第11話 目的は一つ
受付が変わり、咳払いをひとつした。
「まずは、依頼の件ですが、ありがとうございます」
床に転がった魔獣の頭を一瞥する。
「ヴァーゲ様より、報酬をすべて同行者に渡すよう伝言を預かっております。お二人のお名前をちょうだいします」
「ソルだ」
「マーニです」
受付は書類を確認し、首を傾げた。
「ヴァーゲ様は、ソル様とマール様を同行者として選ばれております」
マーニは無理やり笑顔を作った。
「私のことです。訂正したはずなんですけど」
受付は再び魔獣の頭を一瞥した。
「虚偽でないことは明白ですので、ご安心ください。死骸の処理もお任せください」
「それなら俺がやったけど」
「お手を煩わせてしまい、申し訳ありません。ですが、現場を確認しなければなりません。知っての通り、魔獣の肉が腐ると猛毒が発生し、周辺の土地が汚染されてしまいます。地相の影響を受けてしまうため、すぐに金剛石級のハウンドを手配します。報酬をご用意いたしますので、少々お待ちください」
受付は足早に立ち去った。
「マーニ、金剛石級のハウンドってすごいのか?」
「うん。エレメンティアは北部平原にあるんだけど、壁を築いて監視しているのが守護の鏡ルミナルディアだよ。北部平原に足を踏み入れるためには、ルミナルディアのハウンド管理局で試験を受けて実力を証明しなければならない。序列一位階の実力者が、金剛石級だよ」
マーニは考える仕草をし、ソルを見た。
「ソルの魔力なら金剛石級も夢じゃないかもね」
「俺はこれからも剣で戦うからな」
「どうして?」
ソルは拳を握り締めた。
「俺はヴァーゲに手も足も出なかった。その上、手を抜かれていた。こんなんじゃ英雄になれやしない」
「ソルは私のわがままを聞いてくれた。私もソルのわがままを聞くからね」
「おう」
マーニはソルの拳に、そっと自分の拳を重ねた。
受付が報酬を乗せたトレイを持って戻ってきた。
「こちらが今回の報酬です」
銀貨8枚と、黒曜石と曹灰長石が一粒ずつ置かれていた。
受付が報酬の説明を始める。
「今回、森のヌシ討伐報酬として銀貨8枚をご用意しておりました。しかし、魔獣を討伐されましたので、追加報酬をお渡しします。魔物や魔獣は、禁忌指定の討伐対象です。発見された場合は、黒曜石を一粒。討伐された場合、今回は魔獣ですので、曹灰長石を一粒お渡しします。これらの輝石の換金は、ルミナルディアの口入屋で行っております」
マーニが小首を傾げた。
「ここで換金できないんですか?」
「申し訳ありません。そういう決まりになっております」
受付は顔を近づけ、小声で言った。
「ルミナルディアは北部平原を調査するために強者を募っています。自国に招くため、換金できる場所を一カ所にしたのです」
ソルが笑った。
「目的地は同じだし、いいじゃないか」
「そうね」
受付は姿勢を正した。
「ご理解いただけたようで何よりです」
マーニは報酬を受け取り、布袋に入れた。
「ソル様、マーニ様、一つだけご忠告申し上げます。ひと昔前は討伐対象の一部を持ち込むことで、その証明としていましたが、現代は容易に真偽を見抜くことができます。次回からは持ち込み不要です。ご理解のほどよろしくお願いします」
魔獣の頭に目をやった。
「そちらは金剛石級のハウンドに処理していただくので、そのままで結構です」
ふたりは頭を下げて、外に出た。
「怒られちゃったね」
「そうだな」
マーニがソルの手を掴んだ。
「診療所で診てもらうよ」
「もう平気だし、いいって」
「それは、診療所の先生が判断することだよ」
ソルは口をつぐんだ。
マーニの声に、有無を言わせない何かがあった。
ふたりは通りがかった人に診療所の場所を尋ね、礼を言ってから向かった。




