ユート、旅に出る
次の日の朝起きたら、LVが上がっていることに気がついた。
寝る前は、LVが1だったが、
起きてみるとLvが20になっていた。
それと並行して、HPが6、MPが7、STR(10)、VIT(9)、DEX(11)、AGI(10)、INT(13)LUK(1)になっていた。
自分の見た目はほとんど変わっていない。
特に筋肉が付いたということはない。
もともと、ダンに鍛えられているから、
そこそこは筋肉が付いているけど。
もちろん鑑定スキルで見られていいように隠してある。
朝食の後、ダンに昨夜のアリスとの会話を話した。
「それで、いつ出て行くんだ。」
ダンが聞いてきた。
「明日の早朝、村を出てラサースの町で冒険者の登録をしてから、
少し、依頼を達成したら、
ライオネル城を目指したいと思っている。」
「そうか。」
「それで、お父さん。」
「ん、何だ。」
「僕を拾ったところってどこだったの?」
「あ~。あれは確か、
隣の国でソロス領と言ったかな。
そこのモーゼの町から2日ほど南東に行ったところだ。
と思う。なんせ、15年前のことだから記憶が薄くなっているから
な。
何だったら母さんに聞いてみな。」
隣の国か~。遠いのだろうなきっと。
ま、時間もあるし、楽しく行こうかな。
急ぐ旅でもないし。
「ユート、ちゃんと村を出て行く前に、
ミランダさんとミラには挨拶するんだぞ。」
「解ったよ。」
ミランダの家の前にたどり着き、
ドアをコンコンと叩くと家の奥の方から
「は~い」
とミランダの声がしてきた。
ミランダの家はこの村によくある普通の平屋だ。
しばらくすると扉が開き、
「あら、ユート今日はどうしたの。どうぞ中にお入り。」
そう言ってミランダが出迎えてくれた。
中には4人掛けのテーブルがあり、
そこに座ると、
お茶とトウモロコシの様な粉を水と砂糖でといで焼いた、
少し甘いお菓子を一緒に出してくれて
「どうぞ」
とミランダが言った。
「ミランダさん、ミラは?」
と尋ねたら、
「ミラは今、馬のお世話をしているわよ。」
とのこと。
ミラは今でも馬が大好きで面倒を見ているし、
よく村の周りを馬に乗って颯爽と走っているのを何度か見ている。
俺も馬に乗らしてもらって、
普通に乗れるようになったが、ミラの方が格段に上手だ。
「そうか。ミラはいないのか。」
「どうしたの。なんかあった?」
「いや、ミランダさん。
俺、明日の朝、この町を出ようと思っている。
ダンにも言われたって訳じゃないけど、
ミランダさんとミラにはちゃんと話とかないと思って。」
「そっか~。少しさびしくなるわね。
でも、ユートが決めたのだからおばさんは応援しているよ。
でも、ミラが・・・あ~ごめん、
ミラのことは気にしないでね。
ユート君には本当にいろいろなものも、
もらったしミラも助けてもらったし、
感謝しきれないよ。」
「いえいえ、そんなことないですよ。
僕だってお母さんが2人いて本当に幸せだった。
ミラだって兄弟みたいだったし。」
「そう言ってもらえるとうれしいわ。
でもたまにはこの村に帰ってきて、
元気なその顔を見せてね。」
「はい、ミランダさんもお元気で。
ミラにもこの後、合いに行きます。」
ミラは相変わらず馬に乗って遊んでいる。
「お~い。ミラ~」
と叫んだら気が付いたようでパコパコと音を鳴らしてこちらに向かってきた。
「あ、ユート元気?どうしたの?」
俺の頭上から話しかけてきた。
「ちょっといいか。」
「うん。」
と言ってミラは馬から颯爽と飛び降りた。
「ミラ、おれ、明日の朝、この村を出ることにしたよ。」
「え、何を急に。」
「いや、前から思っていたんだけど、
タイミングというか。
村の外の魔物ってどれくらい強いのだろうかと心配して、
なかなか踏み出すことが出来なかったんだ。
でも今回のオーガの件で、ある程度自身が付いた。」
「え~ずるいよ。急すぎるよ。」
「ごめん。ミラ。
