42、合格者面接とSクラス
何気久しぶり?な投稿です
「では、十一番から十五番までの方、どうぞ」
『失礼します』
五人の受験者がぞろぞろと部屋に入っていった。
「右の人から順番に受験番号と出身国、名前を教えてください」
「はい、受験番号十一番、レラン王国から参りました。ベリアルス=カナルコリスと申します。よろしくお願いします」
「受験番号十二番、コペル王国から参りました。シューノ=ルインと申します。よろしくお願いします」
「受験番号十三番、ラトス皇国から参りました。カルナ=レスティアスと申します。よろしくお願いします」
「受験番号十四番、同じくラトス皇国から参りました。シノン=レスティアスと申します。よろしくお願いします」
「受験番号十五番、ラスカ帝国から参りました。コルディアス=マラザーンドと申します。よろしくお願いします」
コルドが言い終わると、面接官の先生が切り出す。
「はい、では順番に、本校を志願する理由とこれからの抱負を言ってください」
それぞれが発表をし終わると、次はこちらを向いて面接官は問う。
「レスティアスさんは二人とも、座学も実技も大変素晴らしい結果だったと報告書にはありますが、誰かに指南してもらったのですか?」
その質問に、俺が答える。
「はい、ラトス皇国にあるリシュ山脈の麓に暮らす魔術師に教わっておりました。剣の方は、父から教えてもらっておりました」
「ふむ、なるほど。ちなみにその魔術師の名は?」
「リズミ師です」
「なるほど、では…………」
と、次々に質問を振られていく受験者たち。そして十分ほどやり取りを済ませたあと、俺達は部屋から出ていった。
「だっはああああああ………つっかれたー」
「なんだ、緊張してたのか?」
「当たり前だろ!自分の姿が面接官の先生にどう映ってたとか、気になるじゃんか!」
「そうだね、中等部で何度も練習させられたけど、上手くできなかったなあ………」
「俺も。緊張して普段の自分じゃなくなったみたいだ」
「シノンとカルナは?緊張した?」
「いや?別に?」
「普段から上の立場の人と話してるからかな、全然平気だった」
「上の人?」
「気にすんな!」
俺は慌ててカルナの口を塞ぎながらそう言った。
今は学校の食堂でのんびりと面接後の休憩しており、そして昼食が運ばれてくるのを待っている。メンバーは実技試験からの付き合いがありなんとなく仲良くなった五人である。
「いやいやいや、それでも面接で緊張しないのはすごいよ。まあ、終わったしいいか」
「なんかちょっと気になるけど………教えてくれそうな雰囲気じゃないものね」
そんなふうにシューノが言った。
シューノは赤い髪を腰まで伸ばしており、細い線を描くような眉の下にある茶色い目はしっかりとこちらを捉えるように見開かれていた。
「ふう、貴族とかはこういう時に堂々と話せるんだろうなあ」
ベリアルスは青髪に緑色の目を持っている。がっちりとした骨格に鍛えられた筋肉は、制服の上からでも多少わかるくらいだった。
短い髪は癖がなくしっかりと整えられており、太い眉の下にある目は大人っぽさがある。
「そう言えば、この制服すごいよな。面白い付与がされてた」
「ああ、『魔力増幅』でしょ?私は魔法師だから、こういうのすごく助かるんだよねぇ」
「え?俺のは『脚力強化』だったけど?」
「それは近接戦闘用のだからな。俺のも『脚力強化』だった」
「え?じゃあ『魔力増幅』は私だけ?」
「ああ、私も『魔力増幅』だよ」
「俺も。武器は使えないから」
お、仲間発見、とばかりにシューノは目を輝かせた。そうして向かい側に座るカルナの手を取り、固く握った。
「女子二人が意気投合したな」
「うん」
「そうだね」
俺のつぶやきにコルドとベリアルスが続き、ガールズトークに花を咲かせる二人を見ながら昼食を待つのだった。
入学式が行われた。
クラスごとに並んで、先生の指示を待った。昨日の会話から予想していたのだけれど、やはり私たち五人は全員Sクラスだった。
魔法の実技で、詠唱はあれでも短い方だと言っていたことから、ベリアルスとシューノ、そしてコルドも優秀なのだろうということはわかっていた。
案の定みんながみんな同じクラスだと知って驚いていたが、すぐに喜びあっていた。
私たちは列の後ろの方に二列で並び、そして先生の指示があったのでSクラスから順番にホールの中へと入っていった。
中に入るとたくさんの拍手に見舞われ、思わず目を瞑ってしまった。
しばらくは、校長やら理事長やらの長い話を聞かされ、そして入学式後半に入った。この学校では主席の挨拶というものはないので、時間が短縮されるようで嬉しい。
一つ歳下とはいえ、同年代の長い話は眠くなるのであまり好きじゃない。
