表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法は嘘をつく ―賢者が残した遺産―  作者: 虚空小白
第二章:悪魔を統べる王
61/70

第59話 合同訓練・後編

 ロゼン、カイレン、カルロス、フィリアが食事をしていると、ヴェルナー副長が来て、合格者の名前を読み上げた。


「——名前を呼ばれなかった者は翠玉級です。金剛石級、紅玉級だった者は、寮の荷物を纏めて翠玉寮に引っ越してください」


 一部の者は、肩を落とした。

 その中には、歯を噛みしめ、肩を震わせるギルベルトの姿があった。


「名前を呼ばれた者は、一三〇〇(ひとさんまるまる)までに競技場に集まってください」


 ロゼンはカルロスに尋ねた。


「一三〇〇って何だ?」


「13時ちょうど。午後1時って意味だ」


 カルロスは懐中時計で時間を確認した。


「あと30分あるな」


 ロゼンは懐中時計に目をやった。

 二枚の羽が交差した紋様が刻まれていた。


 カルロスがロゼンの視線に気づき、懐中時計を見せた。


「この懐中時計は、ハウンドの身分証明にもなっている」


 胸元のポケットにしまった。


「オレはお前らより早い時期にハウンドになった」


 一拍置いて続けた。


「精密機械だからな。生産に時間がかかっているんだろう」


 ロゼンは首を縦に振り、二人は食事を再開した。


 ——午後1時。

 競技場には訓練生29名が集まっていた。


 クラントが壇上に上る。

 全員を一瞥し、冷笑を浮かべた。


「魔物あるいは魔獣を討伐した者を金剛石級にする!」


 どよめきが広まった。


「これは強制ではない。自信がない者は辞退して構わない」


 一拍置いて続けた。


「ただし、紅玉級として扱わせてもらう」


 しばしの沈黙。

 やがて一人、また一人と辞退し始めた。


 カルロスはロゼンに質問を投げかけた。


「ロゼンは辞退しないのかよ」


 ロゼンは拳を握り締めた。


「俺は魔獣を一度だけ見たことがある。あの時、魔獣を一撃で倒した十二聖徒がいた」


 カルロスは驚愕の表情で口を半開きにした。


「正気か。もしかしたら、死ぬかもしれない。それでもやるのか」


 ロゼンは口角を釣り上げた。


「力の差を知るのにちょうどいい。だから、残ることに決めた」


 横目でカイレンを見た。


「カイレン、無理して付き合わなくてもいいぞ」


「試練の洞のヌシより強いんっすかね? わくわくするっす!」


 カルロスは歯を嚙み締めたその瞬間——自身の頬を殴りつけた。


 二人は目を見開いた。


「カルロス、何してんだよ」


 カルロスは右の頬を腫らし、切れた唇から流れた血を拳で拭き取った。


「保身に走ろうとしたオレ自身にムカついた。それだけだ」


 ロゼンは何も言えなかった。

 カイレンも、口を閉ざしたままだった。

 カルロスの目に、迷いは残っていなかった。


 クラントは冷笑を浮かべた。


「5名も残ったか。ジークハルト・ヴォルフラム、ミレイユ・ダグランド、カルロス・ナート、ロゼン、カイレン。諸君の覚悟を試させてもらった」


 淡々とした口調で続けた。


「諸君を金剛石級に認める。魔物あるいは魔獣が出現した際には出動してもらう」


 微笑を浮かべた。


「ミレイユ・ダグランド、カルロス・ナート、ロゼン、カイレン。4名は寮で荷物を纏め、金剛寮に引っ越しの準備をしたまえ」


 ロゼンは灰色の髪で長身の男に目をやった。


「あいつは?」


「ジークハルトだ。剣で魔物を討伐した実績がある。無口で何を考えているのかわからないって話だ」


 ロゼンは考える仕草をした。


「なぜクラント局長は、ジークハルトを指名せず、俺たちに声をかけたんだ」


 カルロスは肩を竦めた。


「人が斬れないって話だ」


「なるほどな」


「なあ、そろそろ部屋を片付けようぜ」


 ロゼンは首を縦に振った。


「ああ。つい考え込んでしまった」


 三人は荷物を纏め、折り畳んだ外套を寮長に渡した。


 寮長は微笑んだ。


「少し寂しくなるわね」


「お世話になりました」


 カルロスが敬礼し、二人もそれに倣った。

 寮長も敬礼し、ふふっと笑った。


「頑張ってね」


 三人は紅玉寮を出て、金剛寮へ向かった。


「金剛寮は一人部屋らしいぜ」


「へぇー」


「嬉しくないのか?」


「少し寂しくなるな」


 ふっとカルロスが笑った。


 三人は金剛寮に入り、寮長に挨拶をした。


「今日からお世話になります」


 寮長はメガネをかけ直した。


「寮長のグレーテ・ヴィントラーと申します」


 一拍置いて続けた。


「消灯時間は夜9時です。洗濯物は、わたくしが洗ってアイロンをかけてお渡しします」


 三人を一瞥し、続けた。


「部屋の清掃もお任せください。ゴミと思われるものは処分しますので、無くなっていた場合は、お声がけください」


「カルロス・ナート様は201号室、ロゼン様は202号室、カイレン様は302号室をお使いください」


 随分扱いが違うんだな、とロゼンは思った。


 三人は各々に割り当てられた部屋へ向かった。


 部屋には、シャワー室とトイレが備え付けであり、軽い運動ができそうなほど広い空間だった。


 ロゼンは洋服タンスから白い外套を取り出し、身に着けた。


 風袋を見つめた。


「そういや、カイレンが俺の風袋を欲しがっていたな」


 マーニの風袋を取り出した。


 腰を下ろし、荷物整理を始める。

 マーニの遺品をカバンに詰め、ロゼンの私物や形見の剣とともに、綺麗な風袋に入れていく。


 カイレンの衣類や毛皮を自身の風袋に入れ、それを綺麗な風袋に突っ込み、腰に身に着けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