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ニーナ、敗北する

予告なく修正することがあります。

Sep-1-2020、一部変更。

Sep-19-2020、一部変更。

 四人の最上級騎士はショアガードの四天王と名乗った。釣り気味の眼を細め、歯を剥いて獰猛な笑顔になったニーナ。四天王はニーナの笑顔を見て、浮かべていた笑顔が引き攣った。

 年少組が武器を抜いて構えると、四天王も武器を抜いて構えた。その顔に笑みは無かった。


「ほっ、あ奴等。本気で相手にする気か。」

「見せて貰おうか、ショアガード四天王とやらの実力を。」


 ゼルスの言葉にゼンが呟いた。ゼンを見たキキの視線は、何故か冷たく見えた。

 大盾を構えたライブスが前に出て、ハルバードを持ったクラウスとロングソードのブレンダが後ろに立った。ハーディアが蛇が絡まった杖を構えた。


「キキ、結界だ。」

「アスクレピオスの杖ね。のじゃ姫とミリアンも魔法を使いたいでしょうね。」


 ゼンの言葉にキキが頷いて、魔法を発動させた。広い修練場に魔法陣が広がった。ニーナ達を中心にもう一つの魔法陣が浮かび上がった。


「凄い。これほどの規模で魔法障壁を展開するなんて。しかも、別の制御魔法を発動している。でも、あれは私も知らない魔法。」

「ふふ、魔法の効果を無効化する結界。でも、効果を無効化すると意味が無いから、今回は当たると絵の具が広がるの。ダメージによって広がる範囲が大きくなるの。全身に広がれば消滅したことになるわね。当然、相手の魔法は障壁で防ぐことも可能よ。思う存分に魔法を使っていいわよ。」


 キキの説明にミストリアは口を開けて固まり、ニーナは獣の笑みを浮かべて四天王を見た。

 感情の無い目で笑みを浮かべたミリアンが、タクトを出して魔法陣を出現させた。ニーナもレイピアの切先に魔法陣を出現させた。


「嘘でしょ。まだ、詠唱もしていないのに、魔法が発動していると言うの。しかも、あの術式は火と風の中級魔法。ファイヤーランスとエアリアルランス?」

「堅牢なる大地の聖霊よ。我が願いに集りて盾を成せ。」


 ニーナとミリアンの魔法に驚くミストリアを背に、ハーディアは魔法障壁を展開した。


「スカーレット・ボルト!」

「エアリアル・スラッシュ!」


 ニーナとミリアンがキーワードを発すると、火の玉と風の刃が飛んだ。二つの魔法はハーディアの魔法障壁にぶつかり、赤と緑の色が辺りに広がった。


「うにょ、色が広がったのじゃ。」

「お嬢様、キキ様の魔法で効果が色に変換されています。」

「へえ、私の障壁が壊されるなんてね。今度はこっちの番よ。」


 詠唱に入ったハーディアを守る様に、ライブスが大盾を構えて立った。ニーナの魔法を大盾で受けると爆発が起こり、大盾を赤く染めすぐに色が消えた。

 爆発の砂埃の中から、ララとロロが飛び出して来た。クラウスとブレンダがハルバートとロングソードで受け止めた。

 ララの前蹴りがクラウスに炸裂し、巨体を吹き飛ばした。一閃を止められたロロは、回転してさらに薙ぎを放った。

 ミリアンの持ち替えた弓から矢が放たれ、四天王に襲い掛かった。危なげ無く躱した四人は愕然と後ろを見た。


「自動追尾!」

「キキ?」

「馬車の中は暇なのよ。ミリアンの弓に付与して見たの。上手く発動しているわ。」

「爆!」

 

