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ハズレスキル〈線〉が、引くほど強くなるんですが ~捨てられ転生令嬢の無自覚最強サバイバル~  作者: 円夢
第三章 万能薬

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幕間 ルーター

 身の丈100メートルはあろうかというゴーレムが崩落した瞬間、物陰から大きな歓声が上がった。


「嘘だろ。信じられねぇ! 石の巨人(ストーンゴーレム)っつったらAランクじゃねぇか!」

「それをまさか、俺らみたいな弱小パーティが倒せたなんて……」

「夢を見ているようですわ!」


 手を取り合って喜んでいるのは、Cランクパーティ〈緑の弓兵(グリーンアーチャー)〉の面々だ。

 戦士(ウォリアー)のリーダーを筆頭に、盾役(タンク)の重騎士、後衛の魔法使い(メイジ)、回復役の女僧侶(プリーステス)という標準的な四人構成。

 彼らは、カーマイン伯爵が出した一斉討伐(レイド)要請に応えてカーマイン迷宮(ダンジョン)に入ったものの、運悪く〈妖精の輪(フェアリーサークル)〉、すなわち自然発生した転移門(ポータル)に踏み込んでしまい、ここに飛ばされてきたのだった。


「目の前にゴーレムが出てきたときは、もう駄目かと思ったわ」

「俺も俺も! けどまさかリーリィの魔法があんなに効くなんてな」

「うふふ。運が良かっただけですわ」


 実際は彼女の魔法ではなく、単にゴーレムの稼働期間が過ぎて自壊しただけだが、それを知るすべは彼らにはない。


 と、その時、彼らの背後からぱちぱちと拍手の音が聞こえてきた。


「素晴らしい! たった四人でAランクモンスターを討伐とは。今回の討伐対象の女王相のウォーアント(レギナ・フォルミカ)より格上だ。地上に帰れば君らは英雄だよ、間違いなく」

「……っ! 誰だ!」


 一斉に振り向く〈緑の弓兵〉。

 そこにいたのは、十人ほどの冒険者の集団だった。

 前衛らしい前衛はおらず、そのほとんどが狩人(ハンター)盗賊(シーフ)斥候(スカウト)など、明らかに俊敏性と機動力、それに隠密性を重視した構成だ。


「ま、地上に戻れればの話だけどね」

「貴様ら……略奪者(ルーター)かっ!」


 先頭に立つ暗殺者(アサシン)の男がおどけたように言うのと、〈緑の弓兵〉が戦闘態勢に入るのがほぼ同時。


 だが次の瞬間、リーダーの戦士は背後から刺され、魔法使いの胸に矢が突き立ち、女僧侶は喉を裂かれて絶命した。

 ただ一人残った大柄な重騎士が、無言で巨大な盾を突き出し、面頬の隙間から暗殺者を睨み据える。


「あー、こりゃ硬いねえ。……てなわけで出番だ、ボマー」

「うおおおおおっ!」


 にやにやしながらその場に立ったままの暗殺者に向かい、雄叫びを上げて重騎士が突進する。

 ――が。


 ドムッ。


 ふいに鈍い爆発音が聞こえ、重騎士の鎧の隙間という隙間から赤黒い血が噴き出した。


「ガ……ッ!?」


 重騎士は前のめりに倒れ伏し、それきりぴくりとも動かなくなる。


「さてと」


 四つの死体に背を向けて、暗殺者は、かつてゴーレムだった砂丘に歩み寄った。


「こいつの討伐を申告すれば、俺らも英雄になれちゃうけどねえ……。そういうのはちょーっとまずいんだよね、仕事的に。だろ?」

「間違いなく」


 誰かが暗殺者の口真似で答え、複数の笑い声が上がる。


「じゃあ決まりだ。俺らは当初の依頼通り、()()()()()()()()()

「けどよ、その娘、本当にこんなとこまで来てんのか?」


 集団の中から声が上がった。


「カーマイン迷宮の九層だぜ? 小娘一人でこんな深層まで辿り着けるもんかよ」

「さあな。けど依頼主様がそう言うんだ。捜すだけ捜してみるさ」

「ま、見つからなきゃ似たような歳の黒髪のガキを捕まえて、顔を潰して持ってきゃいいんだろ?」


 そうだそうだ、と声が上がる中、暗殺者の男は「ちっちっち」と人差し指を振ってみせた。


「そう簡単にはいかないんだな、これが。小娘が死んでた場合、その眼球を証拠として持ち帰れとさ」


 ――紅色の眼球を持ち帰れば、五百万(グルト)支払おう。


「面倒な依頼だよ、間違いなく」


 暗殺者の男は肩を竦め、彼方に見える峡谷に目をやった。

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