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ニーナ、騎士に挑む

予告なく修正することがあります。

Sep-1-2020、一部変更。

Sep-19-2020、一部変更。

 ニーナの提案でギルス達も、ゼルスの騎士達と模擬戦をすることになった。


「どうしてこうなった。」


 ギルスは頭を抱えて座り込んだ。エレンが優しい目で眺めていた。


「隊長、良い機会だと思うぞ。」

「もう、隊長じゃねえ。」

「ふふ、ギルス。私達も二か月は練習した。ゼンさんとの模擬戦も何度もした。レギオンとの遭遇戦の時も、怖かったけど冷静だった。お嬢もララも冷静だった。ミリアンもロロも。以前なら、逃げるしかなかったはず。すでに、ララとロロはズンターとベンより頼りになっていた。才能も有るだろうが、毎日の練習の成果だろう。ゼンさんとの模擬戦で受ける殺気と対峙している成果。私が先にやる。」


 エレンはギルスにまくし立てると、木剣を持って前に立った。一人の騎士がエレンの前に立つ。


「吾輩は王国に剣を捧げ、ショアガード大公様に仕える騎士王、ブルーノス・ヘレン・ラミレスである。女といえ騎士。吾輩に油断は無いのである。」

「ニーナリーアに剣を捧げし、フィアリンクスの騎士、エレン。参る。」


 フルプレートを着たブルーノスは、エレンより頭一つ高い二メートル位はあるだろう。幅広の両手剣に似た木剣を携えていた。エレンも木剣を前に出して、半身になって構えた。

 騎士は見習いから始まり、下級、中級、上級、最上級とクラスアップする。騎士王は最上級騎士を上回る、実力と精神を持った者だけが辿り着く最高位であった。

 最高位の騎士を前にエレンに緊張はしていないように見えた。


「では、始め。」


 大公の掛け声でブルーノスが大剣を構えた。エレンは両手を下し、自然体で立っていた。俯いていたエレンの顔が、ブルーノスの方を向く。一切の感情が抜け落ちた、能面よりも無表情のエレンの目が、ブルーノスを捕えた。


「むう。」


 何を感じ取ったのか唸ったブルーノスは、距離を詰め剣を袈裟斬りに打ち込んだ。エレンは小盾で大剣を反らし、身を屈めてブルーノスの足を払った。体勢を崩したブルーノスに、立ち上がり様に逆の足で蹴りを入れるエレン。堪らず仰向けに倒れるブルーノスの胸に座り、首に剣を突き付けるエレン。一瞬の出来事に理解が追い付かないのか、見ていた騎士の誰も言葉が出なかった。


「エレンの勝ちじゃ。」

「地を這うような蹴りだと。あんなもの、騎士の技ではない。」

「騎士の誇りもないのか。」


 見た事の無い技を非難する騎士達。そんな、騎士達を大公はニマニマと眺めていた。エレンが騎士達に向き直った。


「騎士の誇り、何それ。何の役に立つ?見た事の無い技で倒されたら、大公様を護れなくてもいいのか。相手の騎士が騎士に有るまじき技で、貴方達を破り大公様を討ったと言えば、許されると思うのか。千変万化する戦場で、騎士の矜持で対応できるのか。私はお嬢の騎士だ。お嬢を護るためなら、どんなことをしても護って見せる。」

「エレン、よくぞ言うた。そなたの覚悟、しかと見た。ニーナよ、良い騎士を得たな。」

「もう一人、居るのじゃ。」


 エレンの覚悟を大公は素直に称賛した。ニーナがギルスを見た。そして、ギルスはエレンを見て、ニーナを見た。


「俺もやるかな。エレン、有り難う。俺は寝ていたようだ。」


 ギルスが前に出ると、一人の騎士がギルスの前に立った。ギルスと身長は変わらない、ライトメイルを着た男。ブルーノスを岩斧の様な男と言うならば、こちらは抜身の剣の様な雰囲気を持っていた。


「まさか、ブルーノスが負けるとはな。彼に油断は無かった。先の言、心が震えたよ。エレン殿を称賛するよ。私はショアガード大公様の剣、マクシミリアン・ミーナ・マクスウェル。全力でやらせてもらおう。」


 マクシミリアンはギルスと同じ、ロングソードの様な木剣を両手で持って構えた。


「ニーナリーアに剣を捧げし、グレイウルフの騎士、ギルス。一手、ご教授お願いする。」


 ギルスは半身に立ち、右手の剣を垂直に構えた。

 合図も無く、マクシミリアンが地を蹴ってギルスに襲い掛かった。頭上から振り下ろされた剣が、ギルスの横をすり抜けた。最小限で躱したギルスの技量を何人が見抜いた事だろう。

 ギルスの剣がマクシミリアンの首を薙ぎ、マクシミリアンは身を反らして剣を躱し距離を取った。


「その腕で上級。騎士王を名乗って貰わねば、私達が困るぞ。」

「勉強の方が苦手でな。」


 今度はギルスが地を蹴ってマクシミリアンに迫った。マクシミリアンの上段からの迎撃を、真横に飛んで躱し、横から突きを放った。マクシミリアンが木剣で払うと、ギルスはくるりと回り薙ぎを放った。マクシミリアンに弾かれ、ギルスは身を捻り逆袈裟に振り下ろした。連続で繰り出されるギルスの斬撃を、マクシミリアンはそのすべてを防いで見せた。


「さすがは騎士王。」

「まさか、まだあると言うのでは、ないだろうな。」

「もう一回、行こうか!」


 荒い息をするマクシミリアンに、獰猛な狼の笑みを浮かべたギルスが迫った。

 先の連撃より速くて重い連撃がマクシミリアンを襲った。数合を受けていたが遂には、防ぎきれずマクシミリアンの喉にギルスの木剣が突き付けられた。


「参った。修練の賜物だけではないようだ。凄まじい連撃。良い技を見せてもらった。」

「おお、ギルスも勝ったのじゃ。妾達も頑張らねばならん。」


 ギルスとマクシミリアンが場所を空けると、ニーナがミリアン、ララ、ロロを連れて前に出た。


「さて、妾達の相手は誰じゃ。」

「子どもじゃないか。」

「負けたらどうする。俺達は上級騎士だぞ。」


 ニーナ達の相手にもめる上級騎士達の中から、四人の騎士が前に出て兜を取った。


「俺達は最上級騎士だ。俺達が相手をして構わないか。」

「望むところなのじゃ。」

「なら、名乗るとしよう。俺はクラウス。」

「ブレンダよ、よろしく。」

「私はライブスだ。」

「私はハーディア。」


 四人の男女が温和な笑みを浮かべながら、ニーナ達に名乗りを上げた。修練場の片隅でお茶を飲んでいたキキが、傍らに立つゼンを見上げた。口元に浮かんだ笑みを見て、キキも笑みを浮かべた。


「ニーナじゃ。」

「ミリアンと申します。」

「ララです。」

「ロロだ、じゃない。です。」


 ロロの名乗りに騎士達から苦笑が漏れた。最上級騎士達も口元を隠して、肩を震わせた。


「この妾達、見くびって貰っては困るのじゃ。」

キ♀:私達の出番はないのね。

空♂:当然、二人が出て行けば相手が全滅するでしょ。

キ♀:そんな、戦闘狂みたいに言わないで欲しいわね。

空♂:のじゃ姫の成長を見て欲しい。

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