『それでは最後に、全王さまよりご挨拶です。全員、敬礼!』
ザザザッ、という音を立ててみんなが、そして私も敬礼する。
優雅な仕草で壇上に上がってくるのは、この国の、この世界の頂点に立つ女王―――リュアン・テル・エリザベス・グラード=リリーズ様である。
後ろには、先日にお会いした時も一緒にいた護衛の男が二人ついていた。
桃色の長い髪は腰まで伸びており、黒いひも状のひたい飾りの中心には赤い魔石。そして両脇には植物の葉が何枚か、縦に並んでついている。
シンプルなデザインの桃色のドレスを着こなし、もうすぐで床につきそうな裾は静かに揺れる。
彼女の肩は空いており、傷やシミのない白い肌は光を浴びて自ら光っているようにさえ見える。
『皆さん、ご機嫌麗しゅう』
拡声魔法を使って話すその声は、細すぎず、しかし透き通るような美しい声。誰もが、彼女の方へと視線は釘付けだった。
『ご入学、おめでとうございます。わたくしも、心よりお祝い申し上げます。今回この王立総合高等学校を受験された方々は合計で三百七十三名です。その中、たった百三十人しか入学ができないという困難の中、あなた方はそこから抜け出すことが出来ました』
全王さまが優しい笑みを浮かべ、両手を大きく広げた。
『誇りなさい。たとえ順位が低かったとしても、あなた方は優秀なのですから』
『うおおおおおおおお!!!』
雄叫びにも似た歓声が広がる。少しして全王さまが手で制すると、再び続けた。
『皆さんはこれから、様々なことを経験し、成長していかれることでしょう。そして、その中にはもちろん、困難があります。いつでも良いことばかりではありません。それが長く続いても油断することなく、そしてまた失敗が続いたとしても、諦めることなく、向上心を忘れず、夢に向かって走るのです。それが、今のあなた方のするべきことです。わたくし、リュアン・テル・エリザベス・グラード=リリーズは、あなた方の夢が果たせるよう全力で支援することを誓いましょう!』
『うおおおおおおおお!!!』
『わたくしからは以上です。それでは、皆様お元気で』
そして、歓声が止むのを待たずにそう告げると、笑顔のまま頭を下げ、壇上から降りていった。
騎士の男が全王さまの手を取り、その場を去っていった。
興奮が収まりきらない会場を先生方がなんとか収め、入学式は終わりを告げた。
その後先生によって教室へと案内され、中に入る。
席は最初に自由に選んでいいらしいので、私とシノンが手前の机の前後に座った。
さすが王立学校と言ったところか、普通の学校では見ないはずの、書斎にありそうな豪華な椅子と机だった。
「えー、俺がここの担任のジャック=ホールだ。一応これでも『魔術師』だ。魔法に関してはこの学校では一番詳しいつもりなので、わからないことがあれば聞いてくれ」
ジャック先生が『魔術師』という単語を発した時、クラスがざわめく。私はいつも傍にはシノンがいるので、そんなに珍しいという自覚がない。
魔術師とは、魔力の量が多く魔法師よりも強力な魔法を使う者のことであり、普通の魔法師と比べるといろいろと違う。
一番は魔力量である。
一般の魔法師の魔力量はだいたい二十万魔力だが、多くて四十万魔力ほどだそうだ。しかし魔術師ともなればその差は広く、六十万魔力以上が一般的な魔術師らしい。
シノンの場合はちょっと異常なので、あまり人には本当の魔力量を教えたがらない。
ここには一般の魔法師として入学してきているし、シノンがくれた『実力制御』のお陰で、最大の魔力量数値も三分の一抑えられている。
『偽装の腕輪』とは別の腕輪に付けているので、金色の輪っかが右腕に二つだ。この学校は特に校則が厳しいというわけでもなく、貴族もいるので、基本アクセサリーは大丈夫だ。
だから安心して腕輪をつけていられる。
「あ、魔術師だからといって武器が使えないわけじゃない。一応、俺はこのSクラスの授業はすべて受け持つ。というわけで、わからないことがあったらなんでも聞くんだぞ。俺もわからなかったら徹底的に調べてやる」
そう言って、ジャック先生はにやっと笑う。ふむ、明るそうな先生でよかった。
ジャック先生は長身で茶髪、青い目を携え、その目は大きくもなく小さくもない、どこにでもいそうなごく平凡な男性だった。
歳は二十代後半くらい、優しそうな人柄は顔を見ればわかるし、若い女性には人気そうなイケメンだった。
まあ私からすればシノンの右に出る人はいないのだけれど。
「じゃあ、前の人から順番に自己紹介をしていこうか。じゃ、君から」
そうして、先生は窓際の金髪の女の子を指名する。
「はい。わたくしはカレン=フォン=ノイズレーンと申しますわ。出身国はヘルガ皇国。この学校に、そしてこのSクラスに入れたこと、とても光栄に思いますわ。みなさん、よろしくお願いしますわ」
