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ハズレスキル〈線〉が、引くほど強くなるんですが ~捨てられ転生令嬢の無自覚最強サバイバル~  作者: 円夢
第三章 万能薬

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53.崩壊

 ノルドが素早く私と蜂のモンスター? の間に割り込んだ。


「誰、いや、何だっぺ、お()ぇは!?」

狩人蜂(ハンターワスプ)……じゃ、ないわよね」

「心外デスネ」


 相手は明らかに気分を害したようだった。


「アノヨウナ下等生物ト一緒ニシナイデイタダキタイ。我々ハ〈庭番(ケプロス)〉デス」

「ケプロス……」


 呆然と繰り返す私。


「ソシテ(ワタクシ)ハ栄エアルソノ〈ノンゲンテシムス・トリケシムス・クアルトゥス(934番目の)・クィーンクィエス・ミッレーシムス・トリケンテシムス(5300代)〉デス」

「いやごめん、何て?」


 響きは何となく古代語? っぽいけど、長すぎて覚えきれないよ!

 ケプロスのノン何とかは、あからさまに「ハア……」とため息をついた。


「デシタラ〈シムス〉デ結構デス。アノ男モ以前ノ私ヲソウ呼ンデイタコトデスシ」


 私はぎゅっと目を閉じてこめかみを揉んだ。

 何かもう情報量が多すぎて頭パァン! てなりそう。

 喋る蜂。古代語っぽい長い名前。あと腕が四本。


「トコロデ、アノ男ハドウシマシタ?」

「あん男、ちゅうのはフラムのことだっぺ?」


 私に代わって訊ねたノルドに、シムスは「ハイ」と頷いた。


「彼ト会ッテ話ヲシタノハ、10人前ノ私ガ最後デス。コノ庭ハホドナク消滅スルタメ、彼ガマダココニイルナラ知ラセニ来タノデスガ……」


 その言葉を裏付けるかのように、足許からズズズ……と不吉な地鳴りが聞こえてきた。

 同時に、周囲のあちこちに小さな魔法陣が次々生まれ、そこから庭園がさらさらと崩れていく。


「きゃっ!?」


 がくん、と足許が崩れ、ぽっかりと開いた穴の中に落ちそうになった私の手を、間一髪でノルドが掴んでくれる。


「フウム。ドウヤラ、コノゴーレムハ人ノ子ノ攻撃ヲ受ケテイルヨウデスネ。ソンナコトヲシナクテモ、ドノミチ期限切レデシタノニ」


 他人事のように言うシムスをよそに、ノルドは空いた方の手で魔法袋(マジックバッグ)から飛空板(フリッター)を引っ張り出していた。


「乗れぇ、ジル!」

「うん!」


 飛空板がふわりと舞い上がると同時に、足許の床がどっと崩れ落ちる。


 ――転移門(ポータル)


 私の顔から、さあっと血の気が引いた。

 

 ――このゴーレムが消滅したら、広場の転移門はどうなるの!?


 転移門は毎年、夏の終わり頃に岩小人(ロックノーム)の山の麓に現れ、月が昇るように山頂まで移動するという。


『そっから今度ぁだんだん低くなってって、しまいにゃ地面の下に消えっちまうんだっぺ』

『……消えたら、どうなるの?』

『次に開ぐのは、来年の夏だっぺな』


 もともと転移門が閉じる前には戻るつもりだった。

 でも、その転移門そのものが消えてしまったら……?


「ノルド! 転移門!」


 それだけでノルドにも通じたらしい。


「しっかり掴まれぇ! 飛ばすかんな!」


 急発進した飛空板の下で、みるみる庭園が崩れていく。

 果樹の林も、水盤も、ツリーハウスの大樹さえ、根本から砂色に変わり始めていた。


「ノルド……」

「わかってるっぺ!」


 魔法陣の広場は、周辺からじわじわと砂色に侵食されていた。

 その真ん中で、魔法陣はまだ白く輝いている。


 ――お願い、間に合って……っ!!


 飛空板がさらにスピードを上げる。

 その端がもう少しで魔法陣に触れる、その刹那。


 ヴヴ……ッ


 白く輝く外縁に砂色が到達し、魔法陣はぶれて消失した。

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