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魔法は嘘をつく ―賢者が残した遺産―  作者: 虚空小白
第二章:悪魔を統べる王
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第47話 相性

 ロゼンとカルロスは競技場の外周を走っていた。

 ロゼンは眉を寄せた。


「なあ。これ、意味があるのか」


「お前がクラント局長から、どこまで聞いているのか知らないが」


 カルロスは呼吸を整えて続けた。


「オレはエレメンティアの古城まで走ることを想定している」


「なるほどな。俺たちハウンドが知性植物を殺しながら道を開くってことか」


「そういうことだ。エレメンティアでは、聖女様の力が必要不可欠だ」


 カルロスは息を吐いた。


「ハウンドは使い捨ての駒にされるのかもしれない」


 速度を上げて言った。


「そうならないために体力をつけておくんだ」


 ロゼンはカルロスの隣に並んだ。


「使い捨ての駒はいくら何でも考え過ぎだろう」


 カルロスはさらに速度を上げた。


「忘れたのか。すでに浄光教はハウンドを引き抜いて、力を削いでいる」


 ロゼンはカルロスを追い抜いた。

 言い返すことができなかった。


 その後、互いに無言で追い抜きながら走り続け、大時計が夜の時間を告げた。

 二人は足を止め、乱れた呼吸を整えながら笑みを交わした。


「ロゼン、気分はどうだ?」


 ロゼンは深呼吸をひとつした。


「軽くなった気がした」


 カルロスは頷いた。


「食堂に案内する」


 二人は校舎一階の食堂へと向かった。


「そういえば、言うのを忘れていた。食堂には金剛石級専用の席がある。問題になるから絶対に座るなよ」


 ロゼンの脳裏にカイレンの姿が過った。


「カルロス、そういうことは先に言ってくれ。カイレンは何も知らない」


 カルロスは慌てて走り出し、ロゼンは後を追った。


 食堂は金剛石級専用区画と一般区画で分けられていた。

 壁際にさまざまな料理が並べられ、各々が自由に食べられるようになっていた。


 二人が食堂へ駆け込んだ時、カイレンは一般区画のテーブル席で一人で食事していた。


「どうやら同室の奴が説明したようだな」


「安心したら腹が空いたな」


「トレイがあるから、食べたい料理を載せていけ」


「おう」


 カルロスは肉や野菜など栄養バランスを考えて料理を選んだ。

 一方ロゼンは肉料理ばかりトレイに載せていた。


「ロゼン、そんなに食べられるのか?」


「カイレンの分もある。何か様子がおかしかったからな」


 カイレンは料理を一皿しか取っておらず、手も付けずにため息をついた。

 二人が席に座ると、カイレンが顔を上げた。

 今にも泣きそうな表情をしていた。


「カイレン、どうした?」


「『静かにして』と言われたっす」


 ロゼンはカイレンの前に肉料理の皿を一枚置いた。

 カイレンはそれを一口で食べた。


「同室の子に言われたのか?」


 カイレンは咀嚼しながら首を縦に振った。

 カルロスは息を吐いた。


「別に無理して仲良くなる必要はない。喧嘩になる前にやめておけ」


 ロゼンはもう一皿置いた。


「カイレンが金剛石級の奴と揉めてなくて安心したけどな」


 カイレンは窓際で一人で食事をしている青い髪の女性に目を向けた。


「同室のあの子に教えてもらったっす」


 姿勢を正し、料理を頬張った。


「カルロス、何か知ってるか?」


 カルロスは口の中のものを飲み込んでから答えた。


「校舎には蔵書がある。何度か見かけたことがあるな」


「部屋でもずっと本を読んでいたっす」


 ロゼンは追加で一皿置いた。


「カイレンが来る前は一人の空間だったから、読書するには最適だったんだろうな」


「そういう二人は何をしていたんっすか?」


「競技場を走っていた」


「ズルいっす。次はウチも呼んでほしいっす」


 そう言いながら、カイレンは料理を一口で平らげる。


「次は呼びに行くから部屋で待っていろ」


 カイレンは咀嚼しながら笑顔で頷いた。

 ロゼンはトレイを置き、席を立った。


「カルロス、カイレンに説明してやってくれないか。俺は自分のメシを取ってくる」


「いいだろう」


 ロゼンは青い髪の女性の元に近寄り、声をかけた。


「カイレンが迷惑をかけてすまなかった」


 女性は振り向き、ロゼンの顔をしばし見つめた。

 顔を赤くし、視線を彷徨わせた。


「別に、迷惑ではないでしゅ」


「そっか。でも、困ったことがあれば教えてくれると助かる」


「はひ」


 女性は目を泳がせた。


「失礼しましゅ」


 ロゼンを押し退け、足早に出ていった。

 ロゼンはその背中を見届け、首を傾げた。


「カイレンが迷惑に思われてないのなら、今はそれでいいか」


 料理を選び、席に戻った。


「カイレン、同室の子だが、迷惑ではないと言っていたし、多分大丈夫だと思う」


「聞いてくれたんっすね。ウチは嫌われているかと思ったっす」


 ロゼンは卵料理を食べながら言った。


「ただ、様子が少しおかしかったことが気がかりだがな」


 カルロスが水を一口飲んで言った。


「もしかしたら、会話するのに慣れていないのかもな」


 一拍置いて続けた。


「こればかりは本人の問題だからな」

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