だからさ、今度いつ会えるか解らないからさ、
ミラには伝えに来たんだよ。」
「・・・」
ミラは無言のままだ。
この雰囲気に耐えられなくなった俺は、
「そうゆうことだから今までありがとな。元気で。」
って言って逃げるように家に帰った。
後ろから
「ちょっと待ってよ。」
というミラの声が聞こえたような気がした。
次の朝になり、旅支度を済ませると、
アリスとダンが見送ってくれた。
ダンから
「選別だ。」
と言って俺の手を握り、
何か丸いものを渡してくれた。
よく見るとそれは小金貨だった。
「こんなのもらえないよ。」
俺がそう伝えると、
「ユートもらっときなさい。」
とアリスに諭された。
「でも...」
それでも俺は、
この世界のお金の価値がほとんど解らないが、
この村だとたぶん1年ぐらいは暮らしていける額なので、
断った。
「いいんだよ。ユート。
これからお前は旅に出る。冒険に出る。
お金も必要だ。
今まで、お前は全然俺たちにわがままを言わなかった。
親として、これほど楽な子育ては無かったし、
親としてわがままを言わない子供って少し寂しかったんだぞ。
最後ぐらい、旅に出るからお金をくれ!ぐらい言いやがれ。」
「まあまあ」
アリスのため息が聞こえてきた。
「じゃあ、受け取れないんだったら、貸してやる。
お前はいつも親のことを気にし過ぎる、解った。
それだったら、今度戻って来た時に倍にして返してくれ。」
「もうユート。
素直に受け取らないから、倍にして返せってダンに言われちゃったじゃない。
ほら早く仕舞って、
こんな押し問答をしているともっとあくどい利子が付くわよ。
早く早く。」
とアリスは笑いながら言った。
「わかったよ。ありがとう。ダン。」
「お~、解ればいいんだ、解れば。
冒険には困難が付き物だ。
本当に耐えれなくなったら、
この村に帰って来ていいからな。」
「本当に?」
ワザとらしく聞いてみたら
「嘘。お前は絶対に有名な冒険者になる。
それまでは絶対に帰ってくるな!!」
「そんな~つれないな~」
と3人で大声で笑った。
さて、
最後という訳でもないがアリスとダンの別れが終わり、
家を出た。
町を出る間に俺に気づいた何人かの村の人も
「がんばれよ」
などやさしく声をかけてくれた。
村を出て、
ラサールの町に向けてしばらく歩いていると後ろから馬の走る音が聞こえてきた。
振り返ってみると、ミラを乗せた馬がこちらにやってきた。
「ユート、待って~」
ミラが叫んでいるのが聞こえてきて立ち止まり到着するまで待った。
ミラは馬から飛び降りると、
俺に抱き付いて来て、ミラのやさしい香がした。
「え、どうしたのミラ。」
俺はその香にちょっと緊張した。
「ユート、どうしても行っちゃうのね。
本当は私、ユートと冒険したかった。
だってユート、世間のこと何も知らないんだもの。
私が着いてってあげないと野たれ死んじやうよ。」
そりゃ~世間のことは知らないけど。
野たれ死なないよ。
「大丈夫だよ。死なないよ。」
「ユートが心配なの。」
「そうか、ありがとう。」
「でも、ミランダお母さんは、
一人娘の私を育ててくれたから、
一緒に居てあげないとさびしがるら、
ユートに付いていけない。
だからユート。
たまには村に帰って来て冒険のお話を聞かせてね。
で、この後どうするの?」
「ラサールの町に行って取りあえず、
冒険者になろうと思っている。
しばらくはそこで依頼を達成して、
その後は、ライオネル城に行きたいと思っている。
その後は考えていない。
当面はラサール周辺にいるかな。」
「そう、じゃあこれ、旅の途中で食べて。」
といってお弁当を渡してくれた。
「ありがとう。いただくよ。」
「それじゃあ元気でね。
いつまでもしゃべっていると別れが辛くなるから、
もう戻るね。」
そう言って、馬にまたがって帰っていった。
ミラは馬に乗りながら泣いているようだった。




