第45話 腐れ縁
二人は食事を済ませ、南門へ向かった。
南門を抜けると、赤い外套を纏った男が腕を組んで立っていた。
ロゼンは足を止めた。
帝都ヴァルトクローネで別れたカルロス。
仲間ではなかったが、ロゼンとは少なからず因縁のある相手だった。
カルロスは目を細め、二人を一瞥した。
ロゼンは反射的に身構える。
「ロゼンとカイレンだな。ついてこい。案内してやる」
カルロスが踵を返し、歩き始める。
ロゼンは小さく息を吐いた。
「ロゼン、早くいくっす」
「ああ」
二人は後に続いた。
「まず、初めに話しておくが、オレもお前たちと同じ理由で紅玉級のハウンドになった」
「あんたがハウンドになった理由はあるのか?」
カルロスは足を止め、空を見上げた。
「母親の伝染病を治すのと引き換えにハウンドになった。役目を終えれば帰っていいとも言われた。クラント局長には今でも頭が上がらない」
振り向き、聞き返した。
「そういうお前たちは?」
二人は胸を張った。
「歴史に新たな発見をした英雄になることだ」
「ウチは強くなるためっす」
カルロスは声を上げて笑った。
「何がおかしいんだよ」
「そうっす」
カルロスは笑うのをやめ、微笑んだ。
「別にお前たちのことを笑ったつもりはない。ただ、以前のオレには余裕がなかった」
拳を握り締めた。
「きっと、あの少女が変えてくれたんだろうな」
踵を返し、歩き始める。
「案内を続ける」
三人はハウンド養成学院の出入口の前で足を止めた。
正面に四階建ての校舎、そして奥に聳え立つ大時計が目についた。
「一階は食堂になっている。大時計の鐘の音が時間を知らせてくれる」
カルロスが中に入り、二人は後に続いた。
「二階は翠玉級、三階は紅玉級、四階は金剛石級の訓練室になっている。用がない限り、他の階には立ち寄るな」
校舎の下を通り抜けると競技場が広がっていた。
「ここで、さまざまな訓練を行う。今はそれしか聞かされていない」
カルロスは左へ向きを変え、競技場を抜け、階段を三段上って足を止めた。
「この寮で宿泊してもらう。三棟並んでいるが、手前の白い寮は金剛石級、その奥の赤い寮は紅玉級、一番奥の青い寮は翠玉級の寮になっている。それぞれの寮には、寮長と呼ばれるハウンドが在中している。何か問題があれば寮長に言え」
「寮長も俺たちのことは知っているのか?」
カルロスは顎にそっと手を当てた。
「わからない。だから、迂闊に口にするなと言われている」
一拍置いて続けた。
「クラント局長は浄光教に情報が漏れることを恐れている。ハウンド内に内通者がいると考えているんだろうな」
「じゃあ、俺たちがここにいるのはまずいんじゃないのか」
「すべてのハウンドが引き抜かれたわけではない。現に何名かは生活している」
カルロスは二人に顔を近づけた。
「オレたちは常に監視されている。少しは考えてから発言しろ」
姿勢を正し、息を吐く。
「寮に案内する」
赤い外壁の寮に入ると、カウンターに30過ぎの女——寮長が座っていた。
「寮長、新入りを連れてきた」
寮長は柔らかい口調で言った。
「ご苦労さま。ロゼンはカルロスと同室だよ。カイレンは303号室、同室の子とは仲良くしてね」
カイレンがロゼンの腕を掴んで引き寄せた。
「ウチはロゼンと同じ部屋がいいっす」
寮長は口元に手を当てて微笑んだ。
「あら? そういう関係だったの。でも、これは規則で決まっているのよ」
「違う!」
「違うっす!」
声が綺麗に重なった。
寮長は首を傾げた。
「違うの?」
ロゼンはカイレンを引き剥がし、逃げるようにカルロスに言った。
「部屋に案内してくれ」
「ああ」
二人が走り出し、後ろから「置いていかないでほしいっす」とカイレンの声が響いた。
「オレはてっきりそういう関係だと思っていたが違ったのか」
「ただ腐れ縁だ」




