第48話 勝者一人と敗者二人
三人は食事を済ませ、カルロスが言った。
「洗濯についてだが、シャワー室の隣の部屋で洗濯機を使う」
「洗濯機……?」
「衣類を入れた後、洗濯機に隣接した踏板を回転させることで、自動で洗ってくれる上に、乾燥までしてくれる」
ロゼンは眉を寄せた。
「それは、どういう原理で動いているんだ?」
「発電機の踏板を回転させることで電気が発生する。電気の力で動いていると聞いたが」
ロゼンは考える仕草をした。
だが、考えてもわからなかった。
カイレンが笑った。
「よくわからないけど、面白そうっす」
「行くか。頭で考えるよりも見たほうが早い」
「それもそうだな」
「はいっす」
カルロスは立ち上がり、トレイを持った。
「食べ終わった食器を片付けるのは決まりになっている。指定された場所に置いておくだけでいい」
ロゼンとカイレンも立ち上がり、トレイを手にした。
ロゼンは青い髪の女性がいた席に目を向けた。
食べ残した料理がそのままになっていた。
カルロスがロゼンの横顔を見て言った。
「もしかしたら、また戻ってくるかもしれない」
カルロスはトレイを置きに向かい、二人は後に続いた。
紅玉寮に戻り、着替えを用意して、シャワーを浴びる。
ロゼンとカルロスは男性専用、カイレンは女性専用のシャワー室を使用した。
三人は洗い物を手に持ち、洗濯室に入った。
壁際に箱型の器械がずらりと並び、その隣には跨って漕ぐ発電機が設置されていた。
ふっとカルロスが笑った。
「勝負しようぜ」
「勝負?」
「ああ。もし、この三人で何かすることがあれば、そいつがリーダーになるってのはどうだ?」
「やるっす!」
ロゼンは息を吐いた。
「こんなことで決めていいのかよ」
カルロスは洗濯機に洗い物を入れた。
「こういうことは上官が決める」
蓋を閉め、発電機に跨り、取っ手を握った。
「だが、すべて決めるわけではない。時には任されることもある」
ロゼンは渋々納得し、カイレンは笑顔で頷いた。
二人も洗濯機に洗い物を入れ、発電機に跨った。
「三、二、一、零の合図で始める。いいな?」
「ああ」
「はいっす」
「三」
カルロスは踏板に片足を乗せた。
「二」
カイレンは座り直した。
「一」
ロゼンは取っ手を握り直した。
「——零!」
三人は同時に踏板を漕いだ。
数分が経過した。
ロゼンは小刻みに動く洗濯機を横目に見た。
「カルロス、まだ終わらないのか」
「ああ、まだかかる」
十分後。
ロゼンは息を切らせながら言った。
「シャワーを浴びた後に、汗をかくって……矛盾してないか」
「ああ。オレもそう思う」
さらに数分が経過した。
ロゼンとカルロスは無言で踏板を漕いでいた。
次の瞬間、鐘の音が鳴った。
一台の洗濯機が停止した。
カイレンは発電機から降り、洗濯機の蓋を開け、手を突っ込んだ。
「ちゃんと乾いてるっす」
勝者はカイレン。
二人は無言で首を縦に振り、一心不乱に踏板を漕いだ。
勝負を有耶無耶にするつもりだった。
だが、カイレンは口角を釣り上げた。
「ウチがリーダーっすね」
ロゼンは笑顔を作った。
「忘れていたが、俺たちは走って疲れていたんだ」
「ああ、そういえばそうだったな」
カイレンはしばし考えた。
「じゃあ、明日もやるっす」
「いや、お前がリーダーでいいよ」
「ああ、異論はない」
二人はこれ以上の醜態を晒すことができず、渋々認めた。
カイレンは胸元をトンと叩いた。
「ウチに任せるっす」
ロゼンは息を吐き、カルロスは無表情のまま顔を伏せた。
制服と外套にアイロンをかけ、折り畳んで部屋へ戻った。
ロゼンが剣の手入れをしているのを見て、カルロスが言った。
「大切に扱っているんだな。片方は刃こぼれ一つしていない」
「剣は父さんからもらった。片方は妹の形見だ」
カルロスは目を細め、ロゼンの剣を見つめた。
「明日、革新工房に案内してやる」
「革新工房?」
「洗濯機を作ったのが、革新工房の技師だと聞いている。興味が湧かないか」
ロゼンは笑顔で頷いた。
「また拗ねられても困るから、カイレンも誘ってやろう」
ロゼンは剣の手入れを済ませ、二人は就寝した。




