⸻第四章 ラブコメの兆し
たまにくるラブコメ展開です。
「レオン様、お昼、ご一緒してもよろしいですか?」
「レオン君、今度の休みに街に遊びに行かない?」
「レイヴンフォード公子、私とお茶でも……」
魔剣の一件は瞬く間に学院中に広まり、レオンの人気はさらに加熱した。廊下を歩けば令嬢たちの視線が集まり、昼食時には自然と人だかりができる。
「もう、こんなに毎日声をかけられてたら、私たちがゆっくりお昼を食べる暇もありませんわ!」
中庭のベンチで、アリシアが苛立たしげに紅茶を煽った。
「アリシアも一緒に食べてるだろ、普通に」
「わたくしは監視、もとい、護衛的な意味でご一緒しているだけですのよ」
「監視て」
「レオン様のことだから、放っておくとすぐ変な女の人につけこまれそうですし」
ミアが不服そうに口を挟んだ。手作りらしいサンドイッチのバスケットを抱えている。
「変な女って、まさかヴィクトリア嬢のことか?」
「そうです! あの吸血鬼の……失礼、ノクターナ様のことです! 絶対に何か企んでますよ、あの人!」
その名が出た瞬間、まるで狙っていたかのように、当のヴィクトリアが中庭に姿を現した。
「あら、随分と賑やかですこと」
「な――」
「い、いつからそこに……」
「今来たばかりですわ。レオン様、少しよろしくて?」
ヴィクトリアは優雅な足取りでレオンの隣に腰掛けた。紅い瞳が、悪戯っぽくミアとアリシアを一瞥する。
「お二人とも、随分とレオン様を独り占めしていらっしゃるのね」
「ど、独り占めなんて……!」
「あら、違うんですの? でしたら、わたくしがご一緒しても問題ございませんわね」
ミアが顔を真っ赤にして反論しようとするのを、アリシアが冷静に制した。
「……勝手になさいませ。ただし、変な真似をしたら、この国の第一王子の婚約者候補として黙っていませんわよ」
「あら、随分な迫力ですこと。ですが安心なさって。わたくし、レオン様に興味があるのは事実ですけれど、取って食おうというわけではありませんの」
ヴィクトリアはそう言うと、優雅に微笑んだ。
「――今のところは、ね」
「今のところって……」
レオンが問い返すより先に、ヴィクトリアは立ち上がった。
「近いうちに、我が家の夜会にご招待いたしますわ。首飾りの伝承の続き、お聞きになりたいでしょう?」
「それは……」
「では、また」
ヴィクトリアは風のように去っていった。残されたレオン、ミア、アリシアの間に、なんとも言えない沈黙が流れる。
「……レオン様」
「な、なんだよ」
「絶対、変な女に引っかからないでくださいね」
「引っかかるとか、そういうんじゃ……」
「わたくしも同意見ですわ。あなた、ただでさえ女性関係で騒がれやすい体質なのですから、これ以上ややこしいことにならないよう気をつけてくださいまし」
二人の少女に詰め寄られ、レオンはたじたじになりながらも、内心では苦笑していた。
(前世じゃ縁がなかったのに、まさかこんなにモテるとはな……)
剣、魔法、そして謎めいた美少女たちとの出会い。神の言葉通り、レオンの新しい人生は、これから本格的に動き出そうとしていた。
よろしくお願いシマす




