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百合チート持ちで異世界に転生したとか百合ハーの姫になるしかない!!  作者: 無色
白黒円卓編:黒

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315/319

2-140.ありがとう

「ったく!! 寝起きに顔面パンチぶち込んでくるバカがどこにいんだよ!!」

「私のパーソナルスペースを侵すのが悪い」

「今さらじゃない?って思うけどじゃあゴメンね!!」


 怒鳴り合いにも似たやり取りが一段落し、ようやく空気が落ち着いた。

 私は胸を撫で下ろしながら、栄養ドリンク代わりにポーションを差し出した。


「飲んどきな。少しはマシになるよ」

「ん……」


 サクラは躊躇いがちに受け取った。


「心配したぞ。私もみんなも。けど無事でよかった」

「みんなも、って……ルドナとプランは……」


 一瞬、サクラの視線が宙を彷徨う。

 答えを聞くのが怖い、そんな表情だった。


「大丈夫。ドロシーたちが頑張ってくれたよ」


 その言葉を聞いた瞬間、サクラの手がポーションの瓶を強く握り締めた。

 ガラスが軋む音がしそうなくらいに。

 肩が小さく震え、呼吸が浅くなる。


「サクラ」

「私が……私が、二人を……」


 顔色は驚くほど青白い。

 目の奥に溜まった後悔と恐怖が今にも溢れ出しそうだった。


「お前サクラのせいじゃない。みんなわかってる。そんな落ち込むなって。今回のことは誰にも防げなかったよ」


 私は出来るだけ穏やかな声を選んだ。


「天災を予知出来ないのと同じでさ」

「……予知出来ないにしても、その後何とかするのがリコリスでしょ」

「ニシシ、まあそうなんだけどさ」


 私はわざと軽く笑って肩を竦めた。


「いやぁ今回は参ったね。いいようにやられちゃった。あーんな美少女に手の平で転がされるのは悪い気分じゃないけど〜♡ 心配すんな。どんな物語も、第一ラウンドは主人公サイドが負けるようになってんの。次勝つための布石ってやつ? だから」

「私が!!」


 サクラの声が鋭く空気を切り裂いた。

 おどけた調子を遮るように、感情が剥き出しになった叫びだった。


「私が強かったら、皆と同じスキルを持ってたら、何か違ったかもしれない!! 私が弱いから……みんなが傷付いたんでしょ……」


 唇が震える。

 言葉の最後は掠れていた。


「誰も悪くない。操られたのがたまたまサクラだったってだけの話だよ。チェスティにしてみれば誰でもよかったんだ」


 あいつは効果的なやり方で強い印象とショックを与えた。

 誰に……他でもない私にだ。

 

「心的支配……っていうのかな。あいつはそういうのが得意なタイプなんだろ。人の嫌がるポイントがよくわかってた。それに何より、あいつは私たちのスキルとはまったく違う力を持ってた」


 少なくとも私はチェスティを抑えようと【百合の王姫(イヴ)】を使ったし、私と魂で繋がってるみんなだってその庇護下にあった。

 あいつはそれを嘲笑うように無視してみせた。


「自分の無能を棚に上げたくはないけど、あいつが私たちの誰も及ばない力を持ってるのは間違いない。肝心なのは起きたことより、この先どうするかだ。やられっぱなしは(しょう)じゃねぇ」


 私は右手をサクラへと伸ばした。


「その瞬間を、一番近くで見せてやる。リベンジしよう。一緒に。最後に勝つのは私たちだ」





 ――――――――





 この手を取れば救われる。

 そう思わせるくらい真っ直ぐだ。

 どこまでもひたむきで、自分を疑わない強い眼差し。

 何度この眩さに目を焼かれてきたか、その度に目を背けてきたか。

 今、私はまた。


「……前に、言ってくれたこと覚えてる?」


 私は俯いて訊いた。


「サクラはそのままでいいよ。そのままがいい。って」

「うん。覚えてるよ」

「リコリスが、それを停滞の意味で言ったんじゃないことはわかってる。でも私はあれから……ううん、この世界に来たときから何も変わってない。ずっと弱いまま……ずっと……怯えてる……」


 お母さんに刺される……なんて悪夢より悪夢な現実から逃げられない。

 逃がしてくれない。

 何がどうあっても、もう変わることは出来ない。

 そう直感した。


「ラムールに来る前の夜、チェスティと話した」

「チェスティと……?」

「あいつは私の夢に干渉してきた……」

「……言い出せなかったんだな」


 リコリスは諭すように声色を下げた。


「それを話してればまた違う対策を立てられたかも知れないのに。結局ダメみたい。頼れなかった」


 そう、私は苦く笑った。


「頼っていい、信じていい、そう思えるくらいここは居心地が良かった。今まで生きてきたどの瞬間より楽しかった。女と話すこと、誰かが作ったご飯を食べられること、私みたいなのが普通の当たり前を享受出来た。それはリコリスやみんながいたから。でも……やっぱり私、女嫌いは直せないみたい」

「サクラ……」

「リコリス」


 ここはあたたかすぎた。

 火傷しそうで、焦がれそうで。

 これ以上甘えたら、みんなに迷惑がかかるから。


「私……百合の楽園(リリーレガリア)を抜けるね」


 せめてこれだけは伝えよう。


「今まで優しくしてくれて、本当にありがとう」


 私は初めて、リコリスと正面から向き合って笑った。

 頬に透明な涙の筋を伝わせて。


挿絵(By みてみん)

 もう3月ですね。

 当方は絶賛風邪で死んでいます。

 なのに書いてるのはどシリアス。


 頭おかしくなっちまうよ。


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