第35話 交差する想い
ロゼンが試練の洞から出てくると、族長とヴェラの戦士三人が笑った。
しかし、ロゼンの手に握られた剣を一瞥し、その意味を理解してすぐに笑みが消えた。
ロゼンは族長に牙を手渡して尋ねた。
「これでいいのか?」
族長は息を吸い、牙を高らかに掲げて叫んだ。
「Naitcone,ze bravalen Raven Nishel estal nalteal.ze Raven Maiten nalteal ze Raven Nishel.ze nalen estal,Losen!
(今日、勇敢なヴェラの戦士が誕生した。ヴェラの民は、この者をヴェラの戦士と認める。その名は、ロゼン!)」
カイレンが出てきて、獣の遠吠えのように雄叫びを上げた。
族長とヴェラの戦士三人は目を見開いた。
すぐにヴェラの戦士三人も雄叫びを上げた。
族長はロゼンに声をかけた。
「反対の者はいません。キミはヴェラの民に受け入れられました」
ヴェラの戦士四人が再び雄叫びを上げた。
「宴まで時間があります。少し休息を取りましょう。キミも疲れたでしょう」
族長がロゼンに耳打ちをした。
「僕が魔王ネクロヴァルと出会った日のことを話します」
姿勢を正して笑みを浮かべる族長に、ロゼンは頷いた。
「行きましょうか」
族長の後にロゼンは続いた。
「キミが剣を持っているのを見て、少し焦りました」
「この剣はマーニのものだ。仇を討っても意味がないことは理解している」
族長は一拍置いた。
「声に耳を傾けた者は、思い入れの強い人物の幻覚を見ます」
「マーニの姿をしていた。あいつが知らない言葉を使っても、それに反応していた。だから、俺が欲しい言葉をくれた」
ロゼンはマーニの剣に目を向けた。
「この剣を見た時、俺は足を止めていることに気づいた。少しのつもりだったが、つい甘えてしまった」
剣を握り締めた。
「俺の心が弱かったせいで、あいつの口から言わせてしまった」
「僕はそうは思いません」
ロゼンは族長の背中を見つめた。
「中で何があったのか知りませんが、キミはカイレンを殺さなかった」
族長は一拍置いて続けた。
「不老不死は肉体の成長が止まります。ですが、その内面は変化します。キミは正しい方向へ進んだ。それは、誰もができることではありません」
「一つ聞いてもいいか。ヴェラにはどういう意味が込められている」
「妻の名です。僕が不死になっても拒絶せず、生涯支えてくれた女性でした。僕は自分の名を忘れてしまいました。ですが、彼女の名だけは忘れたくありませんでした」
族長が家に入り、ロゼンも中に入った。
二人は腰を下ろした。
「それでは、本題に入りましょう」
族長は一拍置いた。
「彼と出会ったのは北部平原です。詳しい場所までは覚えていません。北部平原には侵入できないよう壁を築いていますが、当時は壊れている箇所もあったのです。僕たち一家はそこから中へ入り、歩いていました。すると、廃墟が現れたのです」
「廃墟……?」
「キミも聞いたことがありませんか。エレメンティアという国の名を」
ロゼンは目を見開いた。
「滅んだんじゃないのか」
「ですが、彼は確かに口にしました。彼以外、誰もいませんでした。エレメンティアが滅んだというのは間違いないでしょう」
族長は顔を近づけた。
「魔法で空を飛んだ日のことです。僕は上空から別れを惜しむようにエレメンティアを見たのですが——」
一拍置いて続けた。
「そこには、何もありませんでした」
族長は姿勢を正した。
「僕は用事があるので失礼します。キミが彼に会って何をするのか知りませんが、彼は悪人ではありません。それだけは保証します」
立ち上がり、ロゼンに言った。
「宴の準備ができるまで、しばし時間がかかります。時間になったら起こしますので、寝てください。目の下に隈ができていますよ」
族長が立ち去り、ロゼンは大の字で寝転んだ。
マーニの剣を握り締めた。
お前は復讐なんて望んでいないよな——ロゼンはマーニのことを考え、眠りについた。
——カイレンは獣肉を運びながら浮かない表情をしていた。
族長はカイレンに近寄り、声をかけた。
「Kailen,ze tiralen estal ze nalteal?
(カイレン、体の具合でも悪いのですか?)」
カイレンは足を止め、族長に言った。
「Losen nalteal ze tiralen estal.ze Nushial tambien nilen ze tiralen.
(ロゼンは不思議な力を持っていました。ヌシも動かなかった)」
「Losen nalteal ze tiralen estal ze nalteal.
(ロゼンは魔法を唱えたと思います)」
「nilen ze tiralen estal ze Kailen nalteal.zenomal ze Losen nalteal ze familien tiralen estal.
(なぜ、その力をカイレンたちに使わなかったのかわからない。そうすれば、ロゼンは家族を失うこともなかった)」
族長は顎にそっと手を当てた。
「ze tiralen estal 400 nalteal.ze Vernaten nalteal ze tiralen estal ze nalteal.ze tiralen estal ze Raven Maiten nalteal.ze 400 nalteal tambien ze tiralen estal.Losen nalteal ze Kailen Raven Maiten estal,nilen ze tiralen nalteal.
(400年前の話です。賢者ヴェルナートは魔法の危険性を訴え、人に対して使うことを固く禁じました。当時、魔法で大勢の人々が亡くなったからです。400年経った今でも守られている。ロゼンはカイレンたちが人だったので、使う意思がなかった)」
顔を伏せた。
「ze tiralen estal,ze tiralen nalteal ze nalteal.
(そのせいで、守るべき者を失ったのです)」
カイレンは息を吐いた。
「Kailen nalteal Losen ze Juugial.ze tiralen estal ze nalteal,ze tiralen estal ze nalteal.ze Losen tiralen estal ze nalteal.aber,Losen nalen ze Kailen nalteal.zenomal,nilen ze tiralen estal.
(カイレンはロゼンのことを害獣と呼んだ。祖先がやられたことを思うと憎しみが込み上げた。ロゼンの怒りは当然のものだった。でも、ロゼンはカイレンに何もしなかった。だから、わからないんです)」
族長は顔を上げ、微笑んだ。
「Kailen nilen ze tiralen estal.Kailen nalteal ze tiralen,ze Raven Maiten nalteal.
(カイレンは悪くありません。掟に従い、ヴェラの民を守ったのです)」
一拍置いて続けた。
「ze tiralen estal ze Kozuchal.nilen ze Kailen tiralen estal ze nalteal.aber,nilen ze tiralen nalteal.
(悪いのは、その掟を作ってしまった僕です。カイレンが行ったことを咎めるつもりはありません。ですが、二度とやらないでください)」
「Yalen.Kailen nalteal ze tiralen estal.
(わかりました。カイレンは宴の準備に戻ります)」
族長はカイレンの背中を見届け、ため息をついた。
不死は殺さなければ確認できない。外部の者に集落の居場所を知られると、また悲劇が生まれてしまう。
族長は空を見上げ、亡き妻に問うた。
「ze Raven Maiten tambien nalteal ze tiralen estal?
(ヴェラの民も変わるべきなのかな)」
答えの代わりに、風が吹いた。




