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水の聖者~記憶の果て~  作者: 森川 悠梨
第3章、学校生活
40/138

40、 筆記試験と実技試験

「本当にありがとう。けど、こいつらこのままで大丈夫なの?」

「大丈夫でしょ。もう二度と女の子にちょっかいは出さないと思う。出してたら私が許さない」

「そうそう!あなた、あれ何!?ものすごく強かったけど!」

「あんなの初めて見た。女の子なのに惚れ惚れしちゃったよ」

「ああ………いやいや、ないないない!体術くらい使えないと自分の身が守れないから、頑張って自分を鍛えたんだよ」


 へえー、と、二人は興味津々といった顔で私を見つめてきた。

 あまりシノンを目立たせたくはないので、師匠がシノンだとは思わせないように自(・)分(・)で(・)と付けた。あながち間違ってはいまい。


「あ!!いっけない!早く受付に行かなくちゃ!」

「そうだった!間に合うかな?」

「今すぐ行こ!頑張ればまだ間に合うわ!じゃ、じゃあね、カルナ!本当にありがとう!」

「またね!」

「ああ………また…………」


 そう言うと、二人はダッシュでどこかへ行ってしまった。

 すれ違うようにシノンがこちらに歩いてきて、お疲れ様、と労ってくれた。


「行こうか。少し特訓しよう」

「うん!」


 そうして私たちは広場から離れ、 森の中へと入っていった。




 四日後、遂に入学試験当日となった。

 カルナのやつ、緊張しなくていいって言ったのに、肩の力が抜けてない。


 カルナの緊張がほぐれるまで少し待っていたが、一向に落ち着く様子がない。だから俺が一度カルナの頭をチョップで叩いてやった。


「いったぁ!!」

「緊張することなんかないから、復習もしたんだし、落ち着いてやらなきゃダメだろ」

「ああ、うん、ありがとう」


 頭を抑えながら、カルナは微笑んだ。うむ、上手く緊張がほぐれたみたいで良かった。


「よし、行くか」

「うん!」


 今年の受験者は全部で三百人ほど。この中から百三十人が選ばれる。相当レベルが高くなければここには入れない。


 まあ、俺はともかくカルナも大丈夫だろう。



「それでは、始め!」


 一斉に、ペンが机を鳴らす音が聞こえた。筆記分野は二時間ぶっ続けで、文学、数学、地理、歴史、魔法術学の五分野が総まとめになっている。


 問題はそんなに大したものではなく、過去問題を何度か解いているので出題パターンも理解している。


 地理に至っては文章を読んで一瞬で答えが出てしまう始末。魔法術学は言うまでもあるまい。


 一番最後の問題は、次の魔法陣の術式とその効果が何か答えよ、というものだった。残り時間は三十分ほどだったので、じっくりと眺めることにした。なんとなくだ。


 とりあえず計算式を作って解き、これから考えられる魔法の効果は……火炎竜巻《フレイム・トルネード》辺りか。風と炎の上級合成魔法で、攻撃力が高い上に範囲が広いため、命中率も高い。攻撃を受ける側としては厄介なものになる。


 そのため魔法陣の方も複雑になり、術式も色々と面倒臭い。間違ってないか確認してから、俺は魔法陣を眺める。


 まず、一つ大きな炎属性魔法、火炎《フレイム》の魔法陣が書かれており、そして上に二つ、十時の方向と一時の方向に風属性魔法、竜巻《トルネード》の魔法陣が描かれていた。