金色の長くサラサラな髪をなびかせて優雅に言ったのはカレンと名乗る女の子だ。
細く千を描くような眉毛の下には碧い目。小さな口もとは端がつり上がっており、相手に不快を与えない微笑むような表情だ。
高位な貴族令嬢らしく、その態度や動きの一つ一つがとても美しかった。
しかし貴族にも関わらず気取った様子が見られない。どうやら心からこの学校とクラスに入れたことを光栄に思っているらしい。
「ありがとう。では次」
「はい。私はテルス=アルスファーです。出身国はミーズ王国のツシリ島です。平民で田舎者なのでもしかしたら失礼なことをしてしまうことがあるかもしれませんがその時は遠慮なく言ってください。よろしくお願いします」
テルスと名乗る女の子は、グレーの髪に黒い目を携えた小柄な女の子だった。グレーの髪は肩の辺りで切りそろえられており、大人しそうな印象を受ける赤縁のメガネをかけている。
ミーズ王国とは、リリーズ王国の南東に位置する島国だった。王都がある都島を合わせ七つの国で形成されており、ツシリ島はその中でも最南端にある縦長の島だ。
王都から遠いため、ミーズ王国では一番の田舎だと言われている。
「僕は倉末 近衛です。出身国は秀亀王国です。つい先日国を出たばかりで、他の国の文化をよく知らないので、教えていただけると嬉しいです。よろしくお願いします」
こちらは黒髪黒目、癖毛がなく大人しそうな顔立ちで、特に特徴のない男の子だった。
「私はアルウェスト=スフォールです。出身国はスフィン王国。一応貴族階級ですが気楽に接していただけると幸いです。よろしくお願いします」
白金の髪を総髪に束ねた美少女は胸に右手を当ててお辞儀をする。
翡翠色の透き通るような目は輝きに満ちており、キリッとした目つきは可愛いというよりはかっこいいという印象を受けた。
スフィン王国はレラン王国の北、ラトス皇国の南に位置する騎士王国だ。
彼らは敬意を示すことを大切にし、嘘をつかず、仲間を裏切らないという約束事のもと、強さを求めて修行する。
ということは、彼女は闘術の使い手かな?
「僕はコウ=フォン=リズレードだ。出身国はラトス皇国だ。みんなとは友好な関係を築きたいと思っている。是非気軽に話しかけてほしい。よろしく頼む」
金色の短髪で赤い目を持つ美少年だった。人の良さそうな笑みを浮かべ、礼儀正しく頭を下げる。
貴族階級だが、このクラスの貴族は気取った感じが一切しない。素晴らしいクラスだと思う。
まあ、貴族が貴族を裁くような国なのだから、逆に権力を振りかざす者の方が少ないのかもしれない。
その後私たち残り五人も自己紹介を終え、しばらくは自由時間となった。
九人の男女が一ヶ所に集まり、思い思いに世間話をする。このクラスの男女比は半々とバランスが良く、そして男女関係なく接することのできるメンバー揃いだったので気楽だ。
そんな中で、世の中では稀少とされる双子(という設定)の私たちに、カレンたち五人が興味を示してきた。
シノンはなんでか、ジャック先生に連れられてどこかへ行ってしまった。
「レスティアス様姉弟は、確か座学も実技も、ものすごい実績だったとお窺いしているのだけれど、いったいどのような学校へ通ってらっしゃったのかしら?」
「学校には行ってないよ。私は全部シノンに教わったんだ」
「え?行ってらしてないの?」
「じゃあ、そのシノン君はいったいどこで……?」
「それは………話すと面倒なんだよなぁ……」
「リシュ山脈の麓に師匠がいるって言ってたな、面接で」
「ああ、うん。説明はそれだけでも充分、か」
そう言って私は微笑む。
すると、テルスが黒い目をギラっと光らせ、人の悪い笑みを浮かべた。
「なんか、カルナってシノン君と恋人同士みたい」
「えっ?」
「ああ、わかる。双子なのに、互いを思いやってる面とかあるよな」
「確かにそんな雰囲気はあるよねぇ」
「…………………………」
実際そうであるから、私は否定の言葉を発することができなかった。
双子という設定にしたのは、おかしな輩に絡まれても私たちが一緒にいる意味を持たせるためであった。婚約しているとはいえ、私たちは平民。シノンは周りの女子からも結構視線を浴びてる美男子だから、権力を振りかざす女貴族でも出てきたら厄介なのである。
シノンには、お前も周りの男子から視線を浴びてるんだぞ、とかなり不満げな声でそう言われていた。
シノンには女子に注目されていた自覚がなかったように、私にも注目されているという自覚がない。
それはともかくとして、みんなからのなんだか意味ありげな視線を受け止めて、私は顔を赤くしうつむくのだった。




