⸻第十三章 出生の秘密、母の遺言
楽しんでいただけると幸いです
「石板か……。これは私が預かろう」
レイヴンフォード家に戻ったレオンから報告を受けた父レジナルドは、石板を手に取り、深刻な表情を浮かべた。
「父上、何か心当たりが?」
「……レオン、お前にはずっと話していなかったことがある」
レジナルドの言葉に、レオンは息を呑んだ。
「お前の母、エリザベートは、お前を産んで間もなく病に倒れ、亡くなった。知っての通りだ」
「はい……」
エリザベートは、レオンが物心つく前に他界していた。前世の記憶と混じり合いながらも、レオンにとって母の記憶はおぼろげなものだった。
「だが、彼女の死因については、実は不審な点があった。当時の侍医は『原因不明の急激な衰弱』と診断したが……純血同盟の前身にあたる組織が関わっていた可能性がある、という調査結果が出ていたのだ」
「それって……」
「エリザベートの実家、フィンレイ家には、実は特殊な血筋が流れていた。人間でありながら、古の魔法生物の血を薄く受け継ぐ、『祝福の血脈』と呼ばれるものだ」
「祝福の血脈……」
「その血脈と、お前の父方――つまり私の家系に伝わる、ある特殊な体質が組み合わさることで、千年に一度、全属性の適性を持つ子が生まれる可能性があるとされていた。これが、お前が『黄金の子』と呼ばれる所以だ」
レオンは言葉を失った。単なる偶然や神の気まぐれではなく、この世界の血脈という、もっと根深い理由が自分の力の背景にあったことを、初めて知ったのだ。
「純血同盟は、恐らくこの『祝福の血脈』を危険視している。人間至上主義を掲げる彼らにとって、人ならざる血を引く者の存在は、看過できないものなのだろう」
「じゃあ、母上が亡くなったのも……」
「断定はできない。だが、可能性としては十分にある。エリザベートは亡くなる直前、私にこう言い残した。『レオンを、どうか守ってあげて。あの子はきっと、この世界を変える力を持っている』とな」
レジナルドの目に、珍しく涙が滲んでいた。
「お前を全属性適性者として、そしてレイヴンフォード家の嫡男として大切に育ててきたのは、貴族としての義務だけでなく……エリザベートとの約束を守るためでもあったのだ」
「父上……」
レオンは胸が締め付けられる思いだった。前世の記憶を持つ自分にとって、この世界での「家族」という存在は、どこか現実味を欠いていた部分もあった。だが今、初めて、自分がこの世界に生まれた意味と、家族の愛情の重みを、心の底から実感していた。
「俺、頑張ります。母上との約束、俺が代わりに果たします」
「その言葉だけで十分だ。だが、無茶だけはするな。お前を失うことだけは、私にも耐えられない」
父と子の間に、これまでにない深い絆が芽生えた瞬間だった。
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