 ゼンとキキの会話にミリアンの声が重なった。名を呼ばれたライブスが大盾を掲げ、爆発を辛うじて防いだ。


「爆発するのか。性質が悪いぞ。」

「これがあの子達の実力か。」

「余裕があると思ったが、間違っていたな。」

「距離を詰めるぞ。」


 四人の顔は真剣そのものになった。接近戦に持ち込めば、ニーナとミリアンの魔法を防ぐことが出来ると判断したのか、武器を振りかぶってニーナ達に迫った。

 ララのバスタードソードの一撃を、ライブスが大盾で防ぎ金属音が響き渡った。クラウスのハルバートをロロが刀で逸らし、地面を撃たせた。ニーナがハーディアに迫り、ブレンダがミリアンに迫った。


「貰った!」

「キンッ!」


 見ていた全員が斬られるミリアンを見ただろう。ブレンダのロングソードは、ミリアンの両手のナイフに止められていた。ミリアンの身体が沈み、ブレンダの足を払った。跳び上がって躱したブレンダに、回転しながら立ち上がったミリアンの回し蹴りが炸裂した。辛うじて腕を交差して受けたが後ろに吹き飛ばされた。

 ニーナのレイピアがハーディアに襲い掛かった。器用に杖を振ってハーディアは、ニーナの攻撃を防ぎ切った。唇を釣り上げて笑うハーディアの眼前に魔法陣が現れた。


「攻撃を躱しながら詠唱するとは器用なのじゃ。しかし、遅いのじゃ!」


 ニーナの顔に獰猛な笑みが広がると、至近距離から火の玉が飛んだ。辛うじて障壁を展開してハーディアは防いで見せた。火の玉を撃ったと同時にニーナが距離を詰めた。

 ニーナの突きがハーディアを貫いた様に見えた。ブンと音を立ててライブスの大盾が、ニーナを吹き飛ばした。

 突如、速度の上がった四天王の動きに着いて行けず、ララとロロはクラウスとライブスに剣を突き付けられ降参した。

 ブレンダの攻撃を凌いでいたミリアンに、ハーディアの魔法が炸裂し援護に来たニーナごと青に染めた。


「うにゅにゅにゅ。」

「危なかった。」

「ブーストまで使い、取って置きまで。」

「大人気なかったと反省しています。」

「上級騎士なら負けていたわ。」


 ニーナは勝てなかったことに不満らしいが、四人の最上級騎士も冷や汗を流していた。


「ふっほっほっほ。クラウス等が子ども達相手に本気になるとは。面白い物が見られたわ。まさか、ハーディアのアクア・バーストが炸裂するとわな。」

「大公殿下は強い騎士を揃えておるのじゃ。」

「騎士王の二人は王国騎士だが、この四人は儂が冒険者だった頃、サポーターをしておった。大公になった時に、儂に剣を捧げてくれたのだ。」

「四人は騎士王に迫る、腕前なのである。ギルス殿とエレン殿は超えているのである。」


 大公とニーナの会話を、俯きながら聞いている四人の最上級騎士と、騎士王に褒められ笑みが零れるギルスとエレン。そこへ、大公の息子が降りて来た。


「どうした、ゼクス。お前も模擬戦がしたくなったか。」

「いえ、この者達の修練を見てみたいと思いまして。」

「聞けば、まだ二か月。どうしたら、そんなに強くなれるのか、私も興味がある。」

「彼等の才能も有るでしょうが、何か他にも理由があると考えたのです。見せて貰えないだろうか。」

「いいのじゃ。」

「やめた方がいいですよ。もちません。」


 静かに見ていたティムが大公の前に出て、申し訳なさそう止めようと声を上げた。


「もたんとはどういうことだ。」

「やった方が早いのじゃ。ゼン。」


 溜息を吐きゼンは地面に線を引き、五十メートルほど進み再び、線を引いた。


「この間に立て。斬撃を防ぐ。」


 近くに立ててあった剣を掴み、横へ薙いだ。十メートルほど離れた、杭に掛けられた鎧が乾いた音を立てた。騎士の一人が近づいて、鎧を確認して震えだした。


「おい、どうなっておる。」

「き、切れています。鉄の鎧が斬られています。」

