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ハズレスキル〈線〉が、引くほど強くなるんですが ~捨てられ転生令嬢の無自覚最強サバイバル~  作者: 円夢
第二章〈夜の子ら〉

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40.領都へ

ストックに少し余裕が出たので、本日2話目の投稿です。

 よそ者の冒険者が岩小人(ロックノーム)の山に入り込み、無断で罠を仕掛けたこと。

 そして何より、Bランクモンスターと言われたジャイアントロックボアの出現は、速やかに領主様に報告すべきだ。


 ニルドはそう言い、翌日の夜を待ってティール辺境伯の住む領都ズマラックに行くことになった。


「んだら俺らも一緒に行くべ」


 ノドが言って私を見る。


「碧玉葡萄さ売るなら、領都のギルドの方が断然いい値がつくっぺよ」

「んだな。それに、領都ならジルの故郷に手紙も出せる」


 ニルドも頷く。


「ずいぶん大人びて見えっけど、ジルはまだ子どもだっぺ? 親御さんら、きっと心配してっぺよ」

「えー!? ジルもう帰っちゃうの!? 嫌だ嫌だ、もっとここにいてよう!」


 抱きついてくるノラの頭を撫でながら、思わず乾いた笑いが出た。


「いや、それはないですね。私、親はもういないんで」


 ――嘘じゃない。あの人たちの「娘」は、もう別にいるんだから。


 けれど、ノドたちは揃っていたましげな顔をした。


「そっか。そら悪がったなぁ。なら、好きなだけここにいるといいべ」


 いたわるように言うニルドに続き、


「んだな。ジルはもう家族みたいなもんだし」

「そうよ、そうよ! ずっとノラたちと一緒にいて!」


 ノドとノラも口を揃える。


(…………っ!)


 胸の内に、ひたひたと温かなものが満ちていく。


「あ、ありがとう……ございます……」


 ほろり、と涙が頬を伝ったと思ったら、喉がきゅうっと締めつけられて、私はぼろぼろ泣き出してしまった。


「あれ? へ、変だな。すごく嬉しいのに……すみません、こんな」


 中身はいい歳した大人なのに。

 恥ずかしくて盛んに目を擦る私の頭を、ノドが背伸びして撫でてくれた。


「いいが、いいが。あったらとこに女の子がたった一人で、ずっとおっかながったべなぁ」


 ノラも、さらにぴったりと抱きついてきながら言う。


「大丈夫。今日はノラと一緒に寝よう?」

「お前はジルとくっついていたいだけだろが」

「へえんだ。(あん)ちゃんは入れてあげないんだからね~」

「ばっ! ばがなごと言ってんじゃねぇ!」


 首まで真っ赤になって怒鳴るノドを見て、私は迷宮(ダンジョン)に捨てられたあの日以来、初めて心の底から笑った。


◆◆◆


 翌晩。

 ノラのベッドで目覚めた私の顔はすごいことになっていた。


「あっちゃあ……」


 さんざん泣いた上に擦ったせいで、白目は充血しているし、目蓋もぷっくり腫れている。


「わあ、ジルの目、真っ赤っか! 石兎(ストーンラビット)みたい。回復薬(ポーション)使う?」


 言うなり、さっとスプレーを取り出すノラを、慌てて「待って待って!」と制止する。

 いや、それ、ニルドの上級回復薬のスプレーだよね? まだ返してなかったんかい!


 ――ていうか。


 鏡に映る紅色の瞳(カーマイン・アイ)を見てふと気づく。


 ――領都に下りるなら、この目は人に見られないようにしないと。


 前髪を下ろすか、フードで隠すか。

 前世ならサングラスなんて便利なものがあったけど……。


(……! そうだ!)


 ベッドの柱に引っ掻けておいたゴーグルを見て思いつく。


「ねえ、ノラ。これ、暗視機能をオフにできるかな?」

「あんしきのーふ?」

「ああ。えっと、明るいところでも見えるようにできる?」

「できるよー」


 ノラはあっさり頷くと、私のゴーグルのごついフレームから突き出たツマミを指さした。


「ここをこっちに回すと昼用。こっちに回すと夜用レンズになるの」


 おおー。仕組みはさっぱりわからないけどハイテクだ。

 とりあえず街中ではずっとこれを着けていよう。


 ドアの外でノドの声がした。


「ノラ、ジル。支度は済んでっか? そろそろ出かけっど~」

「はあい。今行く~」


 元気に答えたノラに続いて、私も部屋を出ていった。

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