創造の魔女と破滅の魔女の戦いは続くよ何処までも
完結後の世界で三人が別荘で過ごしているという時間軸です。
「おかーしゃん」
「何?」
「見てこれできたぁ!」
クルムが愛娘、桜を産んだのは今から五年前。そんな前のことなのにクルムは昨日の事のように思い出せる。
「こら、魔法はこの世界では使っちゃダメよ」
「でも、おとーしゃんが」
「良いじゃねぇか。この場にいるのは俺とお前と桜だけなんだから」
「だけどねぇ」
俺の嫁の中で子供を産んだのはクルムだけだ。理由は色々とあるが、一番強かった理由はクルムが願ったから。
どうも、滅ぼせるだけでなく、産み出せるようにもなりたいらしい。知らない愛を知りたい。そんな理由からだろう。
「桜もお父さんのことを信用しないで」
「でもぉ」
今現在いるのは俺ん家。別荘と言った方がいいのか?
山にある別荘だからこそ、人目はない。だから魔法の使用を許可したのだが、クルムは元学院長ということもあってか、真面目だ。
「酷い言われようだ」
「事実でしょう? もうっ」
昔はことある事にガミガミ言ってきたが、今では丸くなった。
それが可愛らしくて、クスリと笑ってしまった。
「何がおかしいの?」
「いや、丸くなったと思ってな」
「ずるい、わたしもおとーしゃんと座る!」
ポスンと桜は俺の膝に座った。ぎゅっと俺を抱きしめ、何故かクルムにドヤ顔を向ける。
「丸くなったといえば、桜もよね?」
「ふふふっ、おかーしゃんったら何をいってるの?」
なんかバチバチと稲妻が走っているような幻が見える。なんか、三歳辺りを過ぎてから、途端とこの調子なんだ。
「ったく、せっかくオールに無茶言って三人だけで地球に来たってのに、喧嘩ばかりはダメだぞ」
軽く二人に言うが。
「「ちょっと黙ってて」」
「·····」
はぁ、どうしてこうなった。菜乃花は家の用事だし、ユウキとサナとアマサは学院に通っている。クレアとララとオールは城で頑張ってくれてるしな。
仲介してくれる人が見当たらない。
こういう時は、二人だけにした方がいいのか?
「じゃあ、俺は少し席を外すから、終わらせとけよ」
「「はい」」
未だにバチバチと。これ終わるのか?
✻ ✻ ✻
「ふふっ、おかーしゃんのせいでおとーしゃんが出てっちゃったじゃん」
「それを言うなら桜の方でしょ。そして、そんな気持ち悪い呼び方はもういいんじゃない?」
愛娘にその言い方はおかしい。と、思うかもしれないが、楓が知らないだけでこの二人は知り合いである。いや、戦ったことがあるライバルと言った方がいいのか。
「クルム、貴方が私を産んでくれた時は驚いたわよ」
「それはこっちのセリフ。まさか、私の娘に転生するなんて思いもしなかった」
察する人は察するだろう。
桜はサクラであるのだ。エルフであった頃の容姿の名残がある。
「まさかクルムが桜って名前を考えるなんて」
「ほっときなさい」
実はクルムが桜を産んだ時、名付け親となったのはクルムだったりする。
かつてのサクラとこの世界にある桜をかけて、その名前にしたのだ。もちろん、その当時は桜がサクラの転生体であるのとは知らない。
ただ、産んで初めて彼女を見た瞬間。面影を感じたからである。
「楓も困ってるわ。桜、そろそろ自重しなさい?」
「ふふっ、いやよ。おとーしゃんを貴方から奪うんだから」
楓を恨んでいた時は楓の全てを奪ってやると言っていたが、今ではクルムの全てを奪ってやると言わんばかりである。
「あら? 知らないの? 親子は結婚出来ないのよ?」
「貴方がそれを言える?」
「うぐっ」
クルムは分かりやすく狼狽えた。
しかし、そう桜の言う通りクルムに常識とか法律とかで言えることは無い。
そもそも重婚している時点で、おかしいのだ。それを可能にしているのは魔法である。
まぁ、そもそも結婚式を行ったのはあっちの世界であるからして、この世界では一応菜乃花との結婚届けを出しているが、基本誤魔化しに誤魔化しを重ねていることに変わりない。
「魔法を使えばなんでも出来る。そう、地球を支配することだってね」
瞬間的に桜の顔は五歳児のそれではなく、エルフだった頃の彼女に戻る。
「·····なんてね。この世界は気に入っているの。だから、支配なんてしない。むしろ、楽しみなのよ。これから起こる数々の出来事が」
「そう。なら、楓に色目を使うのはやめなさい」
そう忠告したのもつかの間。とてとてと桜は走っていく。
「おとーしゃあーん」
「なんだ? 終わったのか?」
「うん! 私将来、おとーしゃんのおよめしゃんになるの!」
「ほう? それは楽しみだ。俺に見合う女の子に育ってくれよ?」
「うん! ちゅ」
楓の頬にキスをした後、桜は楓に見えないアングルでクルムにマウントを取る。
楓としては娘の愛情表現として受け取っているため。ましてや、それが実現する気でいるとは思いもしていない。今も、キスされて嬉しがっている。父冥利に尽きると。
だからこそ、クルムも負けじと対抗する。
「あら? 楓は私の夫よ? ねぇ、楓?」
「そうだが、娘の言うことを真に受けるなよ」
「こんなうるさい口なんて閉じちゃうんだから!」
「むぐっ」
強引に楓の顔を自分の方にへと向けると、キスをした。舌をまじわせ、恋愛経験なしの桜には分かりもしないディープなキスをする。
「ぷはっ──おい、何も今することじゃ」
唇を離した楓は抗議の声を上げるが。
「もうちょっと」
かつてクルムの初めてを奪った楓のように、今度はクルムが攻める。
二度目を行い始めた二人に桜はあわわと慌てる。数秒後、ゆっくりと唇を離したクルムは、うふふっと勝ち誇ったような顔で桜を見た。
「むー」
「うふふ」
再度バチバチとした状況に楓は何もすることは出来ない。桜とクルムに挟まれているため、逃げることが出来ない楓は心でSOS信号を発信した。
どうやらこの母娘の戦いは未だに終わっていないらしい。




