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ハズレスキル〈線〉が、引くほど強くなるんですが ~捨てられ転生令嬢の無自覚最強サバイバル~  作者: 円夢
第三章 万能薬

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52.遭遇

 何個目かの白結晶を聴き終えて、私は目をこすった。毛布を敷いているとはいえ、座りっぱなしの腰が痛い。

 ふあ、と大あくびをしたノルドが、それでも手を止めずに次の結晶に手を伸ばした時だった。


 ……ズン!


「うおっ!?」


 くぐもった地鳴りのような音と共に、地下室がガタガタと揺れだした。


 ……ズン!


 ……ドズン!


 はい来たー。〈石の巨人(ストーンゴーレム)〉の朝のお散歩タイム。


(しばらく来ないでいるうちに、これのことすっかり忘れてたわ)


 今回は地下にいるせいか、揺れはそこまで強くないけれど、天井からぽろぽろと土埃が降ってくるわ、せっかく集めた結晶がころころ床を転がっていくわで大変だ。


「ジル!」


 ふいにノルドが恐ろしく真剣な声を出した。


「こっから出っぞ! 急げぇ!」

「え? この程度の地震なら大丈……」


 言いかけた私のすぐ横を、ひときわ大きな天井の欠片が掠めていく。


「こん山鳴りは駄目な奴だっぺ! 岩の軋みが尋常じゃねぇ!」


 怒鳴るように言うが早いか、ノルドは私を引っ張って立たせ、ハッチに続く梯子の方へとぐいぐい押していった。


 ほうほうの体で梯子を上り、四阿(ガゼボ)の外に出た途端。


「――!」


 四方の柱が内側に倒れ、四阿が丸ごと地下室の中に陥没した。


 ようやく揺れが収まった後には、もうもうと立ち込める土埃と、落ち葉と土砂の塊があるばかりだ。


「……結局、埋葬してやれんかったっぺ」


 ぽつりとノルドが呟く。


「そうね」


〈僕〉こと錬金術師のフラム・フルカネリの亡骸は、彼の遺した万能薬の秘密ごと地中に消えてしまった。


「で、でも! 諦めるのはまだ早いわよ。せっかくストーンゴーレムの頭のてっぺんにいるんだもの。もしかしたらどっかに天然の万能薬が……」

「はあっ!?」


 ノルドが素っ頓狂な声を上げた。


「い、今何て言ったっぺ?」

「え? だから私たち、ストーンゴーレムの……あ、そっか」


 転移門(ポータル)から来たノルド達は、ここが迷宮(ダンジョン)の中だということは知っていても、ストーンゴーレムの上だとまでは気づいていなかったに違いない。


「来て!」


 私はノルドの手を引くと、果樹の木立がある方へ――城壁の方へと歩き出した。


◆◆◆


「うわあ……」


 前に来た時は整然としていた果樹の林は、地面に落ちた果実や折れた枝で見る影もなく散らかっていた。

 中には根こそぎ倒れている若木もあり、地下室ではさほど強く感じなかった揺れが、実はどれほど大きかったのかを物語っている。


 前回私がよじ登った城壁にもあちこちヒビが入っており、一部は崩れて細い隙間ができていた。


 私達は隙間に近づき、向こう側をのぞき見る。

 前に来た時、ここからは、深い亀裂の入った赤茶けた大地が見えていたけれど……。


 ブブッ!

 ブブブブブ……


 真っ先に目に入ったのは、黒い光沢のある大きな複眼だった。左右の複眼の真ん中に、蜂蜜色の単眼と、二本の太い触覚。


「コレハコレハ」


 とそいつは言った。


「人ノ子ト岩小人(ロックノーム)トハ珍シイ。アノ男ハドウシマシタ?」


 背中に生えた四枚の翅をブブブ、と震わせ、私たちの目の前でホバリングしていたのは――。


 蜂の頭部を持ち、黒のテールコートに縞のトラウザーズをぴしりと着込んだモンスター……? だった。

 しかも、腕が四本ある。

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