↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
4/15

強い者が頂点に立つ

———————レオン・ドナート 19 冬

 「俺が、皇帝になって、お前を娶る。」

 なんの根拠もなかった。ただ、絶対に皇帝になってやるという意思は固かった。皇帝になって、今まで見下してきた奴らを見返し、好きな女を娶る。アイリスが泣くのは、もう見たくなかった。

 「……お待ちしております、レオン様。」

 涙を拭って、しばらく見つめ合った。そして目線が唇に移り、また目が合う。アイリスが目を閉じたのを合図に、そっと触れるようなキスをした。

 待っていろ。必ずお前を幸せにしてやるから。

 それからは、ずっと剣術の鍛錬に勤しんでいた。自分には権力がない。それならば実力で権力を勝ち取るしかない。

 毎日毎日、鍛錬を繰り返していた。

 辛くて心が折れそうな時もあった。そんな日は、アイリスに助けられた。「頑張れ」とガッツポーズをしながら口パクで真剣に伝えてくるアイリス。なんだかそれが面白くて、笑ってしまった。不思議な事にそれだけで辛さが吹き飛んだのだ。思えばいつも、そんなアイリスの健気さに助けられていた。

  そしてついに今日は、運命が決まる日。皇帝、つまり父親は持病を患っていた。先が長くない。そのため、次期皇帝を決めようと王族全員を招集した。

 息子であるのは、嫡男であるルシアンと側室の子である俺だけ。

 父は言った。どちらか強い者を皇帝とする、と。

 辺りがざわついた。

 「跡継ぎは正室の子のルシアンでは?」

 「歴代そうだったはずだ。」

 「忌み子が皇帝になるかもしれないだと?そんなの許されるか!」

 「まあまあ、どうせ勝つのはルシアンだ。大人しく見ていよう」

 ルシアンが前に出てくる。剣を構えて。

 「手加減はしないからな」

 俺はルシアンに向けて宣戦布告をした。

 「上等です」

 そして戦いが始まった。張り詰めた空気が漂う。

 先に動いたのはルシアンだった。地面を蹴り、一気に間合いを詰める。

 そして、剣が振り下ろされる。俺は身体を横へ滑らせ、その刃を紙一重でかわした。

 速い。幼い頃から何度も手合わせしてきたが、今日のルシアンは今までとは違った。

 息をつく暇もなく剣が迫ってくる。

「どうしました!」

 ルシアンが叫ぶ。

「避けてばかりでは、勝てませんよ!」

「ずいぶん余裕だな!」

 剣を弾く。甲高い音が響いた。

 様子を見ようと、互いに一歩退く。

 そして、ほとんど同時に踏み込んだ。剣と剣が激しくぶつかる。

 腕に痺れが走った。重い。一つ一つの攻撃が重かった。

「……強くなったな」

「あなたに勝つためです」

ルシアンは即答した。その目には、負けたくないという意志が宿っていた。

「なら、俺も負けるわけにはいかないな」

  再び剣を交える。今度は俺から攻めた。

ルシアンはそれを必死に受けている。今は俺が優勢だ。

————————俺が皇帝になって、お前を娶る

 そう、言った。約束した。絶対に負けるわけにはいかない。

ルシアンは一撃ごとに後ろへ追いやられていく。それでも倒れない。それでも退かない。

「……!」

 ルシアンが剣を振り抜く。俺はそれを受け止めた。

 互いの剣が激しく押し合う。額から汗が落ちる。

 俺は力を込めた。剣が弾かれる。ルシアンの身体が僅かに揺らいだ。

 その一瞬を、俺は見逃さなかった。一気に踏み込む。

 剣先を翻し、ルシアンの剣を弾き飛ばす。乾いた音を立てて、剣が地面へ落ちた。気づけば、俺の剣先はルシアンの喉元で止まっていた。

 静寂が落ちる。

「……俺の勝ちだ」

 ルシアンはしばらく黙っていた。やがて、ゆっくりと息を吐く。

「……完敗ですね」

 俺は、剣を振い、ルシアンに告げた。

「強い者が頂点に立つ。」

 そのときの俺は、知らなかった。この勝敗が、俺たちの人生を大きく変えることになるなど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。