 どちらも中級だが、組み合わせるとこれは上級魔法になるのだ。こういうのは見てるだけでもなかなかに面白い。


 やがて三十分が経過し、試験監督の先生の号令がかかった。


「はーい、終了。ペンを置いて用紙は後ろからまわして」


 後ろの人から用紙を受け取り、そして自分のを重ねて前にいるカルナへ渡した。

 問題用紙も一緒に前へまわし、休憩時間になった。


 カルナは立ち上がって、俺の元へとやって来た。そして声を漏らしながら俺の肩に顔を伏せるのだった。


「ああー………疲れた……これから実技でしょ?」

「まあ、ちゃんと休憩時間もあるんだし、問題ないだろ」

「お前が隣だから問題ないか!」

「はあ………」


 俺は片手を額に当て、ため息をつく。


「あ、そうだ、最後のあの魔法陣わかった?私はまったくわからなかったのだけれど?」

「え?上級合成魔法陣だろ。効果は火炎竜巻《フレイム・トルネード》。簡単だろ?」

「簡単じゃない!全然わからなかったよ!」

「………そうか?」


 まあ、たしかに上級なだけあって複雑ではあるけど…………。


「お前、あの問題わかったのか!?」


 話しかけてきたのは、後ろにいた赤髪の男子だった。青い目を携えており、大きな丸い目にはまだ子供っぽさが残っていた。


「え?ああ、うん」

「すげー。俺でもわからなかったのに」

「魔法陣には詳しいのか?」

「まあな。初等部で魔法陣の勉強をし始めてから、色々と独学で勉強してたんだ。ここでも、俺は魔法術学専門部に行くつもりだよ」

「そうか。頑張れよ」

「ありがとう。俺はコルディアス。コルディアス=マラザーンド。コルドって呼んでくれよ。お前は?」

「俺はシノン。シノン=レスティアス。よろしく」

「私はカルナ=レスティアスだ。よろしくね」

「あれ………双子かなにか?」


 コルドは目を軽く開いて固まった。まあ、無理もないか。双子の稀少率といったらもう半端じゃないほど高いからな。滅多にお目にかかれるもんじゃないし。


 本当は双子じゃないけどね。


「おい、コルド。固まるな」

「いてっ、ああ、すまん。双子なんて聞いて驚いちゃった」

「いや、仕方ない。気にするな」

「ああ、それよりもさ、あれどうやったんだ?難しすぎて最後の十分くらいずっと考えてたんだが。教えてくれよ」

「えっ?普通にやればわかるだろ。まずは……」



 休憩時間が終わり今度は実技試験だ。術式に関しては、教えてやったらコルドはもちろんカルナも驚いていたが最終的には納得してくれた。

 実技試験の会場に案内されながら、俺たちは三人で少し会話をしていた。


「火炎《フレイム》の魔法陣と竜巻《トルネード》の魔法陣は教えてやっただろ。なんで分からなかったんだ」

「いや、式を求めるのに夢中で、火炎《ファイア》と竜巻《トルネード》の魔法陣だって気づかなかったんだ。言われてみれば……そうだったかもしれない………」

「そもそもなんなんだあの組み合わせ?上級合成魔法とかわからないんだけど!」


 なんかコルドが愚痴ってるな。まあ、無視しとこう。そうこうしているうちに試験会場に到着した。どうやらここは魔法の訓練場らしい。


 番号順に五人ずつ会場に出て、的に当てるものだ。壊せば問題なく合格するだろ。


 さて、みんなどんな魔法を使うのやら、ちょっと興味があるな。同年代の魔法なんてカルナ以外のは見たことなかったし。


『光よ貫け、そして破壊せよ!我が身に宿りし光の力をここに解放せよ!光槍(ライトスピア)!』


『大地よ、母なる大地よ!我に力を与え給え、そして砕け!岩石砲《ロックガン》!』


 ………………長っ!


 たかが初級魔法でこんなに長い詠唱使うもんなのか!?せいぜい前半くらいまでが普通だと思ってたけど!?しかも的が全然壊れてない!


 カルナも同じようなことを思ったらしく、俺の方を見てうんうんとうなずいている。


 …………これじゃ、もう少し詠唱を長くしないと目立つか?詠唱は自分でそれなりに改造したって問題はないから、適当に考えればどうとでもなるし。


 まあ………大丈夫か?何とかなるか?


