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カードバトルは命がけ ~誰も知らないスキル【決闘者】、モンスターを従えて成り上がる~  作者:


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3/9

【3話】消えたカード

二体目のスライムを手に入れてから、俺はしばらく森の中を歩き回っていた。


目的はあった。


あの決闘という仕組みを、もう少し安全に使いこなせるようにしておきたい。


幸い、この森にはスライムが多いらしく、何度か視界の端にあの青い体を見かけた。


三体目を見つけた時、俺は迷わず口にした。


「決闘」


視界が白に染まり、いつものリングが立ち上がる。


カァン、とゴングが鳴った。


前回の経験もある。


俺は落ち着いてカードを取り出し、手持ちのスライムを一体、呼び出した。


「攻撃しろ」


命令通り、俺のスライムが野生のスライムに体当たりする。


ぼふん、と鈍い音。相手も応戦する。


ぼふん。


(今回はもう少し様子を見てみるか)


前回は焦って途中で切り上げたが、今回はせっかくだからと、もう少しこの膠着した攻防を観察することにした。


攻撃のタイミングにパターンがあるのか、あるいは何度もぶつければ、いずれ均衡が崩れるのか――そういったことを、俺は暢気に分析しようとしていた。


ぼふん。ぼふん。ぼふん。


何度繰り返しても、結果は変わらない。


当たり前だ。


同格の攻撃力が低いスライム同士が、代わり映えのない攻撃を繰り返しているだけなのだから。


(さすがにそろそろ切り上げるか)


そう思って視線を上げた時、白い空間の隅に浮かぶ数字が目に入った。


00:08


血の気が引いた。


「なっ……!」


前回よりもずっと切羽詰まっている。


00:06


剣を構えるも、間に合わない。頭のどこかで、そう理解してしまった。


00:03


00:00


数字がゼロになった瞬間、耳障りな電子音のようなものが響いた。


同時に、腰のケースが淡く発光する。


「え……」


ケースから、カードが一枚、ひとりでに宙へと飛び出した。


目の前でそれは輪郭を失うように薄れ、跡形もなく空気に溶けて消えていった。


飛び出す瞬間、一瞬だけ見えた絵柄は、間違いなくあのスライムのものだった。


(今持ってるの、スライムしかいないんだから当たり前か……)


選びようもなく消えていったカードに、妙な虚しさを覚える。


せっかく手に入れた二枚のうちの一枚が、こんな形で無に帰すとは思わなかった。


しんと静まり返る。


俺のスライムだけが、その場でぷるぷると揺れている。


目の前にいたはずの野生のスライムは、決着がつかなかったせいか、いつの間にか姿を消していた。


捕まえ損ねた、ということなのだろう。


やがて、白い空間とリングが消え、森の景色が戻ってくる。


残されたのは、手持ちのスライム一体だけだった。


俺は呆然と、空になったケースの中を覗き込んだ。


二枚あったはずのスライムのカードが、今は一枚しかない。


ただ、確かに何かを失った、という感触だけが残っていた。


(時間切れになると、カードがランダムに一枚消える……。もし、これが最後の一枚だったら……)


背筋が冷たくなる。


手持ちのカードが一枚もない状態で時間切れになったら、その代償はカードでは済まないかもしれない――そんな予感が、根拠もなく頭をよぎった。


想像するだけで、嫌な汗が滲んだ。


目の前で相変わらず呑気に揺れているスライムを見下ろしながら、俺は深く息を吐いた。


「……次からは、ちゃんと考えて動かないとな」


独り言が、静かな森に溶けていった。


教訓は得た。


だとしたら、次にすべきことは一つだ。


(手持ちが少ないから、こういう時に慌てる。もっと増やしておいた方がいい)


カードが多ければ、一枚くらい消えたところで痛手は少なくなる。


単純だが、間違ってはいないはずだ。


それから俺は、森の中を歩き回っては見つけたスライムと「決闘」繰り返した。


要領も少しずつ分かってきて、無駄に粘らず、さっさと自分の手で決着をつけることを徹底した。


気づけば、倒したスライムは十体を超えていた。


肩で息をつきながら、ケースの中身を数える。


かなりの枚数になっている。


(そういえば……)


ふと、気になっていたことを思い出した。


前に、自分のスライムを一体呼び出せることは確認した。


だが、複数体を同時に呼べるかどうかは、まだ試していない。


試しに、カードを五枚まとめて手に取り、口にしてみる。


「スライム」


カードが淡く発光し、目の前に――スライムが、三体現れた。


(あれ……)


残る二枚のカードに目を落とす。


光ることもなく、絵柄もそのまま残っていた。


何度か言葉を変えて呼びかけてみても、反応はない。


(同時に呼べる数には、上限があるのか)


どうやら、無制限に呼び出せるわけではないらしい。


今のところは、三体が限界のようだった。


目の前でぷるぷると揺れる三体のスライムを眺めながら、俺は小さくため息をついた。


「まあ、今はスライムばっかりだし、これでも十分か」


そう呟きながら、三体を順番にカードへと戻していく。


分かったことが一つ増えるたび、この力の輪郭が、少しずつはっきりしてくる気がした。

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