35.罰
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「はあ………」
一部始終を聞き終えたニルドは、きつく目を閉じて眉根を揉んだ。
「つまり、ノド。お前ぇは勝手に飛空板さ乗り回し、〈瞬きノ窓〉さ飛っ込んでカーマイン迷宮へ行ぎ、挙句の果てに妹ともども石んなりかげた。そういうこどか?」
〈瞬きノ窓〉とは、おそらく、私達人間が言う〈転移門〉のことだろう。
ハーキ族独特の言い回しだ。
(確かに、点いたり消えたりするもんね)
密かに感心する私をよそに、ノドはがっくりとうなだれた。
「そん通りだ、父ちゃん。申し開きのしようもねえ」
「違うの、父ちゃん! ノラが迷宮に行きたいって兄ちゃんに頼んだの!」
ノラが必死に兄を庇うが、
「そんでもだ。ノドが禁を破ったこどに変わりはねぇ」
とニルドはにべもない。
「罰として飛空板は没収。〈瞬きノ窓〉には二度と近づくな。ノラ、お前ぇもだぞ」
「……はい」
父の厳しい声に、ノラもしゅんとして頷いた。
「それと。二人とも、工房さ当分出入り禁止だ。良し悪しの区別もつかねぇ者に、父ちゃんの道具は触らせらんねぇ」
「ええっ!?」
それまで大人しく聞いていたノドが、ぎょっとしたように顔を上げた。
「と、当分ってどんくらいだっぺ? まさか一日……いや、一時間くらいなら何とか……」
「馬鹿たれ!」
ゴン! と痛そうな音がして、頭に拳骨を喰らったノドが蹲る。
「そったら軽い罰があっか! 父ちゃんがいいっちゅうまでだ!」
「そんなぁ……」
ニルドは一つ息を吐くと、ふいにその声を落とした。
「ノド。飛空板はまた作ればいい。工房にだって、いずれは入れてやる。……けんどな」
その視線が、兄妹にじっと注がれる。
「二人が石んなっちまっだら、父ちゃんは死んだ母ちゃんに何て言えばいい?」
ノドが、びくりと肩を震わせた。
しんと静まった部屋に、遠く、谷川のせせらぎだけが響く。
――ああ。
いいな、と思ってしまった。
前世と今世の親たちが脳裏にちらつく。
やがてニルドは、気を取り直すように咳払いした。
「ところで、二人が勝手に持ち出した父ちゃんの上級回復薬、金でも現物でもいいがら、使った分はちゃんと返せよ」
「あ、それは私がお支払いします!」
さすがに黙っていられなくなって、私は思わず口を挟んだ。
「治していただいたのは私ですし! ただ今は手持ちがないので、一度に五万Gはちょっと厳しいですが……」
「……五万G?」
ニルドが首を傾げるのと。
「あっ! そ、それは……っ!」
慌てたようにノドが声を上げたのが同時だった。
「ノ~~~ド~~~? お前ぇ、まさか命の恩人に向かって、そったらぼったくりみてぇな真似したんか?」
「あ、いやっ! そっ、そりゃ違くてっ!」
「……ったく」
ニルドは呆れたようにため息をつくと、改めて私に頭を下げた。
「うちの馬鹿息子が、とんでもねぇ失礼しちまって。お代は三万Gでいいっぺよ」
――って。
結局、あんたも金は取るんかーい!
感謝の気持ちをこめて、本日昼ごろもう一話更新します。お楽しみに!




