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魔法は嘘をつく ―賢者が残した遺産―  作者: 虚空小白
第二章:悪魔を統べる王
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第57話 革新工房の技師

 翌日。

 ロゼン、カイレン、カルロス、フィリアの四人は朝食を済ませた。


 カルロスはフィリアに声をかけた。


「オレたちは革新工房に行くか、フィリアはどうする?」


「私はミスライルの研究を続けます」


 ロゼンを一瞥した。


「私は、私の方法で答えを見つけ出したいんです」


 指を絡ませて微笑んだ。


「ロゼンのおかげで視野が広がりました」


「わかった」


 カルロスは頷き、ロゼンとカイレンを一瞥した。


「オレたち三人で革新工房に行こう」


 四人はトレイを返却し、フィリアと別れて革新工房へ向かった。


 カルロスはロゼンとカイレンに尋ねた。


「二人は使いたい武器はあるのか?」


 ロゼンは外套の上から形見の剣にそっと触れた。


「同じ剣がいい」


 カイレンは笑った。


「ウチも同じ剣がいいっす」


「使い慣れた武器を選択するのはいいが、オレは自分に合った武器があると思うがな」


 熱した鋼のにおいが漂い、金床を叩く音が響き渡る。

 においと音の先には工場があった。


「あれが革新工房だ。結構広いだろう」


 ロゼンは頷いた。


「広いな。鍛冶師の工房を想像していた」


 革新工房の出入口の前で緑の髪の男が作業着を纏っていた。

 男は糸目で三人を見て、笑みを浮かべた。


「革新工房へようこそ」


 男はロゼンの手を取り、握手した。


「ボクは革新工房の責任者兼技師のフェリクス・グラナード。ミスライルの鉱石の件、聞いているよ。本当にありがとう」


 フェリクスが目を少し開け、ロゼンに質問を投げかけた。


「ロゼン、キミは剣のどの部位に魅力を感じる?」


「……は?」


 フェリクスは顔を近づけた。


「胸か? 尻か? 恥ずかしがる必要はない」


 ロゼンは横目でカイレンを見た。

 見えない圧を感じつつ言葉を振り絞った。


「……首?」


 ロゼン自身、何を言っているのかわからなかった。


「首!」


 フェリクスは目を細め、その口調が次第に熱を帯びる。


「首は柄の付け根。刀身の生命線とも呼べる場所。柄から伝わる力を静かに受け止め、そのすべてを刃へと滑らかに送り出す。斬撃のたび最も激しい負荷を受けながら、それでもなお美しい曲線を保ち続ける、繊細でありながら強靭な境界だ。人でいえば首筋のように、しなやかさと危うさを併せ持つこの部位が傷つけば、剣はその本来の力を失ってしまう」


 手を離し、声を上げて笑った。


「ロゼン、キミを歓迎するよ」


 ロゼンは空笑いした。


「さあ、中へ案内しよう」


「カイレンには聞かないのか?」


 フェリクスは頷いた。


「以前、苦情を言われてね」


 ロゼンは首を縦に振って聞き流した。


 四人は革新工房に入った。

 フェリクスは踵を返し、ロゼンとカイレンに言った。


「二人の剣を見せてくれるかな」


 二人は折れた剣を抜き、フェリクスに見せた。


 フェリクスは眉を寄せた。

 ロゼンの剣を360度観察し、返した。

 カイレンの剣も同様に観察し、返した。


「キミたちの癖はわかった」


 フェリクスは一拍置いて続けた。


「二日後、来てくれるかな」


 フェリクスは不敵な笑みを浮かべた。


「徹夜で剣を仕上げるよ。鋼は冷めないうちに打てってね」


 そのまま奥へ向かってしまった。

 三人は顔を見合わせた。


 カルロスは咳払いをひとつした。


「これから競技場で合同訓練がある」


 カルロスは大時計に目を向けた。


「合同訓練……?」


「歩きながら説明してやる」


 カルロスが歩き出し、二人は後に続いた。


「今の序列は暫定的なものだからな」


 カルロスは一拍置いて続けた。


「この合同訓練で序列が確定する」


 ロゼンは質問を投げかけた。


「俺たちも序列が変わるのか?」


 カルロスは冷笑を浮かべた。


「ああ。降格して翠玉級になる可能性はあるかもな」


 カイレンが疑問を口にした。


「フィリアはどうなるっすか?」


「今から他人の心配か」


「気になるっす」


「ミスライルの研究者だからな。オレたちとは違って、合同訓練も免除されるはずだ」


 カイレンは歯を見せて、にかッと笑った。


「良かったっす」


「合同訓練が終わった後、訓練室で座学を受ける」


 カルロスは二人に釘を刺した。


「生死に関わるから居眠りするなよ」

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