「はい、えー、次はカルナさん、どうぞ」


 カルナは前に出て、片手を前に出した。

 みんな両手を前に出して魔法を使っていたので、少しざわついた。


『風よ切り裂け、そして岩をも砕く刃を作り出せ、風刃《エアカッター》』


 すると風が起こり、目に見えない刃が土人形を一瞬で砕いた。

 やはり一番最初に教えた魔法なだけあって威力はバッチリだな。よし、次は俺か。


 少し外野がざわついてるが気にしなくて良かろう。


「………はっ!つ、次、シノンさん、どうぞ」


 惚けてたな、試験監督の先生。まあいい。俺はカルナよりも抑えないとな。魔力操作に関しては昔からやってるので問題はないはずだ。


 俺はカルナとすれ違うようにして前に出て、片手を的に向ける。


『水よ切り裂け、そして岩をも砕く刃となれ、水刃《アクアカッター》』


 水の刃が土人形目がけて発射され、一瞬で木端微塵になってしまった………以外と強度がなかった。


 なるほど、カルナの気持ちもわからんでもない。かなり抑えたけど全然ダメだった。うん。


 戻ってカルナのもとへ行くと、彼女も苦笑しつつ、お疲れ様、と労ってくれた。


『想像以上に脆かったな、あの的』

『あはは………そうだね。そう感じたのが私だけじゃなくて良かったよ………』


 念話《テレパシー》でカルナと会話していると、試験監督は復活して、最後にコルドの名前を呼んでいた。


「はっ、はい!………ちくしょう、あんなにすごいの見せられたら俺の魔法なんかショボイじゃねえか………」


 後半は誰にも聞こえないように呟いたんだろうが、俺にはしっかりと聞こえていた。すまん、コルド。後で労ってやる。


『生命《せいめい》の輝き、そして力、この世の全ての糧《かて》を司る生命《いのち》よ、我に力を与え給え、生命力衝突(ライフクラッシュ)!』


 金色の光を放つ命属性の攻撃魔法が、土の人形目がけて発射された。命属性はそれなりに威力があるので、土人形にはヒビが入った。


「はい、これにて魔法実技の試験は終了ですので、こちらに来てください!」


 俺たちはぞろぞろと先生の方へと向かい、控え室に案内された。


「お、おい、お前ら、なんだよあの魔法。すごい威力だったけど?」


 コルドが話しかけてきた。他の男女二人も気になったらしく、うなずきながら俺とカルナの前に来た。


「いや、逆にこっちが驚いたんだが。詠唱ってあんなに長いものなのか?」

「いやいやいや、あれが普通だって!中級や上級なんてあんなもんじゃないぞ?もっと長いんだぞ?」

「………そうか?」


 俺はため息をついた。いきなり躓いたよ。こんなんじゃすぐに無詠唱なんて言われそうだな。

 お前なら無詠唱とかできるんじゃねえの?とかさ。


 たしかに俺も一年くらい前までは上級魔法に結構長いの使ってたけど、改良したら全然無詠唱で使えたし。たぶん、あれよりも長いんじゃないかと考えると少し背筋が凍った。


 まあ悪目立ちしなきゃ問題はないだろ。詠唱はもう少し長めにしないとな………。


 コルド曰く、前の二人や彼の詠唱もまだ短い方らしい。たかが初級程度にどんだけ長い詠唱を使ってんだか………。


 次はちょっと休憩して希望者のみ武器を使用する闘術実技試験だが、ここで規(・)格(・)外(・)の力を見せたらまずい。カルナには、くれぐれもいつものようにかかるなと指示しておいた。