「あれは剣を合わせれば、防ぐことが出来るのじゃ。並ぶのじゃ。」

「手加減を忘れないでね。」

「問題ない。」


 ニーナ達、二人の騎士王、最上級騎士がゼクスの横に並んで立った。


「準備は出来たな。」


 俯いていたゼンが顔を上げると、誰も動かなくなった。ゼンが剣を構え右足を後ろに引き、ニーナ達はゆっくりと武器を構えた。

 ゼクスと騎士達は血の気の失せた青白い顔で、震えだしカタカタと鎧を鳴らした。

 ニーナ達は獰猛な笑みを浮かべ、武器を構えてゼンを見詰めた。

 ゼンはゆっくりと右手に持った剣を左へ、刃は地面と平行に移動させ、ニーナ達を見た。その視線に何を感じたかニーナ達は、ゼンの動きを見詰めていた。

 次の瞬間、ゼンの剣が空を薙いだ。


「はっ!」


 ニーナ達は裂帛の気合いとともに、武器を振り抜いた。


「がっ!」


 ゼクスと騎士達が尻餅をついた。大公が駆け寄り、ゼクスに手を貸して起こした。


「何が起こった。」

「あれは殺気だ。強烈な、殺気だった。まるで、冷たい泥の中に放り込まれたような。死を覚悟しました。ドレイクと遭遇した時ですら、感じた事のない恐怖。ドレイクが蜥蜴に思える。」

「吾輩は後ろに倒れて避けるだけで、精一杯だったのである。マクシミリアンは。」

「私も似たようなものだ。なのに、彼等はあの殺気の中で、武器を構えただけでなく、迎撃するとは。」

「僕も何度か試したのですがね、さっきのはいつものより弱めでしたよ。僕達は国王の牙です。皆様より実戦経験は豊富ですよ。僕達も動けない殺気の中で、彼等は動けるようになったのです。ゼン殿との修練はまさに死線を潜り抜け、活路を見つけるようなものです。私もですが、彼等も何度も斬られているのです。キキ殿がすぐに治癒してくれますが、恐怖に慣れることはありません。」


 ティム説明に大公達はあんぐりと口開け、改めてニーナ達に目を向けた。


「今日は判りやすかったのじゃ。」

「殺気も弱かったからな、動き易かった。」

「おいら、今日は斬られてない。です。」

「あたいも。」


 素直に感想を話し合うニーナ達を見て、マクシミリアンは首を傾げた。


「君たちはよくやるのかね。さっきの様な訓練を。」

「時折、やるのじゃ。ゼンが死を前にしても冷静でいろと、ゼンもやっているそうじゃ。」

「ゼン殿もやっているのかね。一体、相手は何ものだ。」

「自分自身だ。」


 全員が何の事か理解で出来なかったのか、首を傾げてゼンを見る。キキが溜息を吐く。


「ステータスが彼の二割増しまで、調整できるゴーレムを使って、真剣で戦うのよ。」

「自分自身より僅かに上回っていれば、勝つことは不可能だ。二割は絶望的だろう。」

「彼は勝つまで戦うのよ。傷つき、手足を斬られても、立ち上がって戦う。」

「それを繰り返したのであるか。あの殺気はそれだけではないのである。」

「彼は私のガーディアン。そして、狩人。スライムからドラゴン、人族も悪魔族も狩る。私を傷つけようとする、全てのものを狩って来た。今までも、これからもね。」


 騎士王の二人も、その場にいた全員が何かを察したように頷いた。


「今は私だけでなく、のじゃ姫やララの守護神もしているかもね。」

「うにゃ。」

キ♀:のじゃ姫達は負けたのね。

空♂:あの子達まで勝つと色々と困る。

キ♀:それもそうね。まだ11歳と13歳だからね。

空♂:しかし、上級騎士。君達に出会う前のギルスやエレン並みの強さはある。

キ♀:それはそれで、凄い事ね。

空♂:しばらく、城塞都市に滞在する予定。

キ♀:道中、肉ばかりだから海の幸が楽しみね。

空♂:当然、出てくる。出しますとも。

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