幕間 カーマイン騎士団
本日、2話投稿しています。この話は2話目です。ご確認の上お読みください。
「存外粘りますね、あのポーター」
カーマイン迷宮第五層。
階層主の部屋の前で騎士団が見張りを始めてから、すでに二日が経とうとしていた。
「体格からして盾役っぽかったからな。シャドウパンサーは魔法を打ってこないから、防御に徹すればそこそこもつんだろ」
「そうは言っても、飲まず食わず眠らずだ。いい加減、体力も気力も限界じゃないか?」
一人の騎士がそう言った折も折。
かちゃり。
鉄扉の向こうでロックが外れる音がした。
「お。開いた開いた」
「ポーターの頑張りもここまでか」
「案外、シャドウパンサーを倒してたりしてな」
「ははっ。まさか」
騎士団を率いてきた金髪の男がおもむろに立ち上がる。
「突入! 中にいるものの生死を確認、証拠を回収して撤収する!」
重たい鉄扉を開け放ち、中へ入った騎士たちはザッと散開した。シャドウパンサーの攻撃に備え、油断なく身構える。
――が。
「こ、これは……」
「なんと」
入ってすぐのところに、食い散らかされたポーターの死体があった。
それはいい。彼らの予想どおりだ。
しかし――。
「シャドウパンサーがやられている……だと!?」
「相討ちか」
「いや。だとしたらポーターが食われているのはおかしい」
ざわめく騎士たちを尻目に、金髪の騎士がシャドウパンサーの死体に歩み寄る。
魔物の頭部は、とてつもなく鋭利な刃物のようなものできれいに両断されていた。
「一体、誰がこんなことを」
ポーターではない。だが、ポーター以外で部屋にいたのは。
「馬鹿な。Dランクの魔物だぞ!」
それを、わずか十歳の少女が倒すことなど――……。
金髪の騎士は、はっとしたように顔を上げた。
「令嬢は? ジゼル嬢はどこにいる」
「探せ!」
だが、部屋のどこにも少女はいなかった。
「……逃げたか」
金髪の騎士は舌打ちして、部屋の両端に出現した二つの転移門を睨みつける。
青く輝く転移門は迷宮の入口へのショートカット。
白い方は次の階層へのワープゲートである。
――このまま帰るわけにはいかない。
ジゼルがこの世から消え去った確たる証拠を持ち帰ること。
それが彼の受けた指令だ。
「令嬢は迷宮を脱出したものと思われる。まだそう遠くへは行っていないはずだ。追うぞ!」
言うが早いか、金髪の騎士は青い転移門に飛び込んだ。
部下の騎士たちも、すぐさま後に続く。
またたく間に無人となった部屋の中で、二つの転移門はしばらく静かに輝いていたが、やがて揺らめいて消失した。
再び闇に沈んだ部屋に、ぽうっと青白い燐光が灯る。
ずるる、と重たい何かを引きずるような音。
縦に裂けた瞳孔がきろん、と動き、炎を思わせる真っ赤な舌がちろちろ躍る。
やがてゆっくりと身を起こしたそれは、ずる、ずる、と重たげな音を立てながら奥のくらがりに姿を消した。