 レイヴァである以上今のカルナなら、ベテラン教師が数人いたところで勝てはしない。


 偽装はできても強さまでは誤魔化せないから、今度は力を抑える道具でも作らないといけないな。

 というわけで、今夜にでも作ろうと一人で考えたのであった。


 やがて、闘術実技試験が開始され、今度はコルドを除く四人がまとめて訓練場に出された。

 先ほどとは違う場所らしく、闘技場のように周りは観客席に囲まれていた。


 他の場所には、他の集団が転々と試験している様子が窺われ、俺たちはその中の一つの集団に過ぎなかった。


 武器は学校側で用意してくれるらしく、それぞれが自分の戦闘スタイルに合いそうな武器を選出していった。もちろん俺は『双剣流《ツインソード》』なので、白刃と黒刃に形が似ている『双子剣』を選んだ。


 カルナも普段から使っている剣に似た物を取り出して、素振りを何度かして満足げにうなずいていた。


「そっちはどうだ?」

「うん、良さそう。で、どれくらいの力量でやればいいかな?」

「そうだな、前の二人と先生の戦闘を見て決めよう」

「わかった」


 ご丁寧にベルトと鞘まで付いていたので、今回に限った一時的な相棒を腰に巻いた。


「すごい、君、『双剣流の使い手(ツインソードフロー)』なんだ?」

「ん?ああ………まあな」


 この世界では、『二刀流』及び『二剣流』の使い手は珍しい。特に『双剣流』と呼ばれる者は、ペアで作られた剣を使う者のことで、二刀流とは少し違う上にさらに少ない人種だ。


 二刀流とは、製作者や性能、そして質が異なる剣を使う者ことだ。左右の手に性質が異なる件を使用することで、使い分けることができるからだ。


 しかし、重さや強度などの違いから、相当な技術が求められる。

 更に基本は普通の、なんの効果もない剣を使用していることから、魔法を使用することも出来ず、戦闘の範囲は近距離に絞られる。


 しかしそうなるとデメリットしか見当たらなくなるが、実はそうでもない。近接戦闘において二刀流とは最高の位置にいる存在であり、距離を詰める技術さえあれば使用者の勝率はかなり高い。


 それに、武器が二つもあれば攻めや守り、どちらかに専念しなくても良くなる割合が大きくなるし、攻撃も防御も比較的有利になる。


 技術さえあれば、闘術の中では頂点《トップ》に値するほどの利点がある。


 対して双剣流とは、そのほとんどが魔剣使用者である。双子剣《ペアソード》とも呼ばれる二つで一つも同然の剣を使う者は魔力操作に長けており、近距離から遠距離まで、幅広い戦い方をすることができる。


 使い手によっては二刀流を超える強さをも誇る。


 同じ製作者、同じ性能、質、そして同じ強度の双子とも言える双剣は、貴重な物かつ激稀少(レア)道具《アイテム》とも呼ばれる。


 もともと二刀流使用者が少ないのもあり、双剣流の使い手(ツインソードフロー)はその中でもさらにレアな存在となっている。


 レベルをつけるとすればSSクラス以(・)上(・)に行くのではないかと言うほどだ。


 となれば、こんな所で双剣流など使っては目立つかとも思ったが、先生がわざわざそれを貴族にとかに言いふらすとも思えないし、ここにいる人たちはみんな平民だ。気にする目はどこにもない。


「それじゃあ、闘術実技試験を始めるぞ。十一番の人からこっちに来て人形の前に立ってくれ!」

「はいっ!」


 さて、お手並み拝見、だな。

補足?


簡単に、『二刀流・二剣流』と『双剣流』の違いをまとめると。


二刀流・二剣流

・使用するのは製作者、性質、強度、重さなどが異なる二本の剣。

※製作者は同じでも良き。

・魔法付与のないごく普通の剣。

・技術が必要。

・戦闘スタイルは主に近接戦闘と幅狭い。

・稀少レベルをつけるならSクラス。


双剣流

・使用するのは同じ製作者。そして性質、強度、重さなどがほぼ同じ双子の剣。

・魔法付与のある激稀少道具。

・技術は対して必要ないが、魔力操作に長けていなければ難しい。

・戦闘スタイルは近距離、中距離、遠距離。魔力が高い者は超遠距離ができることもある幅広いスタイル。

・稀少レベルをつけるならSSクラス。

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