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魔法は嘘をつく ―賢者が残した遺産―  作者: 虚空小白
第二章:悪魔を統べる王
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第67話 ハウンド対十二聖徒・中編

 カイレンとレーヴェが対峙する。


 カイレンは曲刀を抜いた。

 レーヴェは身構えた。

 左右の拳には手甲を装着している。


「両者、準備はよろしいでしょうか」


 カイレンは獣のように重心を低くした。

 左手を地面に着いた。


 試合前にロゼンに言われたことを反芻する。


「ウチは自然体が一番っす」


 レーヴェを見据えた。


「『朧月』、いくっすよ」


 レーヴェは軽く跳んで着地を繰り返した。


「始めてください!」


 二人は同時に地を蹴った。


 土煙が舞い上がり、間合いが一瞬で消える。


 カイレンの袈裟斬りをレーヴェは紙一重で避けた。

 すぐさま拳が突き出される——風を切る音とともに。


 カイレンは咄嗟に後ろへ下がる。

 頬を掠めた拳圧に、皮膚がひりつく。


 レーヴェが地を蹴り、拳を振り下ろす。


 カイレンは曲刀を振り上げ、拳を弾き飛ばす。

 衝撃が刃を通じて腕に響いた。


 風の刃がレーヴェの黒い外套を裂き、鎖帷子が鈍い光を放った。


 レーヴェは破れた外套を見て、笑った。


「厄介な武器だが、威力が足りないな」


 カイレンは地を蹴った。

 真横に薙いで一閃した。


 金属と金属がぶつかる音が、競技場中に轟いた。

 空気が振動し、ロゼンの髪が揺れた。


「もらった!」


 次の瞬間、レーヴェの拳が唸りを上げてカイレンの背中を強く打ち付けた。


「あがっ!」


 カイレンは前のめりに吹っ飛び、地面を転がりながら痙攣し、咳込んで血を吐いた。


「ワタシは体術を得意としている。足を狙ったようだが、手甲も半下甲も上質な鋼でできている。鋼の剣では傷一つつかない」


 カイレンは震える腕で地面を押し、歯を食いしばって立ち上がった。

 両手で曲刀の柄を握り締める。


 血の混じった唾を吐き捨て、不敵に笑った。


「カイレン、何がおかしい?」


「この『朧月』はミスライルでできているっす」


 レーヴェは右の手甲に亀裂が走っているのに気づいた。

 目を見開いた。


 次の瞬間、大声で笑った。


「少女と侮っていた、ワタシの落ち度か。身体も温まってきた。全力でいかせてもらう」


 レーヴェが地を蹴り、突進した。


 カイレンは曲刀を振り下ろした。

 レーヴェは右の手甲を防御に回し、左の拳でカイレンの脇腹を殴りつけた。


 鈍い衝撃音とともに、カイレンは吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。


 肩で呼吸を繰り返す。

 視界が霞んでいく。


 レーヴェの突進。


 カイレンは愚直に曲刀を振り下ろす。

 レーヴェは右の拳で守り、左の拳で攻める。


 カイレンは咄嗟に飛び退いた。

 紙一重でレーヴェの拳を避け、一歩踏み込んで横に薙いだ。


 だが、レーヴェは右の肘と膝で曲刀を挟んで固定した。


「惜しい。あと10戦ほど戦っていれば、いい勝負になっただろう」


 左手でカイレンの頭を鷲掴みにし、そのまま結界の外へ投げ飛ばした。


 結界に触れたカイレンの姿が掻き消え、ハウンド陣営に曲刀を持ったまま立っていた。


 カイレンは曲刀の柄を握り締めた。

 そして、地団駄を踏んだ。


「負けたっす! 悔しいっす!」


 ロゼンはカイレンの頭に手を置いた。


「よくやった」


 ロゼンの手が震えていた。


「ロゼン……?」


 一方、浄光教陣営では、戻ったレーヴェは砕けた右の手甲を見て微笑んだ。


 ヴァーゲが横目で見る。


「あの女がやったのか?」


「ワタシの怪力にも耐えられる手甲だったのだがな。壊れてしまった」


 ヴァーゲが口角を釣り上げた。


「アタシを愉しませろよ、ロゼン」


 ヴェルナーが声を上げる。


「ロゼン金兵とヴァーゲ様は競技場の中央にお集まりください」


 ロゼンは前に歩き出した。


 瞳には闘志の炎が宿っていた。

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