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魔法は嘘をつく ―賢者が残した遺産―  作者: 虚空小白
第一章:失格者の烙印
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第40話 家族の定義

 二人は朝食を済ませ、ハウンド管理局へ向かった。

 ロゼンと並んで歩くカイレンは旅装束を纏っていた。


「カイレンは話せるようになった」


 カイレンは笑った。


「それもこれもロゼンのお陰っす」


 何にでも「です」を付けて喋っていた頃の名残が、いつしか「っす」に訛って定着していた。


「今日から魔法のことを教えてやる」


「本当っすか?」


「ああ。人一倍警戒心の強いお前は、人を見るとすぐに剣を抜こうとする。だから、教えられなかったんだ」


「その件に関しては、ウチは反省してるっす」


 カイレンは自身の頭に手を当てて笑った。


「あの頃のロゼンは怖かったっす。拳骨のせいで頭が割れるかと思ったっす」


 ロゼンは咳払いをひとつした。


「一応確認しておくが、お前は魔法を覚えたらヴェラの森に帰るのか?」


 カイレンは腕を組んで「んー」と唸った。


「帰りたくないのか?」


「いや、帰りたいっすよ。ただ——」


 苦笑いを浮かべて続けた。


「家は狭いし、寝心地は最悪っす。虫にも刺されるし、あの毛皮も臭うっす。一番の問題は、メシが不味いことっす」


 ロゼンは思い出して笑った。


「素材本来の旨味を活かしたメシだったな」


「だから、今はまだ帰るつもりはないっす」


 カイレンはロゼンの横顔を見つめる。


「それに、ロゼンもヴェラの民っす。ヴェラの民は家族っす。家族を残して帰ることはできないっす」


「まだまだ先になりそうだから安心しろ」


「それ、ウチは喜んでいいんっすか」


 ロゼンはハウンド管理局のドアに手を伸ばす。


「今日もまた受付のお姉さんに睨まれるんだろうな」


 二人は中に入った。

 すると、カウンターには列が出来ていた。

 二人は顔を見合わせた。


「ご用件の方は列にお並びください」


 そう言われ、二人は列に並んだ。


「ロゼン、今日は様子が違うっす」


 ロゼンは周囲を観察した。

 全員が装備を身に着けているのを見て、口角を釣り上げた。

 ロゼンの番になり用件を伝えた。


「試験を受けに来た」


「承りました」


 受付は地図を広げて置いた。

 地図はアルテリア大陸のものだった。

 守護の鏡ルミナルディアから北上し、一節の距離に拠点が存在し、赤丸が印されていた。

 拠点の名は『第二鏡面璧ヴェルナート』。


「試験は二日後の朝に行われます。宿泊施設がございますので、野宿する心配はございません。ただし、食事はありませんので、各自で用意してください」


 ロゼンは踵を返し、カイレンに言った。


「外で待ってる」


「はいっす」


 ロゼンは外に出て、雲の流れを眺めながらカイレンが来るのを待った。


 十分後。

 ムスッとしたカイレンが出てきた。


「何かあったのか?」


「地図くれなかったっす」


「必要か?」


 カイレンは眉を八の字にした。


「迷ったら困るっす」


「北へ向かって道沿いを進むだけだ。地図が欲しいのなら、楽市露店で探せ」


 カイレンは口をへの字に曲げた。


「それ、さっき言ってほしかったっす」


「地図を手にしている奴がいない時点で気づくだろう」


 カイレンは渋々頷いた。


「食料を買ってから向かうぞ。『第二鏡面璧ヴェルナート』が、どういう場所なのか早めに知っておきたい」


「わかったっす」


 二人は馬車で市場へ向かい、買い物を済ませ、北門へ向かった。


 ロゼンの言う通り、すでに向かっている旅装束の男女らがまばらに見えた。

 二人は『第二鏡面璧ヴェルナート』へ向かって歩き出した。


「ロゼン、魔法のことを教えてほしいっす」


 ロゼンは考える仕草をした。


「俺が知る範囲で説明するが、魔法は大昔から存在していた。数百年前、大賢者オルディアスは火・水・風・地を『四理』に定義した。この時、魔法という言葉が生まれた。400年前、賢者ヴェルナートが炎・氷・雷を『三象』に定義した」


「賢者ヴェルナートは魔法の危険性を訴え、人に対して使うことを固く禁じたことを族長から聞いたっす」


「それもあるが、魔法には弱点があった」


「弱点っすか?」


「魔法を唱えるためには詠唱しなければならない。魔法は魔素を具現化して魔法にしている。そのため、どうしても動きを止めてしまう。さらに、この詠唱を読み解かれると通用しない」


「つまり、どういうことっすか?」


「四理には相性がある。火は水に弱く、水は風に弱く、風は地に弱く、地は火に弱い。これは例えだが、火の魔法で攻撃されるとわかっていれば、水の魔法を唱えて質量で圧し潰せばいい」


「そういうことっすか」


「魔素は地相の影響を受けて変わる。例えば、海は水の魔素の濃度が濃いため、火の魔法が使えない。だが、魔力が高ければ魔素を変換することができる。魔力が高ければ高いほど、魔素の変換速度が上昇する。魔力が高い者は、地相を気にせず魔法を唱えることができる。この魔力は産まれた瞬間から決まっている。どれだけ修練を積んでも変化しない。また、静電気を利用すれば、三象の雷の魔法を唱えることもできる」


 カイレンは額に手を当てながら言った。


「ロゼン、もういいっす」


 ロゼンは息を吐いた。


「これだけは覚えておけ。魔法は便利だが、万能ではない」

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