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転生貴族と黄金の宿命  作者: KiedeJWL


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⸻第一章 黄金の髪を持つ子

第10章まではある程度早めに投稿しようと思います。

 産声が、レイヴンフォード公爵家の広間に響いた。


「おめでとうございます、旦那様。元気な男の子です」


 侍女の声に、公爵レジナルド・レイヴンフォードは目を細めた。妻のエリザベートが、疲れた顔に微笑みを浮かべながら赤子を抱いている。


「まあ……この子、髪の色が」


 生まれたばかりの赤ん坊の頭には、うっすらと、けれど確かに、黄金色の産毛が生えていた。レイヴンフォード家は代々黒髪の家系だ。エリザベートの実家も含め、金髪の血筋はどこにもない。


「先祖返り、でしょうか」


「いや……」レジナルドは赤子の首元に視線を落とし、息を呑んだ。「これは――」


 赤ん坊の首には、生まれたときから小さなゴールドのネックレスがかかっていた。誰も着けた覚えのない、それでいて赤子の肌に馴染みきったその首飾りに、両親は言葉を失った。


「『黄金の子』だ……」


 レイヴンフォード領に伝わる古い伝承があった。千年に一度、『すべての力を宿す黄金の子』が生まれる、という言い伝え。誰もがおとぎ話だと思っていたそれが、今、目の前で現実になろうとしていた。


 両親は子に「レオン・レイヴンフォード」と名付けた。

⸻

 それから十五年。


「レオン様! また魔法の授業をサボって剣の稽古ですか!?」


 領地の練習場に、少女の怒声が響いた。侍女見習いのミア・クロフォードが、腰に手を当ててレオンを睨みつけている。赤茶色の髪を三つ編みにした、快活そうな少女だ。


「いいだろ別に。剣も魔法もどっちも大事なんだから」レオンは木剣を肩に担ぎながら、悪びれもせずに笑った。


 金色の髪が陽光を弾き、緑色の瞳が悪戯っぽく細められる。十五歳になったレオンは、幼い頃の面影を残しながらも、すでに領内の若い令嬢たちの間で「レイヴンフォード家の黄金の貴公子」と呼ばれるほどの美貌に育っていた。


「もう……。今日はハイデルベルク先生が『属性適性検査』をするから来るようにって、朝から何度も言われてたじゃないですか」


「あ」


 レオンの動きが止まった。すっかり忘れていた。


「これだから……! 走りますよ、遅刻したら私まで怒られるんですから!」


 ミアに手を引かれ、レオンは魔法学舎の塔へと駆け出した。


 ――正直なところ、レオンにはこの検査の結果に不安はなかった。前世の記憶を持つ彼は、自分がただの貴族の子息ではないことを、物心つく頃から薄々自覚していたからだ。


(あの時の神様、本当に全属性くれたのかな……)


 十年前の記憶は朧げだが、白い空間で交わした約束だけは、なぜかはっきりと覚えている。


 塔の最上階、円形の魔法陣が刻まれた検査室には、既に十数人のクラスメイトが集まっていた。


「レオン様、遅刻ギリギリですわよ」


 最初に声をかけてきたのは、透けるような白銀の髪を持つ少女、アリシア・フォン・シュタインベルクだった。隣国から留学してきた侯爵令嬢で、氷のように整った容姿とは裏腹に、レオンにだけはやけに素っ気ない態度を取る。


「悪い悪い、ミアに引きずられて来た」


「引きずったのはレオン様が忘れていたからです!」


 二人のやり取りに、周囲からくすくすと笑いが漏れる。


「相変わらず騒がしいですわね、あなたたち」


 そう言いながらも、アリシアの口元にはわずかな笑みが浮かんでいた。


 検査官のハイデルベルク教授――白髪交じりの初老の魔導士――が、咳払いをして生徒たちを整列させる。


「では順番に検査を行う。魔法陣の中央に立ち、掌を上に向けなさい。適性のある属性が、陣に色として現れる」


 一人、また一人と検査が進んでいく。火属性の少年は紅い光を、水属性の少女は青い光を灯し、それぞれ一属性か二属性の適性を示していった。中には稀に三属性を示す者もいて、その度に教室がどよめいた。


「次、レオン・レイヴンフォード」


 名を呼ばれ、レオンは魔法陣の中央に立った。周囲の視線が集まる。特にミアとアリシアは、心なしか身を乗り出しているように見えた。


(さて……)


 レオンが掌を上に向けた瞬間――魔法陣が、これまでとは比較にならないほどの光を放った。


 紅、青、緑、黄、そして白と黒。全七色の光が渦を巻き、検査室全体を包み込む。


「な――」


 ハイデルベルク教授が眼鏡を落とした。生徒たちは声も出せず、ただその光景を見つめている。


「これは……全属性適性……!? 私は文献でしか読んだことがない……!」


 教授の震える声が、静まり返った検査室に響いた。


 光が収まると、レオンの首元でゴールドのネックレスの紅い宝石が、まるで呼応するように淡く輝いていた。


「レオン様……」


 ミアが呆然とレオンを見つめている。アリシアもまた、その氷のような表情を初めて崩し、驚愕の色を浮かべていた。


「……やっぱりそういうことか」


 レオンは小さく呟き、頭をかいた。この日を境に、レイヴンフォード家の「黄金の貴公子」の名は、王都全土に轟くことになる。

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