第69話 北へ、さらに北へ
ロゼン、カイレン、カルロスは、局長室でクラントと向かい合っていた。
クラントは微笑を浮かべた。
「諸君はワタシの期待に応えてくれた」
一拍置いて続けた。
「現場に立ち会えないのは残念だが、浄光教側の言い分を飲むしかあるまい」
変わらない口調で続けた。
「『第二鏡面璧ヴェルナート』を超えた先に『第一鏡面璧オルディアス』がある。最前線の拠点だ」
三人を一瞥した。
「名残惜しいが、諸君の無事を願っている。ロゼン金兵、前へ」
ロゼンは前に出た。
「風袋を持っているのか」
「はい」
クラントは懐から金貨1枚を取り出し、ロゼンに手渡した。
「食費の足しにはなるだろう。ワタシからできるのはここまでだ」
ロゼンは金貨を握り締めた。
「吉報を待っている。以上」
ロゼンは金貨をポケットに突っ込み、敬礼した。
後ろの二人もそれに倣った。
三人は踵を返し、局長室を出た。
「ヴァーゲは翌日の昼までと言っていた」
カルロスが息を吐いた。
「休息なしで走るしかないな」
「時間は限られている。急ごう」
二人は首を縦に振った。
「はいっす」
「おう」
三人は守護の鏡ルミナルディアまで走った。
街中では馬車を使い、市場で食料と飲み水を多めに買い込んだ。
馬車で北門へ向かった。
カルロスは懐中時計で時間を確認した。
「午後4時過ぎか」
「それじゃ、行くか」
三人は地を蹴って北上した。
——午後10時。
三人は『第二鏡面璧ヴェルナート』に到着した。
カイレンのお腹の虫が鳴いた。
「お腹が空いて限界っす」
「メシにするか」
カルロスが頷いた。
「ああ。だが、軽食にしておけよ。眠くなるからな」
「カイレン、少し待っていろ」
カイレンは弱々しい声で答えた。
「はいっす」
ロゼンは巡回している警備兵に事情を説明した。
警備兵は快く頷いた。
「食事なら詰所で取るといい。少し散らかっているが、外で食べるよりかはマシだろう。案内しよう」
「少し待ってくれ。仲間を呼んでくる」
ロゼンは声を張り上げた。
「カイレン、カルロス、来てくれ」
二人はロゼンの元へ近寄った。
「詰所を使わせてもらえることになった」
「そいつはありがたいな」
警備兵に詰所まで案内された。
三人はイスに腰を下ろし、食事を始めた。
ロゼンは干し肉を齧りながら懐中時計で時間を確認した。
「あと14時間もあるが」
カルロスが口の中のものを飲み込んでから答えた。
「いや、14時間しかない」
水を一口飲んで続けた。
「二節の距離があるんだよ。おまけにオレたちの体力を消耗している。それに、獣と遭遇する可能性も残っている」
カルロスは息を吐いた。
「ここで長居してられない。10分後、出発しよう」
ロゼンは首を縦に振った。
三人はゴミを片付けた。
警備兵に礼を言い、北門を開けてもらった。
三人は走り出し、『第一鏡面璧オルディアス』を目指した。
——翌日の午前12時前。
三人は「第一鏡面璧オルディアス」に到着した。
警備兵が南門を開けた。
すると、ヴァーゲが立っていた。
「部屋に案内してやる。ついてこい」
踵を返すヴァーゲの後についていった。
ロゼンはヴァーゲに質問を投げかけた。
「案内は下の者がやるんじゃないのか?」
「アタシにも事情ってもんがある」
階段を下り、突き当りの部屋で足を止めた。
「この部屋を使え。待て、ロゼンには話がある」
ロゼンはカイレンとカルロスに頷いた。
ヴァーゲは二人が部屋に入ったのを見届け、ポケットから一通の手紙を取り出した。
「聖女様からロゼン宛に手紙だ。アタシは内容を知らない。読んだら燃やせ」
ロゼンは手紙を受け取り、内容に目を通した。




