⸻第七章 過激派の影
困っているを放っておけない主人公の性格を表現してます。
大会準備が進む中、学院では不穏な噂も囁かれ始めていた。
「なあ、聞いたか? 最近、王都の裏通りで人ならざる者狩りが起きてるらしいぜ」
「え、それって……」
「『純血同盟』とかいう連中の仕業だって話だ。表向きは貴族の慈善団体らしいけど、裏では過激な思想を持つ連中の巣窟だってさ」
廊下でそんな会話を耳にしたレオンは、思わず足を止めた。
(純血同盟……。ヴィクトリアが言ってた過激派って、これのことか)
放課後、レオンはアリシアとミアを図書室に呼び出し、聞いた話を共有した。
「純血同盟、ですか……。実は私の国でも、その名前を聞いたことがございますわ」
アリシアが眉をひそめる。
「隣国のいくつかの貴族が資金提供をしているという噂です。表立って動けば国際問題になりますから、あくまで裏でこそこそと、というやり方のようですけれど」
「レオン様、それってヴィクトリア様たちを狙ってるってことですよね……。大丈夫でしょうか」
ミアが心配そうに眉を寄せる。意外にも、彼女はヴィクトリアに対抗心を燃やしつつも、その身を案じているようだった。
「案じてくれるのか、ヴィクトリアのこと」
「そ、そりゃあ心配くらいしますよ! いくら私がレオン様のことで対抗意識を持ってるからって、誰かが傷つけられていいなんて思いません!」
「ミア……」
その真っ直ぐな優しさに、レオンは少し胸が温かくなるのを感じた。
「よし、じゃあ大会までの間、俺たちでもできる範囲で情報を集めてみよう。何か分かれば、ヴィクトリアたちにも伝える」
「賛成ですわ」
「はい!」
こうして三人は、それぞれの伝手を頼りに、純血同盟についての情報収集を始めることになった。
数日後、王都の下町を歩いていたレオンは、路地裏で複数の男たちに囲まれている人影を見つけた。
「おい、そこの……」
「――!」
囲まれていたのは、フードを目深に被った小柄な人物だった。男たちの一人が乱暴にフードを剥ぎ取ると、そこには褐色の肌に尖った耳を持つ、獣人の少女の顔があった。
「やっぱりな、獣人か。薄汚い血が」
「純血同盟の名の下に、貴様のような不浄な血を持つ者は排除させてもらう」
「や、やめて……!」
少女が怯えた声を上げる。レオンは考えるより先に飛び出していた。
「そこまでだ」
「なんだ、お前は」
「通りすがりの一学院生だよ。理由もなく人を傷つけるのは見過ごせない」
「学院生だと? ……待て、その髪、その顔……お前、レイヴンフォードの……!」
男の一人が息を呑む。
「純血同盟の連中がなんでこんなことしてるんだ」
「知れたこと。人間の血の純潔を守るため、獣人や吸血鬼のような不浄な血を排除するのは我らの使命だ」
「くだらない話だな。血の色なんて、みんな同じ赤だろ」
レオンはレインボウフェイトを抜き放った。刀身に七色の紋様が浮かび上がるのを見て、男たちの顔色が変わる。
「その剣……まさか、伝説の……!」
「やる気なら相手するぞ」
しばしの睨み合いの後、男たちは舌打ちをして踵を返した。
「今日のところは見逃してやる。だが、覚えておけ、レイヴンフォード。お前がどちら側につくか、いずれ選ばされる時が来るぞ」
男たちが去った後、レオンは獣人の少女に手を差し伸べた。
「大丈夫か?」
「あ……ありがとう、ございます……」
少女は震える声で礼を言うと、深々と頭を下げた。
「わたし、リル、と言います。あなたは……」
「レオン・レイヴンフォードだ。困った時はお互い様だろ」
リルと名乗った獣人の少女は、涙目でレオンを見上げた。
「わたし、両親を純血同盟に……。それからずっと、隠れて暮らしてて……」
「そうか……。もしよかったら、うちの領地に来ないか? 少なくとも安全は保証する」
「い、いいんですか……?」
「ああ。困ってる奴を放っておけないだけだ」
こうして、また一人、レオンの周りに新たな縁が生まれることになった。
よろしくお願いします




