第42話 壁を越えた先で
第二次試験として、43名は場所を移し、外に作られた巨大な迷路の前に集まっていた。
黒い制服を身に纏った黒髪の男が現れ、43名の前で足を止めた。
男の年齢は30過ぎ。前髪を残さず後ろへ撫で上げて束ね、引き締まった顔つきで43名を一瞥した。
男はロゼンの隣にいた男を指さして言った。
「金髪の男、お前は失格だ」
指名された男は言い返した。
「何で俺が失格なんだよ!」
「先ほど欠伸をしていた。やる気がない者はハウンドに必要ない」
「そんな理由で納得できるか! 責任者を出せ!」
「ワタシがハウンド管理局で代表を務める局長のクラント・エーレンだ」
クラントは冷たい眼差しを向けた。
「番号札を置いて立ち去れ」
「くそっ、こっちから願い下げだ!」
男は番号札を地面に叩きつけ、立ち去った。
クラントは咳払いをひとつ挟み、第二次試験の説明を始めた。
「諸君には、ワタシの後ろにある迷路に入り、出口を目指してもらう。ただし、行き止まりになっている入口も存在する。先に警告しておくが、魔法で壁を乗り越える行為は禁止している。そして、全員が入口を選んだ後、結界を張る。この結界は時間経過とともに出口へ向かって移動する。結界に触れると、迷路の外へ弾き飛ばされるようになっている。出口に辿り着いた者だけを合格とする」
全員を一瞥してから続けた。
「番号札1番から順番に入口を選択しろ」
ロゼンの番になり、隣にいるカイレンに言った。
「出口で待ってるからな」
「はいっす」
ロゼンは勘を頼りに、左から三つ目の入口を選択した。
カイレンは正面の入口を選んだ。
全員が配置につき、クラントが声を張り上げた。
「第二次試験、開始!」
全員が迷路の中に入った。
すぐに結界が張られる。
カイレンは全速力で直進した。
だが、突き当りは壁だった。
カイレンは壁を見上げた。
自身の背丈の倍はあろう高さ。
カイレンは三角跳びのように壁を蹴って上ろうとした。
しかし、寸でのところで手が届かずに落下した。
ブーツを脱ぎ、歯で挟み、再度試みる。
壁を蹴り、右手を伸ばした。
右手の指が引っかかり、反対の手も伸ばす。
壁を蹴ってよじ登った。
足場10センチの壁の上を走り、カイレンはそのまま出口へ向かった。
一方、ロゼンも壁に阻まれていた。
「くそっ、こんなところで諦められるか。要は、魔法で壁を乗り越えなければいいんだろう」
斜め右を見て、詠唱を始めた。
「焔よ、剣となりて我が道を阻む障害を断ち切れ」
ロゼンの前に炎剣が現れ、壁を斬り付け、消滅した。
隙間から向こう側が見えていた。
続けて斜め左を見て魔法を唱える。
「灼熱よ、剣身に宿り、我を遮るすべてを焼き断て」
再び炎剣が現れ、壁を斬り付けて消える。
さらに詠唱する。
「蠢く大地よ、障壁を呑み込み、我が道を解き放て」
正面の壁がずるずると地面に引き摺り込まれる。
ロゼンは出口へ向かった。
部下からの報告で一部始終を聞いたクラントは微笑を浮かべた。
「クラント局長、彼らは出口へ辿り着きましたが、どうしますか?」
「その二人を面談に通せ。ワタシが合否を言い渡す」
副長ヴェルナー・ホルストに案内され、ロゼンとカイレンは部屋に入った。
クラントは窓辺に立ち、外を眺めていた。
「クラント局長、二人を連れてきました」
「ああ、わかっている」
クラントが振り向く。
その目に温度はなかった。
「お前たちは——失格だ」




