優しい心
——————アイリス・ベアーテ 20 秋
一人で庭園を歩いていると、偶然、ルシアン殿下と鉢合わせた。
「ルシアン殿下、こんにちは。」
「皇后様に拝謁の栄を賜り、身に余る光栄に存じます。」
「……さぞ気が休まらないでしょう。」
一連の事件について、自分の使用人が暗殺されるなど、辛く悲しいものだろうとルシアン殿下の心が心配になった。
「ご心配くださり感謝いたします。……ええ。そうですね。私の大切な配下が亡くなってしまってしまった事は実に心苦しいものです。」
「その痛みはよく分かります。早く犯人が見つかるといいですけど。中々難航しているようで……陛下も苦心しておいでです。」
「感謝致します。陛下には苦労をかけ申し訳なく思っております。」
私は悲しんでいる様子のルシアン殿下を励ましたかった。談笑が続く。
「王妃様と侍女の方は大変仲が良いのですね。」
「ええ。幼い頃からずっとそばにいるんです。」
「そういえば、幼い頃、ソフィアが紅茶をいれてくれたのですけど、どうやら砂糖と間違えて塩を入れたようでとてもしょっぱかった事があります」
「塩を?それは大変だ」
「2人で大騒ぎしました。今でもちゃんと、砂糖をいれたわね?と確認をするのですよ」
「ふふ、微笑ましいですね」
ルシアン殿下が袖で口元を隠し、笑う。
「けれど先日、私はもう成長いたしましたので砂糖と塩を間違えることはありません!って言われて。毎回確認されるのを気にしてたみたい」
「はははっ。」
ルシアン殿下はこちらを向いて丁寧にお辞儀した。
「ありがとうございます。なんだが元気が出ました。」
庭園のカーネーションが、風で揺れた。私たちの声が、回廊に柔らかく響いている。




