が強いのです。しかし気配りをすることは上手で、他人に迷惑がかかりそうなことは基本しません。
しかし本心は面倒事にしたくなく、他に借りを作りたくないからというのもあったりします。
そんな意外にもお人好しなレイヴァですが、自分や仲間に仇なす者は容赦なく叩かれるため、レイヴァの特性を知る者は簡単には彼らに手を出しません。
繊細なので傷つきやすいです。
例えば完全に心を許し、信頼していた仲間に裏切られたとします。すると、誰かと絆を結ぶことがなくなるのです。
親を大事にします。
誰かとの絆を大事にするので、親との絆を何よりも大切にするのがほとんどです。しかし、子供のうちに売られることも虐待を受けることもあるので、先ほども言ったように、そういった類の子供は人間不信です。
レイヴァは希少すぎるが故に存在が知られていない場合があります。
とはいえ名前や性質だけで、たしかに白髪が少ないのでレイヴァを知らない人でも人攫いは貴族などに高く売りつけたがります。
レイヴァの存在を知らない平民や新米冒険者などは、レイヴァが冒険者ギルドにいると新人だと思って絡んでくるのも少なくないのです。ですが全部返り討ちです。
一部の宗教や集落などでは、その真っ白な髪を呪いの子と称して忌み嫌うところもあったりするため、シノンも昔は嫌な目で見られることが多かったのです。
ですが仲間を何よりも大事にしてくれるので、もし出会えたならば仲良くするのが得策なのです。』
ということでした。
改めて書いてみると設定が結構細かいなとか思いました。
最後までお付き合い頂きありがとうございます。




