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百合チート持ちで異世界に転生したとか百合ハーの姫になるしかない!!  作者: 無色
白黒円卓編:黒

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2-142.リコリスとサクラ

 ほんの微かな揺れ、窓の外を流れていく夜の闇。

 私たちの間にあるのは沈黙だった。

 気まずさは無くて、下手をすればこのまま何時間だってこのまま座ってられそうな気さえする。

 そういうわけにもいかないのに。


「みんな強いね。あんなことがあったのに、もう前を向いてる」

「カッコいいだろ。頼もしくてさ。だから好きなんだよ」

「あれ以上強くなったら毎日手を焼きそう」

「大丈夫だろ。私の方が百倍みんなに手を焼かせるから」

「威張ることなのそれ」


 対面に座ってるのに視線は合わない。

 お互いに合わせようとしない。


「リコリスも、もっと強くなるんでしょ」

「まあな。宇宙天地と書いてリコリスと読ませるくらいには」

「キラキラネームすぎる」

「宇宙規模でも私の可愛さを表現するの難しくて困るよな」

「何それキモ」

「おい口を慎めよまだ上司だぞ」

「今さらじゃない?」

「それもそうか。お前反骨精神の擬人化だもんな」

「反骨精神らしく辞表とか書いて叩きつけてやってもいいんだけど?」

「いいや。形に残して楽しいもんじゃないし」

「そういう問題じゃなくない?」

「これからどうするか宛はあんの?」

「あると思う? でもまあ、うん。それなりに上手くやるつもり。伊達に秘書やってたわけじゃないから」

「結構大変だぞ。一から始めるの」

「ゼロじゃないから。"一"はもう、みんなからいっぱいもらってる」

「足りないだろって」


 リコリスはポケットから取り出したそれを放った。


「亜空のブレスレット……」

「退職金。必要なもんは大体入れといた。アホほど贅沢しても老後まで余裕で暮らせると思うから安心して」

「ふん!」

「おい投げんなぐわぁ人中に当たった痛すぎぃ!!」

「甘やかすな」

「お前が女の子である以上仕方ねーだろこっちは魂が女の子を庇護せよって叫んでんの!!」

「何のために辞めるのかわかんなくなる」

「退職金って言ったけどお金だけじゃねーんだよ! 服とか薬とかそういうのも入ってんの!」

「それは正直助かるけど」

「てか言っとくけどな、うち辞めても私と関わらないとか無理だからな!! お前が女の子で私が世界の中心である以上、何がどうあってもお前の人生には私という絶対的存在がつきまとうから!! 毎日電話しちゃうもんね!! えっちな自撮り送っちゃうもんね!! 夢枕にも立っちゃうし添い寝もしちゃうもんね!! てか空間転移で毎秒会いに行ってやっかんなざまーみろベロベロべ〜!!」

「そういうとこも含めてマジで嫌いだわ好きになる要素が素粒子単位で存在しない」

「私はサクラを構成する細胞の一つ一つが大好きだよ愛してる!!」

「知ってる」


 この先リコリスのことを好きになることはない。

 それでも、好意を向けられて少なからず嬉しく思ったのは事実だ。

 リコリスの言う"好き"が、今まで女に向けられていた行為とは全然別の物だったから。

 リコリスの"好き"には嘘が無い。

 誰よりも自分勝手なくせに、ちゃんと相手を尊重して、それでいてどこまでも本気。

 愛に対して素直な人。

 もしも私が私じゃなかったら。

 女に好かれるどうしようもない運命を背負ってなかったら。

 自分のことが好きだったら。

 そのときはもしかしたら……


「もうすぐドラグーン王国か」

「列車止まんないかなぁ。そしたらもっと長く居られるのに」

「後ろ髪引かれすぎでしょ」

「引き千切られそうだわ」

「リコリスがハゲたら笑い死にしそう」

「ハゲねーよ美少女の毛根ナメんな」

「どういうツッコミそれ。黙って見送るのがいい女なんじゃないの」

「無言の私ってミステリアスが加速しちゃわない?」

「ミステリアスを感じたことなんか一度だってない」

「サクラ」

「ん?」

「いつでも頼っていいからな」

「……今になってそういうこと言う?」


 私はつい吹き出した。

 百合の楽園(リリーレガリア)を辞めてもリコリスの影響力から抜け出すことは出来ないのと同じで、一度交わった運命から逃れることもまた出来ない。

 チェスティと関わった私は、また何かしらの機にあいつと関わることになるだろう。

 目を背けることは許されない。

 ここから先はリコリスに守られて導かれるだけじゃない、私が自分で選ぶ運命の道のりだ。

 失敗も後悔も受け入れて進む。

 そう決めた。


「大丈夫。私も戦う。負けないよ。チェスティにも、私の運命にも。もううんざりするほど守ってもらった。次は私がみんなを守る。私にしか出来ないやり方がきっとあると思うから」

「………………はぁ、かっけぇ。好き。嫁にしたい。結婚しようよ。来世まで不自由させないから」

「アハハ、無理。死ね」


 やがて列車はドラグーン王国に入り、王国の東に位置するドラゴンポートに停車した。


「さてと、じゃあね」

「みんなに挨拶くらいしていかないの?」

「今生の別れじゃないし。一人一人と喋ってたら明日になっちゃう」

「そっか。みんなうるさそうだな」

「何か文句言われたら、また会ったときにでも言い返す」

「席は空けといてやるよ。いつ寂しくなって戻ってきても平気なように」

「そういう運命を選んだなら、ただいまって泣きながらハグしてあげる」


 うん、言いたいことは言った。

 鞄はこんなに軽かったっけ。

 まあ、最初はこれくらいがいいか。

 足取りは軽い。

 このままどこまでだって行ける。

 コートの裾を翻したとき、ガシッと手首を掴まれた。

 未練がましい奴、って振り向いたら、頬に柔らかいものが当たった。


「やっぱり変わったよ、サクラ」


 理解するのに一瞬かかって、それから背中を軽く叩かれた。


「行ってらっしゃい」

 我ながら激エモでした。


 私事ながら、もうすぐ百合チートは6000ptを迎えます。


 どうかこれからも皆様の応援で支えてやってくださいm(_ _)m


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