第64話 二本の剣
翌日。
ロゼン、カイレン、カルロスは朝食を済ませた。
二人の剣を受け取りに、革新工房へ向かった。
革新工房に到着すると、見覚えのある青い髪の技師がはにかんだ。
「フィリア、どうして革新工房にいるんだ?」
フィリアは指を絡めながら答えた。
「ミスライルのことを知るために、異動しました」
「剣を受け取りに来たが、フィリクスはいるのか?」
「徹夜で作業していたので、今は眠っています。私がお二人に渡すよう頼まれたので待っていました」
壁に立て掛けた剣を一本取り、それをロゼンに渡した。
「長剣『断空』です」
ロゼンは剣を抜き、刀身に目を細めた。
上等なものだと一目でわかるほど、刀身が綺麗に輝いていた。
「フィリクス技師長からの伝言です」
一拍置いて続けた。
「ロゼンは剣を大切に扱うあまり、常に全力を出していない。よく手入れされた剣がそれを物語っている」
ぐうの音も出なかった。
フィリアはもう一本の剣をカイレンに渡した。
「曲刀『朧月』です」
カイレンは反った刃を見て、ロゼンの剣と見比べた。
「カイレンは長剣では剣が耐えられない。刃こぼれした数がそれを証明している。だから、刃を反らすことで剣の負担を減らした」
「ウチも丁寧に扱っていたっす」
「カイレン、フィリアに当たるなよ」
「ウチも長剣がいいっす」
カイレンは口をへの字にした。
長剣はヴェラの戦士として認められた際、族長から贈られた物だった。
カイレンにとって、それが不服だった。
「使ってもいないのに無茶言うな」
フィリアが思い出したかのように声を発した。
「伝え忘れていました。『断空』は三象——いずれかの斬撃が放てます。『朧月』は四理の風の刃を飛ばせます」
「どうやればいいんだ?」
「頭の中で想像するだけでいいようです」
ロゼンは顎にそっと手を当てた。
「つまり、魔法と同じ原理か」
カイレンは肩を落とした。
「ウチは魔法が使えないっす」
「カイレン、こいつは魔法と原理が同じだけで、魔法とは異なる」
フィリアが笑顔で頷いた。
「はい」
カイレンは顔を上げた。
「ウチでも使えるんっすか?」
「はい」
「やる気が出てきたっす!」
カルロスが一歩前に出た。
「フィリア、オレには何かないのか?」
フィリアは首を横に振った。
「ありません」
カルロスは息を吐いた。
「ロゼン、カイレン。折れた剣はどうしますか?」
ロゼンは首を横に振った。
「思い出が詰まっているから、持っておくよ」
カイレンは腕を組んだ。
「ウチもいいっす」
ロゼンは剣を交換し、折れた剣を風袋に入れた。
カイレンは曲刀を手にして止まった。
「これ、どうやって身に着ければいいんっすか?」
カルロスが言った。
「腰の後ろだ。安定する」
カイレンは言われた通りにした。
風袋に折れた剣を入れ、外套を捲り上げて垂らした。
「名残惜しいが、行くか」
「ああ」
「フィリア、またっす」
フィリアは小さく手を振り、三人は革新工房を後にした。




