第63話 仲間、そして好敵手
——大時計の鐘が昼を告げた。
アルヴィンは咳払いをひとつした。
「明日、本日学んだことを試験する。午後は自習にする。各自励むように」
訓練室を後にしたアルヴィンの背を、カルロスは追った。
「アルヴィン指揮官、質問の許可を願います」
アルヴィンは足を止め、振り向いた。
「カルロス金兵、質問を許可する」
カルロスは姿勢を正した。
聞いてはならないとわかりながらも声を振り絞った。
「オレたちが十二聖徒に勝てなければ、この座学自体、意味がありません」
アルヴィンはカルロスを見据えた。
「貴様の疑問は最もだ。だが、それで中止にしていい理由にはならない」
淡々とした口調で告げた。
「貴様らに重荷を背負わせていることは重々承知している」
息を吐いた。
「我々は大人になっても諦めが悪いのだよ」
眉間を寄せた。
「貴様らが負けて文句を言う奴がおれば、俺がぶん殴ってやる」
目尻を下げて口元を緩めた。
「不安に思う気持ちはわかる。だが、勝負する前に負けてどうする」
カルロスは見抜かれていることを知り、半歩後ろへ下がった。
すぐに姿勢を正し、顔を引き締めた。
「アルヴィン指揮官、ありがとうございます」
「うむ。明日の試験も励むように」
アルヴィンは踵を返し、その場を後にした。
カルロスはアルヴィンの背に敬礼をした。
ロゼンとカイレンがやって来た。
「カルロス、アルヴィン指揮官と何を話していたんだ?」
カルロスは姿勢を正した。
「ちょっとした世間話だ」
「そっか。メシに行こうぜ」
「ああ」
三人は食堂へ向かった。
「ジークハルトにも声をかけたが、首を横に振られてしまった」
「オレたちに無理に合わせる必要もないしな」
食堂に到着した。
三人はトレイに料理を並べ、イスに腰を下ろした。
カイレンは飢えた獣のようにガツガツと食べ始めた。
カルロスは水を一口飲んでから二人に尋ねた。
「そういや、お前ら何歳だ?」
ロゼンは咀嚼しながら答えた。
「16だ」
カイレンは無我夢中で食べていた。
代わりにロゼンが答えた。
「カイレンは15だ」
「オレは21だ」
「急にどうしたんだよ」
カルロスは二人を一瞥した。
「だから、お前らには負けるわけにはいかない」
ロゼンがカルロスを見据えた。
「俺は初めからそのつもりだったけどな」
ふっと、二人は笑った。
カルロスが提案した。
「試験の結果で勝負するのはどうだ?」
ロゼンは首を傾げた。
「試験って一体何をするんだよ」
「今日の復習だな。問題用紙と答案用紙が配られる。この時、答案用紙に名前を書き忘れるな」
「つまり、答案用紙に問題用紙の答えを書いていくのか」
「ああ」
カルロスは肉料理を口に運んだ。
「オレの予想では、この試験の結果で隊長が決まると思う」
カイレンが自信満々に言った。
「ウチが一番っす」
ロゼンは横目でカイレンを見た。
「どこからその自信が湧いてくるんだよ」
カイレンは快活に笑った。
「ウチにもわからないっす」
「じゃあ、わからない箇所があっても教えなくていいな?」
次の瞬間、カイレンはロゼンの片手を掴んで引っ張った。
「さっきのは冗談っす! 見捨てないでほしいっす!」
「わかったから落ち着け。カイレン、聞いているのか」
カイレンは渋々頷き、手を離した。
ロゼンは息を吐いた。
「カイレン、俺がすべて教えては意味がない。まずは自分の力だけでやってみろ」
「はいっす」
——三人は食事を済ませた。
勝負を挑まれた以上、負けるわけにはいかない。
その後、ロゼンとカイレンは、ロゼンの部屋で自習をして過ごした。
カイレンはエレメンティアの地図を丸暗記しており、これにはロゼンも驚きを隠しきれなかった。
ロゼンに理由を聞かれたカイレンはこう答えた。
「ヴェラの森に比べれば単純だったっす」
夕食を済ませ、各々が自由な時間を過ごした。
そして、消灯時間が回り、就寝した。




